「(ファスト読書)の功罪」
YouTube上の「ファスト映画」が9割以上駆逐された今でも、「ファスト読書」は生き残っている。
ビジネス書やベストセラーなどの書籍を10分~15分程度の動画で要約し説明するファスト読書は「ファスト映画」のように書籍そのものの再編集を行わず、単なる解説動画にすぎないということで法的規制から漏れているという。
著作権侵害にもあたらないということで、少なくとも当面の間はお咎めなしのようだが、少なくとも「本を最後までじっくり読む楽しみを奪っている」という点ではファスト映画と同罪なのではないかと私自身は考えている。
コスパ重視、タイパ優先のビジネス書や啓発書であればともかく、小説やエッセイの領域までファスト読書が侵食している状況にはやはり違和感を禁じ得ない。
ファスト読書の詳しい考察はいつかの記事にまわすとして……。
食べ物と同様、読書の好みも年齢とともに変わるらしい。私も本来はミステリーや純文学、エッセイをよく読む「本の虫」だったのだが、今のWeb制作会社に採用が決まってからはもっぱらビジネス書しか読まなくなった。
もちろん、ビジネス書も読めば勉強になるし、社会人として必要な知識ではあるのだが、読書遍歴がビジネス書メインになってしまうのはやはりどこか違和感がある。
今の私は「花束みたいな恋をした」の主人公・麦なのかもしれない。
菅田将暉演じる麦はもともと文学青年でマニアックな趣味に人生の拠り所を見出していたが、中堅商社に就職してから文学に背を向け、ビジネス書ばかりを読みあさる「当たり前の社会人」になっていく。
就職してもなお自分らしさを保ちつづけ、時間を見つけては好きな作家の個展に足を運ぶ恋人の絹(有村架純)とは対照的だ。
結局、価値観の違いから2人は別れてしまうのだが……。
今の私は、山音麦そのものなのだろうか。もちろん、そうであるからといってそのような変化が悪いとは思わないし、今の暮らしには何の不満もない。
麦は、変わっていく自分への違和感を抱きながら、それでも変わるしかなかった。さて今の私は、これからの私は……。
そっと、自分に問いかけてみる。
(好きな作家)
星新一
筒井康隆
東野圭吾
小松左京
辻村深月
湊かなえ
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