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できる新卒、できない新卒

新年度を迎え、また今年も新卒社員が入社する時期となった。
OJTを終えた昨年度の新入社員が、一年先輩となり旅立つ。

私がパート事務を手伝っている介護施設でも今日、門出を迎えた元新卒の2人がOJTを卒業した。

A君とBさん。
学部は違えど同じ大学を卒業し、現場に必要な経験や資格はない。

スタートは全く違わないはずだった。しいて言えば、女性の多い職場に若い男性社員君が入ってくれば、同時に入社した女性社員のBさんよりはA君の方が何かとちやほやされ、努力なしで可愛がられキャラという地位を獲得できる。

私から見ても少しひいきに見えた。だが、Bさんは特に気にしていない雰囲気だった。

言われた、覚えた事を淡々と手のひらサイズのメモ帳に書き込んでいるBさん。
一方、A君はおばさま達にかまわれ嬉しそうにしていた。教えてもらった仕事を、「はい、なるほどです」と返しメモはとらない。

電話の取り方についても、
A君はなるべく電話を取ろうとしない。逃げてるのかな?と感じる事しばしば。出てもしどろもどろ。それは仕方ない。
Bさんはワンコール目で周囲に取れる人がいないか確認し、電話へ走る。〈お電話ありがとうございます。◯◯会社◯◯でございます〉とネームプレートの裏に忍ばせたメモ紙を、震えた声で読み上げる。

昼の休憩室では、
A君は誰よりも先にレンジでお弁当を温める。持参弁当の職員が多く、レンジ待ちができるからだろうか。食べ終わると、狭い休憩室で壁に頭をもたれ、片膝立ててスマホをいじる。
Bさんはおにぎりとか、サンドウィッチとか、いつも手頃に済ませている。食べ終わると、午後の業務の確認やレポートを書き込んでいる。

レクリエーションの担当になったときは、
A君は、先輩が先週行っていた内容と全く同じ設定と材料で行い、
ひとりの利用者がゲームについて苦言を呈すと、
「僕が考えたわけじゃないんで」
とヘラヘラと言う。
Bさんは、料理レクを指示され、自ら考えた道明寺風おやつを、利用者と一緒に作った。
「家で2回練習したのにあんまり上手くできませんでしたー」と恥ずかしそうに言う。

初夜勤デビューの日、
A君は時間ギリギリ(いつもギリギリ)
もちろんメモも情報も取らず、教えてもらい待ち。
Bさんは30分前には来て、日中の情報収集している。定刻になると、夜勤業務とタイトルされたバインダーをデスクに置き、都度確認する。マーカーやコメントがびっしりと加えられている。

「お疲れ様。どうだった?初夜勤は」と顔を合わせた私に聞かれ、
A君は、「まあまあでした。眠くてぼーっとしてます。お疲れ様でした」
Bさんは、「いやー疲れました。予定通りに終わらなくて、朝は焦りました。でもなんとか終わったんで、帰って速攻寝ます」
2人とも疲れた背中で帰って行った。

そんな2人が一年を迎え、また新卒が入る。
職場の風紀は職員にかかっている。
だけど社会性や人間力には格差がある。
残念ながら、マンパワー不足と言い訳し教育環境や指導力も完璧にはいかない。
世相がら、権利主義や働き方改革も影響があるのではないか。
レベルを上げるより、現状維持するだけでキャパオーバーなのはどこの業界も同じかもしれない。
辞めないでさえくれればいい。
事故さえなければいい。
どこにしわ寄せが行き、どうすれば改善できるのか。
無力なパート事務の私ができることに限りがあるかもしれない。
あの2人が、
社会人としていつまでも向上心を持ち続けてほしい。
ただそれだけを願っている。
まだいくらでも可能性はあるのだから。

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