見出し画像

青天の霹靂29(燃えた教会)

冬眞が教会まで行くと、そこには燃えた教会があった。
「こんな焼け残った教会に何があると言うんだ?」
「それが分からないから来たんです」
「じゃあ、聞き方を変える。お前は何があると思って、わざわざ来たんだ?」
「えっ、別に何も?」
冬眞はそれに驚いたように答えた。
「じゃあ、何が引っ掛かったんだ? 何か引っ掛かったから、お前来たんだろう」
「引っ掛かったと言うか、気になったことがあるんです」
「何が? 動機なら、もう分かってるだろう?」
「それは、分かっています。けど、あの人が自分のためだけに手を染めるかなって? 犯罪に走る切っ掛けがどこかにあるはずなんです、きっと。考え過ぎですかね?」
「考え過ぎだろう」
「でも、あの男が捕まらない限り、この先も被害者はで続ける。それを自分が犯罪を起こすことで、彼の罪も明らかとなり、彼を捕まえさせることが出来ます」
「だったら、なぜその彼を殺さなかったんだ?」
「その切っ掛けがあるはずなんです」
「切っ掛けねぇ?」
「そうか?」
「何が?」
「切っ掛けですよ」
「たぶん、計画が杜撰だった。本当は彼は皆殺しを狙ったはずです。でも、調べが足りずに、計画を実行してしまった。彼は、その時、林間学校だった。それを、友人を殺害してから、間宮はそれに気づきましたが、もう後戻り出来ませんでした。だから、帰って来てから、両親の遺体を発見し、彼は生き地獄に落とされたと思うんです」
「そうだろうな?」
「だからですよ」
「どう言うことだ?」
「自分が生きながら、地獄に落とされたから、同じ目にってね」
「だったら、どうして今なんだ? 奴が入社してからずいぶん経つぞ」
「そこなんですよね、僕もそこに引っ掛かってるんですよね」
「つまり何か、この犯人に罪を行わせることを、躊躇(タメラ)わせる何かがあったってことか、でも、躊躇ったのに、そんな彼に罪を犯させるきっかけがあったと言うことか? それは何なんだろうな?」
「先程、廉夏に言われて、気付いたことがあるんです」
「それは何だ?」
ちょっと躊躇ったのちに冬眞は言う。
「たぶん、ルリカさんが邪魔だからと言って、廉夏を殺そうとしたからです」
「それが、何故?」
「重なりませんか? 彼の両親の亡くなり方と」
そう言われ、日向もハッとする。
「邪魔だから殺すと言う考えが似てるな」
「ええ、ご自分の両親に重なったと思うんです」
「そうか、これで動機は判明したな。でも、そうなるとなぜ、ここまで事件を起こさなかったんだ、奴は。やる機会などたくさんあっただろう、奴には?」
「それを止めさせてしまう何かがあったんでしょうね」
「これは、難しいぞ。聞いても、皆語らないだろうし」
「そうなんですよね?」
斗真は腕を組む。
「いや、待って下さい。語る人ならいますよ」
「それは、誰だ?」
「穂波さんです」
「穂波って、被害者の妹だろ」
「ええ、彼女なら話してくれるはずです。間宮家にいったい何があったのか?」
「じゃあ、その穂波はどこにいるんだ?」
「それが、分からないんですよね」
困ったように、冬眞言うが、何かを思いついたように言う。
「じゃあ、どうするんだ?」
「でも、たぶんこの教会の近くにいるはずです」
「この近くか?」
「ええ、この近くに花壇ありませんでしたっけ?」
「花壇はないが、原っぱならあるな、確か」
「そこです」
そう言って、二人は賢明に走る。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?