青天の霹靂60(千香の思い)

本宮がいなくなると、千花は勝人に抱き付いた。
「もう、放さないから」
勝人は顔を真っ赤にしながら、驚いている。
「こんなに思われているのに、お前は死ぬ気か?」
「でも、俺、良いのかな?」
「誰が悪いと言った?」
「それは・・・」
「どうせ、本宮さんだろう? あの人はセコいんだよ」
「セコい?」
「ああ、そうだ。そんなのに、お前コロッと騙されすぎだぞ」
「私を置いて何処にも行かないで」
千花が泣きながら言う。
「千花」
勝人も千花を抱き締める。
「ごめん」
二人で泣き合う。
「お前のことをこんなに考えてくれる人がいるじゃないか? 他に何が欲しい?」
「いらないな」
そう、勝人は答えた。
「じゃあ、もう、Xはいらないよな」
「いや、X潰すのは、ちょっと待ってくれ。ここでしか、生きられない奴もいる」
「?」
「別段、働かないとかではなく、潤みたいな奴だ。俺が保護しないと、彼らは犯罪に使われるか? 走るだろ?」
つまり、不思議な力の持ち主と言うことか。
「そうだな」
「俺はXを違う形で残して行く。不思議な力の持ち主を助ける場を俺は作る。みんな平等にとかは言ってられない。それが、俺に出来る潤とじい様への弔いだ」
「分かった。Xは残すと言う方向で」
こうして、Xをどうするかが決まった。
そして、二人は会わなかった時間を埋めるように、いろいろ話した。
「で、お前はこっちの方どうなんだよ」
そう言うと、小指を立てる。
「それが、ちょっと複雑でな」
悩んでいる廉を見て、勝人は言う。 
「何だよ?」
「友達の姪っ子で母さんと同じ魂の色してる子がいて」
「同じ色か? それは、複雑だな」
「でも、妹に言われたよ。別人だと」
「確かに別人だと、思いたいが、お前は分かっているのだろう?」
「ああ、同じだと。だからこそ、今度こそ守るって言ったら、何故か俺がその子にプロポーズしたことになってて、ちょっと戸惑ってる」
「お前はそんな気はなかったか?」
「それが、俺にも分からない」
「じゃあ、嫌いじゃないんだろう?」
「嫌いとか言う前に相手は子どもだ」
「関係ないです。それは、きっと運命です」
千花が身を乗り出して言う。
しかも、目をキラキラさせている。
「いや、運命と言われても、戸惑うかな!?」
「何故、そんな運命的な出会いに感謝すべきなんです」
「運命的って、言われてもな」
と、勝人に助けを求める。
「諦めろ。千花が運命と言い出したら、もう誰も否定出来ない」
ちょっと諦め気味に勝人は言う。
「一度言い出したら、もう結ばれるまで、千花は言う」
「あっそうですか?」
ちょっと、呆れながら廉は言う。
「その子まだ5歳だよ。これって犯罪じゃないか? 25歳差って、これは立派な犯罪だろう?」
「犯罪かどうかは、本人達の判断で良いんじゃありませんか? 周りからどう見られようが、本人達がそれで幸せなら良いと思います」
千花の勢いに廉は押される。
「そう、ですか?」
呆れながら勝人は言う。
「諦めろよ、廉」
「はい」
何故か嬉しそうな千花。
「お前の恋人って、何か芯が強いな」
「だろ」
3人は取り敢えず、場所を京極家に変えた。


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