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紅梅月毛 山本周五郎

ラジオの子ども科学電話相談でいつも楽しく回答する
円山動物園園長だった小菅先生が文字を読むのキライだったけど
山本周五郎の紅梅月毛読んで泣いたと仰ってた。それから読書するようになったと言っていた作品。
それはもう気になって仕方ない!
図書館のHPで調べたら「紅梅月毛」は短編で全集に入っていたので借りてみた。

本の厚さと上下二段の細かい字、ああ気合入れないと読めないかも…。

紅梅月毛


…と恐れおののいて読み始めたけど、去年の大河ドラマ「どうする家康」に登場した人物の名前が出てくるのでニマニマしちゃいました。
本多忠勝、徳川家康、徳川秀忠、井伊家と榊原家と酒井家の…馬!
あらすじは
徳川家の祝儀で催される馬競べに、本多忠勝家臣で馬術堪能な深谷半之丞が選ばれる。その名誉にあやかろうと自分の馬に乗ってくれと多くの者が半之丞に申し出る。その中に名馬牡丹を連れて美貌の若い娘が来る。その名馬で出場するかと思いきや農夫が連れてる駄馬が目にとまり…。

※ここから先はネタバレ満載です。

美貌の若い娘阿市(おいち)は老臣の子で、半之丞の長屋に住んで徳川祝儀の催しまで馬の世話をすると言い出す。
前から下僕の控えめな妹お梶(かじ)が半之丞の老馬の世話をしていて、無口な半之丞がなぜか気軽に話せる相手として出てる。阿市の登場でお梶の居場所が無く肩身が狭くなってるのがせつない。

阿市とお梶が半之丞を慕ってるのがめちゃわかる~。
しかし半之丞は寡黙な男でふたりのことどう思っているか分からない。
なかなかこの半之丞がカッコイイ!
関ケ原の合戦で紅梅月毛という珍しい色の馬に乗り大活躍し手柄を立てた話を仲間内でされた時も隅の方に座ったまま自慢もせず黙ったままでいるのがなんとも良い。

ある日牡丹を走らせる途中で重荷を背負った駄馬に半之丞が目を止め、その駄馬を連れた農夫に金貨三枚で買い取ると申し出る。やせ細ったみすぼらしい駄馬を買い取るというのを信じられない農夫。そりゃそうだよね。
その駄馬の世話をお梶に頼む。
お梶は見捨てられてなかったと喜んで世話をする。
駄馬は半之丞に嬉し気にすり寄り親愛の情を見せている。
ここでまさかと思ったけど、そのまさかで牡丹じゃなくこの駄馬で馬競べにでちゃう。
祝儀に参列していた家臣たちはみすぼらしい駄馬を見て嘲笑する。
井伊家も榊原家も酒井家もみな立派な馬ばかりだもんそうだよね。
しかしこの駄馬はみごとな活躍をしてくれちゃう。
この後の家康と半之丞の会話もとても良いのけど割愛。
阿市はプンプンに怒って半之丞の家から出ていく。まあ当然だよね。

気を揉んでるお梶に、涙を堪えながら半之丞が話す
「これは紅梅月毛なんだ。関ケ原の戦いでそれたまま、行方の知れなかったあの馬だ。こんなみじめな姿になったがおれにはひと目でわかった、これは幾戦場おれを乗せて戦った紅梅月毛なんだ」
ここでもう涙腺決壊した
「勝敗はどうでもよい、一代誉れの競べ馬に花を咲かせてやりたかった」と紅梅月毛を思う半之丞に涙とまらん。

とても良い話でした。

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