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カラスたちの昼下がり

昔はスズメの多かったこの街。
最近、カラスが増えたせいか、全く見かけなくなってしまった。

電線や、近所のビルの上から、「カーカー」とにぎやかだ。カラス同志の朝の挨拶の様だ。

幼い頃、鳴き真似したら、母に、
「カラスは、頭いいから、真似したらダメよ」と言われて以来、真似はしない。

以前、テレビ番組で「カラス語」なるカラスの言語を研究をしている大学教授が紹介されていた。カラスは、相当、知能が高いらしい。鳴き声を分類して、カーと鳴いたら何。カーカーと鳴いたら何。カーカーカーと鳴いたら何と言う具合に説明していた。

その教授は、カラスたちが仲間に危険を知らせる声と思われる声、
濁った様な高い声で鳴く、確か「ガーガーガーガーガー」?と言う鳴き声を録音してカラスが集まって困っている地域で、コレを聞かせるとカラスが逃げる。
そうやって応用していると、紹介されていた。

ある日、引っ越す前のマンションで、エレベーターに乗ろうとする私に、隣のビルにとまったカラスが話しかけてきた。
「カーカーカー」
思わず返事しそうになった。
いけない。小さい時の母の言葉がよぎる。でも、あれは、たぶん挨拶だった様な気がした。敵と思われずによかった。

別の日の昼下がり。実家の近くのビルの建て替えの空き地で、カラスがにぎやかだった。
何か、楽しそうな、明らかに警戒とは異なる、かわいい?ように聞こえる鳴き声がしていた。

二階の窓から、そっとのぞくと、幼いカラスが、空き地に出来た水たまりで遊んでいる。
何ヶ所かできた水たまり。友だちカラスが横からのぞきこむ。
そして、真似して、水浴び。
カラスをかわいいと思ったのは初めてだった。
電線の上にとまったカラスが、見守るように、例の警戒の声みたいな声で「カーカーカーカー」とたしなめる様に鳴いた。見ると、車が近づいてきていた。
「うわ、きっと、お母さんカラスだ」
確か「親」という漢字は、高い木の上から子を見守るという意味だと習った、その通りの構図。

こんな時に、近づくと、カラスに攻撃されるのかもしれない。

母ガラスに高い所から見守られながら、子ガラスは安心して遊んでいた。
ある昼下がりの事だ。

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