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夢で逢う

久しぶりに昔好きだったあの子が夢に出てきた。
あの子が出てくる夢では決まって制服を着ていて、わたしの気持ちはずっとあの頃に取り残されているみたいだ。その証拠に、今となってはもうどこが好きだったとかそんなことは忘れてしまって好きだったという過去があるだけなのに、夢の中ではいとも簡単にあの頃の気持ちに戻ることができる。今はもう会うことさえないというのに、夢の中であの子を見かけると当然のように話しかけて、友だちだったあの頃に戻る。

夢の中でわたしはあの子と一緒に学校の最寄りの駅で電車を待っていて、駅のホームに爆弾がいくつかあって爆発したと思ったらそれはただの花火で、びっくりしたね。死んじゃうかと思った。ってあの子と話していた。そして、なんの脈絡もなく、あの子はわたしに短いキスをした。夢の中なのに何が起こったのか理解できなくて、上靴持って帰ってくるの忘れちゃったとかそんなことを言っていた。夢から覚めてもずっとくちびるに体温が残っている感じがして、10分くらい何もできず、夢のことを思い出しては ぼーっとしてしまった。別にわたしはあの子とキスがしたかったわけじゃない。でもいつだったか、友だちがアトラクションの待ち時間とかに急にキスしてくるんだよねって話されたときは怒りでどうにかなりそうだった。わたしがずっと大切にして壊さないように続けている日常をいとも簡単に壊していくやつが憎かったし、それを許しているのも悔しかったし、何よりわたしにそんなこと言わなくていいじゃんと泣きたい気持ちでいっぱいになったのを覚えている。

わたしはこの先ずっと、あの子に囚われて生きていくんだろうか。あれを恋だと呼べるのかわからないけれど、10年以上拗らせてしまった気持ちにはなかなか終止符が打てないらしい。もうなんとも思っていないと思っていたのに、あんな夢を見るだなんて心のどこかでは忘れられていないんだろうな。はやく忘れてしまいたい。恋を忘れるためには次の恋なんて言うけれど、次の恋はいったい いつになるのやら…



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