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言葉が見つからない

先日、日本から台湾にワクチンが届けられた。その日の彼からのLINE第一声は、「ワクチンありがとう」だった。わたしは、複雑だった。だって、日本では使われないワクチン。有効率も他のワクチンより低いし、何より血栓ができる可能性が高いと言われているワクチンだったから。「日本にしては、素早い行動だったよね。」ワクチンに対する日本での評判はどうしても伝えられなかった。「台湾では、もともとAZのワクチンが使われている。」そんな記事を見つけて、それがモヤモヤした気持ちを少しだけ落ち着かせてくれた。

6月18日の夕方。金曜日の夕方の街には思った以上に人がいた。わたしは、久しぶりに伸びた髪を切りに美容院へ出掛けていた。美容師さんとワクチンについて話をしているところ、彼からLINEが入った。新聞報道のURLとメッセージ。さっとメッセージに目を通した。ワクチンのことが書いてある。まだすぐに中国語を理解できないわたしは、美容師さんとちょうどワクチンの話をしていたこともあり、「あ、彼からワクチンを打って調子が悪くなったみたいなこと言ってます。」「ワクチンを打って亡くなっている方も多いって聞きますよね。」そんな会話をして、美容院を後にした。

すっきりした気持ちで改めて画面に目を落とすと、「6月15日の夜7時ぐらいにワクチンを打って、今朝4時過ぎに僕にうつ。呼吸してないって」「???」「ワクチン打ったの?」「打ってない。僕のお父さん。」そこで初めて分かった。(ワクチンを打つと電話をするがどちらも打つという漢字を使うので混乱した)「6月15日の夜7時ぐらいにワクチンを打って、今朝(6月18日)4時過ぎに電話があった。(お父さんが)呼吸していないって。」そこで理解したわたしは、やっと一緒に送られてきたURLを思い出し開いた。「ワクチン接種後、3日後に死亡」「この記事は、あなたのお父さんのこと?」「うん...」

わたしは、言葉を探してLINEに打ち込んだ。でも、打ち込んでは消し、打ち込んでは消しを繰り返した。どの言葉も違っていて、言葉が見つからない。彼に何1つ言葉をかけられなかった。何分経ったか、わたしがかけた言葉は、「ご飯食べた?」それだけだった。

わたしは、今日本にいて、すぐに台湾に行くことはできない。ただただ、早朝四時に電話を受け、信じられない気持ちや怖い気持ち、泣きたい気持ち、たくさんの気持ちを抱えて、まだ暗い中、車を実家まで走らせた彼の気持ちを思うとぎゅっと抱きしめてあげたい気持ちでいっぱいだった。

台湾では、15日から高齢者に対してワクチン接種が始まり、4日間で42人が死亡している。多いと感じるのは、わたしだけなのだろうか。

彼のお父さんは、糖尿病と高血圧があったらしい。糖尿病の持病がある方は、コロナに感染してもワクチンを打ってもどちらも高い危険があるのではないだろうか。(先日日本でもその日のうちに亡くなったという報道も見た)もし、これからワクチンを打つつもりで糖尿病をお持ちの方は、お医者さんとよく話し合ってください。彼のお父さんの死を無駄にしないために。

彼は、これからワクチン被害者の会に入るのかな。誰かに怒りを持ち続けて暮らしていくのかな。そんな人生、お父さんは望むのかな。

わたしは、どう彼に寄り添っていけばいいのかずっと考えている。答えは見つからない。ただ、彼が穏やかに、悲しみが少しでも和らぐように愛情が伝わる言葉を探し続けている。

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