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仲間の死からの復活劇〜BAKU

私が、初めて買ったCDは、

BAKU『聞こえる』。

BAKUは、バンドブーム真っ只中の、91年に、
19歳でデビューしたバンドだ。

実は、高校卒業後、すぐデビューするはずが、
メンバーを乗せた車が事故を起こし、
助手席に座っていた、阿部浩之さんが亡くなった。

もう、BAKUは、解散するのではないか。

そんな噂が、飛び交った。

ギターの車谷浩司さんが、
『BAKUのベースは、阿部しかいない』
と、かなり言っている、と。

しかし、BAKUは、1年後、デビューライブを行った。

ベースの定位置には、阿部さんのベースが置かれていた。

サポートベーシストを加え、BAKUは、動き出した。

しかし、当時、10代でデビューするバンドは珍しく、
また、歌詞が、物を擬人化した物が多く、
あれはポップスだ、アイドルだ、ロックじゃない、
と、散々言われた。

そんな中、リリースされた、この、
『聞こえる』というアルバム。

物を擬人化した歌詞はなくなり、
『生と死』をテーマにした歌詞になっていった。

勿論、恋愛の歌もあるが、特に後半2曲は、
『生と死』が強く反映されている。

私は、インディーズから、BAKUを聞いているが、
可愛らしい、という印象はなくなり、
ギターを中心とした、ロックになっていった。

この『聞こえる』は、BAKUが、

俺たちは、ロックバンドだ!

と、宣言したアルバムのように思う。

メンバー、特に、車谷さんの、解散後の活躍
(Air名義)を見れば、
そのギターテクニックを疑う余地はないが、
バンド当時は、

スタッフが弾いている
影武者がいる

と、業界内で噂されていたそうだ。

若いのに、こんなに弾けるはずがない、と。

他にも、メンバーは、若さ故の嫌な思いを、たくさんしたという。

しかし、この『聞こえる』をリリースしたことで、自分達は、ロックバンドである、と、証明した。

最も、その後も、誹謗中傷は、止まなかったが。

私は、このアルバムで、BAKUはロックバンドだと確信したし、
それまで、カセットテープで聞いていたので、
音が良くなって、嬉しかったのを覚えている。

その反面、ボーカルの谷口宗一さんが、
だいぶ無理をしているな、とも思った。

谷口さんは、ポップスが好きなタイプだったが、
バンドの音楽性は、どんどん、ロックへ傾いていた。

歌唱を聞くと、喉に負担が掛かるような、
無理にロックを意識して歌っているような、
そんな印象を受ける。

BAKUは、ロックバンドだ、と、
高らかに宣言したアルバムであることは、
間違いない。

しかし、それが、後に響いてくることは、
中学生の私には、分からなかった。

ラストナンバー『聞こえる』のサビは、こう歌われている。

聞こえる 休むことなく
聞こえる 生きてる証
BAKU『聞こえる』

鼓動が、休むことなく聞こえる。

仲間の死から、止まったバンドを、
もう一度動かして、
辿り着いた境地、なのかもしれない。

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