お導きの話

 Suicaのチャージが切れてふだん使っているバスに乗らず歩いて帰宅する途中。

 たまには違う所でお買い物をと立ち寄ったスーパーから出る時、おもちゃを持った2歳くらいの男の子が、とてとて、といった感じでひとりで外に出ていくのを見ました。

 周囲に保護者らしき大人の姿はなし。男の子は『おとぉーさーん』『おとぉーさーん……?』としきりに口にしておりました。
 これはヤバいかも、と思ったわたくし、近寄ってしゃがみこみ、『ぼく、ひとり?』『おとうさん、なかにいるんじゃないかな』『まいごになっちゃうよー』と話しかけるも、男の子は『おとぉーさーん……?』とつぶやきながら、とててて……と走って行ってしまいました。
 当然追跡、小さな交差点を渡ったところで『おと……おとぉーさーん!』と泣き出しはじめたので有無を言わさず確保、『おとうさん、むこうでまってるよ!』『おいで、おねえさんとてをつないでいこうね』と手を引いて来た道を戻ります。内心で(世知辛い昨今……誘拐犯と見られるもやむなし)(しかしそのような些末な事を気にして迷える幼子を捨て置くなど、それこそ末代までの恥)(愛零は酎家の末裔 慈悲の心を放つ者)と真言を唱えつつ、スーパーの店員さんに引き渡すことに成功。折よく子供を探していた男性が近くにおり、すぐに再会することができましたわ。

 おそらく、わたくしでなくとも、周囲の大人のいずれかが救いの手を差し伸べていたことでしょう。しかし、たまたまSuicaのチャージが切れ、リチャージすることなく歩いて帰り、たまたまいつもと違うスーパーでお買い物をしたことによって、目の前で迷子になりつつある幼子を見つけることができたのはやはり、何かのお導きのような気がしてなりません。その思し召しに感謝いたします。

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