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お得意様の宣伝シリーズ① 旧東北大アナーキズム研究会、現〈焼き畑〉コースのDさん 前編

  noteのネタが尽きてきたので、当学科と協力関係にある人を勝手に宣伝する「お得意様の宣伝」というシリーズを始める。
 第一号の「お得意様」は、「東北大アナーキズム研究会の独裁者D」で、話を聞き、せっせと文字起こしをしていたら、いつの間にか「東北大学アナーキズム研究会」は発展的に解消され、「東北大学教養学部〈焼き畑〉コース」という訳の分からぬ名前に変わっていた。

 自分が全然アナーキストじゃないことに今更気付いたらしい。 
 ということで、今回のnoteは、Dが「アナーキズム研究会の独裁者」から「〈焼き畑〉コース・コース長」に転職するまでの、コース長の前史として読んでもらえると幸いである。 


登場人物紹介

G……横浜国立大学都市社会××学科の学科長。

D……東北大アナーキズム研究会の独裁者。(現東北大学教養学部焼き畑コースコース長)

R……都市社会××学科のリアル学生。


企画説明

G(学科長のG):今日は東北大アナーキズム研究会の主催者、というか実質独裁者のDさんの話を聞きます。お願いします。

D(独裁者のD):お願いします。今回は普段の"A君"との架空対談とはちがって、リアルの雑談の文字起こしです。Dこと僕は実在の人間です。

R(リアル学生のR):Rこと僕も実在の人間です。

G:君たち、何を妄言を吐いているんだ。A君も実在の人間ですよ、俺にしか姿を見せないし、俺以外は視認できないだけです。映画『ファイトクラブ』のタイラーダーテン、ブラピみたいなことなんだよね。

R:あれ実在してないでしょ。

G:……。今回の企画「お得意様の宣伝」の説明をすると、都市社会××学科はいくつかの「お得意様」がいまして、そんな「お得意様」の話を聞いていこうということですね。「お得意様」を宣伝してあげたいなといううざったいおせっかい精神と、ついでに自分のnoteで紹介することで他人の活動を簒奪して××学科の宣伝にできないかなという党派的精神によって成り立った企画です。ぶっちゃけnoteのネタも尽きてきたので、他人の話をネタにして繋ぎにしようみたいな怠惰精神もありますね。

D:何もかも最低最悪だ……。

G:ま、そんなこんなで取りあえず第一号の「お得意様」としては、東北大アナーキズム研究会の独裁者、Dさんの話を聞きます。他にも、一緒に話してくれる「お得意様」は随時募集中です。

R:お得意様って募集するものなの?徐々に自然になっていくものでしょ。

G:募集するものです。今がチャンス!!


中二病逆張り政治系

G:早速ですが、東北大アナーキズム研究会は何をしているの?

D:うーん、とりあえずアナーキズムに関する読書会を開催したりしていますね。学生のアナーキズムに対する理解を深めると同時に、社会的思想的なことに興味を持つ学生のネットワークが作れればいいかな、と思ってます。

G:うん……。

D:……。

R:会話が終了してるじゃん。

G:いや、頭をフル回転したんですが、全然話を広げられるところがなくて困惑してます……。

R:えぇ……。ちゃんと議論できるような、共有している問題意識がないのに、ただ仲良いだけのお友達を呼ぶから、こんな醜態を晒すんだ。そもそも「お得意様の宣伝」って企画、訳わかんないしな。

G:いや、違うって、今のはDが悪い。なんだよあの説明、クソつまんないじゃん。あんなフワフワしててしかもありがちな説明されて、誰が話を広げられるんだよ。

D:僕のせいなの⁈

G:今後の流れに接続できるように、俺の方から勝手に紹介しちゃうよ。

D:人に喋らせといて散々言うなら、始めから自分で話せよ。

G:……。まぁ、Dとは普段から議論を深めているんですが、色々共有する部分が多いと俺は感じてるわけです。その"共有する部分"というのが、さっきのDのクソつまんないありきたりな説明だと分からなかったと思う。

D:ありきたりな説明ですいませんね。

G:一応俺は、社会的思想的な学生の集団形成を、時代錯誤に今時やろうとしている。だけど、ここでも「学問の自由」とかはノスタルジーで興味を持てないとしているし、ここでも改めてはっきりと書いた様に、俺は、「学問の自由」とか「言論の自由」とか、そういうステレオタイプでノスタルジックな言説には、別に反対はしないが、深い興味はない。少なくとも、今の日本の若者がそれを言うことに、深いアクチュアリティはないと思っている。

R:まぁそれはずっと言ってるよね。

G:じゃあ何を掲げているのかというと、それは自分でもよくわからない。けれども、とにかく、抽象的な「この社会」に対して、抵抗する運動の主体をどこかに見出そうとしている。それは、「学生自治」とか「言論の自由」とかでもないし、「真の学問」とか「真の人文知」とも関係ない地平でやろうとしているわけですね。そういうのと関係ない地平でやろうとするあまり、思わず「ガス抜き」や「逆張り」を肯定してしまったりするわけですが……。

R:不毛だなぁ。

G:まぁ、「学生自治」みたいな言説に対する乗り切れなさと、そういうものと関係ない地平で自分がいざやろうとすることの「不毛さ」「ダメさ」を、Dとは共有しているなと思うわけですね。

D:そんな感じですね。何か積極的に掲げるものを共有しているわけじゃないけど、とにかくなんかもう何もかも全部だめで虚しいよね、みたいなところを共有している感じだよね。

R:"中二病逆張り政治系"として連帯しているんだね。

G:いちリアル学生の分際で厳しい"批評"をかましてくるなぁ。御託を並べててもしょうがないので、Dの"中二病逆張り政治系"としての実際の活動に話を移しましょう。


おでん闘争① 受験体制に取り込まれる

G:Dが東北大アナーキズム研究会を立ち上げたのっていつなの?

D:立ち上げるぞ!!って決意したのは去年の11月くらいかな。でもそこから1ヶ月くらいは特に何もせず……。

G:ぼんやりして過ごす、と。

D:いや、ただぼんやりしていたわけじゃないね。とにかく何かやらなきゃという焦燥感はあったよ。「やるぞやるぞ!!」っていう。

G:でも何もしてないんでしょ。

D:何もしてなかったけど、心の中はアツかったよ。ただぼんやりしていたんじゃなくて、"アツくぼんやり"して1か月間過ごしていた。その辺の"ボーっとぼんやり"過ごしてる奴と一緒にしないでほしいな。

R:一緒だろ。

G:それで、1か月間"アツくぼんやり"してからは何をしたの?

D:浅羽通明『アナーキズム』の読書会をやろうと思ったんだけど、ただ読書会やっても人は集まらないかな、と思った。とにかく何でもいいから注目を集めなければならないと思って、毎週一回大学キャンパスでおでんを配ることで、目立つことができないかなと思ったんだよね。

R:おでん?!アナーキズム関係ないじゃん。

D:とにかく何でもいいから人を集めなきゃ話にならないと思って、冬だったから、おでんかなぁと……。

G:「アナーキズム」じゃ今時の政治的無関心の学生は釣れないかもしれない、だったらメシで釣ろう!!っていう発想が、学生をバカにしてるよね。

D:辛辣な批判だな。でも、冬にキャンパス内で無料でおでん配ってるのを目撃したら、僕なら行くと思ったんだよね。まぁ、あれは悪しきオモシロ主義だったと今では自己批判しています。

G:メシ配れば人が寄って来るだろみたいな発想が雑なんだよね。アナーキズムも堕ちたもんだぜ。

R:実際にはどんな感じだったの、そのおでん闘争は。

D:IHコンロを持っていて、電源繋いでおでんをぐつぐつ煮る。アツアツのやつを寒空のもと持っていき、冷めないようにアルミホイルでくるんだりして……。それで、とにかく目立たなきゃ話にならないと思ってたから、頑張って「おでんいりませんか~!!」って大声張り上げて……。

G:そんなことで大声張り上げるなよ……。

R:フツーの熱心なおでん屋さんじゃん。

D:一応、「東北大学アナーキズム研究会」って書かれた段ボール板を隣に置いてはいたよ。

G:申し訳程度のアナーキズム感を演出するのね。

R:だれか人は来てくれたの?

D:基本的には細々と知り合いが来てくれたって感じだね。でも、新しく声を掛けてくれた人も何人かいたよ。来てくれた人には、直近にやる予定だった浅羽通明『アナーキズム』の読書会のビラを渡していた。

R:まぁ、冬におでん配ってたら、人が来そうっちゃ来そうだよね。フツーに寒いし、タダならおでん食いたいもん。

D:第1次おでん闘争は、基本身内しか来なかったんだけど、知り合いじゃない人が3人話しかけてくれたんだよね。

G:おぉ。どんな人が来たの?

D:2人はフツーの大学生。で、もう一人が、キャンパス内を散歩していたフツーのおじさん。

R:おじさんが来たんだ。どんな話をしたの。

D:「ウチの娘が、東北大学を受験しようと思っているんだけどどうすればいいかね」って受験相談された。

R:えぇ……。

D:無下にするわけにもいかず、「僕はこんな受験勉強をしていました」っていう風にバカマジメに応えてた。

R:活動の実質初日におでん片手に受験相談してたの?!

G:受験体制に屈伏してるじゃん。そんなんでいいのか。


おでん闘争② 冷笑系とクリスマスイブにレスバする

D:第一次おでん闘争はそんな感じで、第二次はその1週間後、クリスマスイブにやってたんだよね。

R:クリスマスイブにおでん配ってたの?!

D:クリスマスイブだから、逆に暇な奴がキャンパスにメチャクチャいるかな、って思ったら、その逆にそんなことはなく、一人しか話しかけてくれなかった。

G:あらら……。でもその一人とは逆に仲良くなれるんじゃない?

D:それが、その一人もメチャクチャめんどくさい奴だったんだよね。「アナーキズム研究会」って名前を見てからずっと冷笑的な態度でからかってきて、すごいムカついた。

R:えぇ……。どういうこと言ってくるの?

D:「アナーキズムとか終わってるでしょ(笑)」みたいな感じでスカしてくるんだよ。それで、「ウチはアナーキズムを標榜しているんじゃなくてアナーキズムを研究しているんです」みたいにテキトーに流すんだけど、しばらくするとまた「アナーキズムとか終わってるでしょ(笑)」みたいな感じで蒸し返してくる。

R:ウザいな。

G:クリスマスイブに知り合いでもない冷笑系と寒空の下でレスバするの、想定しうる限り最悪の学生生活だ。

D:不毛なレスバを延々しながら、「クリスマスイブに僕は何やっているんだろう……。」と虚しくなり、おでん闘争はそれっきりで終焉した。

G:😢


マジメにアナーキズム研究、しかし……

G:おでん闘争が終わってからは何やってたの?

D:年が明けてから2月いっぱいまでは、浅羽通明『アナーキズム』読書会をやっていたね。そのビラを作って、大学に貼って宣伝とかしてた。

分かりやすく解説。

G:マジメなアナーキズムの勉強にとりかかるわけですね。

R:それはどれくらい集まったの?

D:僕ともう一人アナーキズム研究会を主催側としてやっている友達がいて、僕と彼以外には一人か二人しか来なかった。

G:まぁ、ゼロではないけど少ないよね。

D:うん。それで何を血迷ったか、やっぱ人があんまり集まらないのは、「アナーキズム」とかミーハーでナンパすぎるからであって、もっとガチガチにやった方がいいんじゃないかと思ったんだよね。それで、フーコー勉強会を企画する。

G:えぇ……。絶対逆でしょ。

D:それで、フーコー読書会を開いたら、案の定僕と共同主催の友達以外誰も来ない。

G:まぁアナーキズムで来ないんならそうだよね。

D:何で誰も来ないんだろうと思ったときに、フーコーとかもう時代遅れだし、ミーハーすぎて誰も興味ないでしょ、これからはアガンベンだ!!ってことで、次はアガンベン読書会を計画する。

G:絶対そういうことじゃないよね。

D:うん、案の定だれも来なかった。しかも、何冊も読んで準備したんだけど、結局アガンベンが何を言ってるのか、僕自身も何も分かんなかったんだよね。あらゆる意味で徒労だった。

R:😢

(おわり)


後編に続く。


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