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みけこの散歩5(猫のこと)

お昼前、南側の窓から入る日差しはちょっと前までは部屋の奥のテーブルの足もとまで届いていたのに、それより少し手前の床までしか温めなくなった。

そのかわり光の力は強くなっている。

暖房を止めてしまった部屋で、なるべく窓の近くに腰掛けて風も音もない温もりを感じるのが心地いい。

窓辺のソファーは猫の特等席。

背中がホカホカ温もると寝そべっていた体をむっくり起こし毛繕いをする。

お腹の毛繕いで体を支えていない方の無造作にあげている前足がプラプラしている。

思わず、そのふわっと力が抜けた小さな足をキュッと握ってしまい嫌な顔をされる。

ちらりと睨まれるだけの時もあるけど、瞬く速さで猫パンチが飛び出すことも。

邪魔してごめんねと、お詫びに背中を撫でようものならもう一度、今度は強めに怒られてしまう。

長い月日を一緒に過ごして、小さな頃はよく私の肩に巻きつくように乗っていたのに…
気まぐれはお互いさま?

モフモフ撫でまわしたいなら彼女が隅々まで温もり、とろとろに眠りこけている時がいい。

まだ夢の中から出てこないうちに、あなたを膝にのせておへそを探す。

ツヤツヤと真っ直ぐに流れる背中と違ってクルクル柔らかくカールしているあなたのお腹がすごく好き。
肉球が毛に埋もれているところも好き。
フローリングで急ぐと滑ってしまうね。

そして何より三角の耳が好き。
耳の後ろはどこよりも柔らかくて綿毛のようでずっと撫でていたい。


本当は…
あなたがここで寝そべっていたころ、このソファーはまだなかったね。

あなたによく似た深いこげ茶のソファーカバーが、日差しをためて、その手触りが思い出の温もりと同じぐらいホカホカと私の手のひらを温めてくれる。

思う存分モフモフクシャクシャしても、もう懐かしいくらい遠くなった猫パンチは飛んでこない。

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