肩関節の運動解剖学

今回の投稿からそれぞれの部位ごとにまとめていきたいと思います!
まずは肩関節の構造について投稿していきます。

肩関節の構造

広義の肩関節は3つの解剖学的関節と2つの機能的関節で構成されています。
解剖学的関節→肩甲上腕関節、胸鎖関節、肩鎖関節
機能的関節 →肩甲胸郭関節、第2肩関節


引用:身体運動学 肩関節の運動学 市橋則明 宮坂淳介 52P

解剖学的関節

胸鎖関節(acromioclavicular joint)

引用:肩関節拘縮の評価と運動療法 林典雄 赤羽根良和 17P

胸鎖関節は体幹と上肢を連結する唯一の関節で上肢の基部となる。
関節の構造は鞍関節だが関節円板が存在するため球関節の性質を持つ自由度3の関節。
前・後胸鎖靭帯、鎖骨間靭帯、肋鎖靭帯が存在している。


胸鎖関節は鎖骨運動の中心軸となり、挙上約45度、下制約5度、屈曲、伸展約15度、後方回旋約50度の可動域を有する。(前方回旋はほとんどしない)

引用:肩関節拘縮の評価と運動療法 林典雄 赤羽根良和 18P

肩鎖関節(sternoclavicular joint)

引用:身体運動学 肩関節の運動学 市橋則明 宮坂淳介 55P

肩鎖関節は鎖骨外端と肩峰を結合する平面関節で不完全な関節円板を持つ。
肩鎖靭帯、烏口鎖骨靭帯、烏口肩峰靭帯により強力に補強。

肩鎖関節は肩甲骨の中心軸として機能し、垂直軸最大30度(内・外旋)、矢状軸最大50度(上方・下方回旋)、前額軸最大30度(前・後傾)の可動域を有する。

【鎖骨に対する肩甲骨の動き】
・上方回旋(upward rotation/lateral rotation)
・下方回旋(downward rotation/medial rotation)
・内旋(internal rotation)
・外旋(external rotation)
・前傾(anterior tilt)
・後傾(posterior tilt)

内旋の動きをプロトラクション、外旋をリトラクションと表現することもあるが一般的にはプロトラクションは内旋、前傾、上方回旋、
リトラクションは外旋、後傾、下方回旋の複合運動として定義されている。

引用:肩関節拘縮の評価と運動療法 林典雄 赤羽根良和 16P

上肢挙上時の棘鎖角の増加に伴い肩鎖靭帯後部線維および円錐靭帯、
上肢下制時の棘鎖角の減少に伴い肩鎖靭帯前方線維および菱形靭帯が緊張し運動を制御している。
この烏口鎖骨靭帯での棘鎖角の調整をC-Cメカニズムとよぶ。

引用:肩関節拘縮の評価と運動療法 林典雄 赤羽根良和 16P

肩甲上腕関節

引用:身体運動学 肩関節の運動学 市橋則明 宮坂淳介 57P

狭義の肩関節。上腕骨頭の1/3のみが肩甲骨関節窩に面して肩甲上腕関節を形成しているので大きな可動域を有する反面、骨性構造による安定性は低い。
肩甲上腕関節に付着する靭帯
・烏口上腕靭帯(coracohumeral ligament:CHL)
・関節上腕靭帯(glenohumeral ligament:GHL)
Ⅰ上関節上腕靭帯(SGHL)
Ⅱ中関節上腕靭帯(MGHL)
Ⅲ下関節上腕靭帯(IGHL)
さらに下関節上腕靭帯は前下関節上腕靭帯(AIGHL)、腋窩陥凹(Axillary pouch)
後下関節上腕靭帯(PIGHL)の3つで下関節上腕靭帯複合体(IGHL ccomplex)を形成している。

腋窩陥凹は上肢下垂位では緩んでおり、挙上していくにつれ緊張し下方の安定性を高めている。

引用:身体運動学 肩関節の運動学 市橋則明 宮坂淳介 58P

【下関節上腕靭帯の動き】
肩関節2ndポジションでの内旋位では肩関節の後下方を覆い、外旋位では前下方を覆うように緊張し下方への安定性を高める。

引用:身体運動学 肩関節の運動学 市橋則明 宮坂淳介 60P

機能的関節

肩甲胸郭関節

肩甲胸郭関節は肩甲骨と胸郭により形成された機能的な関節で滑膜組織は存在しない。
肩甲胸郭関節の役割としては
①肩甲骨の固定
②肩関節の可動域拡大(肩甲上腕リズム)
③肩関節の筋力増大
の3つが挙げられる。

【肩甲骨の基本的なポジション】
上角=第2胸椎棘突起
肩甲棘=第3胸椎棘突起
下角=第7胸椎棘突起
胸椎の触診の際には肩甲骨が目安となる。

【肩甲胸郭関節の動き】
・挙上、下制
・内転、外転
・上方回旋、下方回旋

肩甲骨の動きは胸鎖関節と肩鎖関節における運動の和で成立している。
ただ内外旋の動きについては異なる研究結果が示されている。
肩甲胸郭関節には通常の関節に存在している関節包や靭帯がなく、筋しかないため位置覚が乏しい。

引用:肩関節拘縮の評価と運動療法 林典雄 赤羽根良和 20P


第2肩関節

引用:身体運動学 肩関節の運動学 市橋則明 宮坂淳介 53P

第2肩関節は肩峰と烏口肩峰靭帯によって形成される烏口肩峰アーチを指す。
烏口肩峰アーチと上腕骨頭の隙間を肩峰下スペースとよび、肩峰下滑液包、回旋筋腱板が存在する。
第2肩関節の役割として
①肩甲上腕関節の機能向上
②腱板上昇対する抑え込み作用(depressor機能)
③支点形成力の向上
④肩関節挙上時に大結節がアーチ下を円滑に通過するのを促す機能


次回は肩甲上腕リズムや第2肩関節の機能、腱板疎部などについて投稿していきます!

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