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それって誰よ。

 普段観戦するスポーツといえば野球がほとんどですが、ここ最近はご多分に漏れずちゃっかりとワールドカップを楽しんでおります。

 知識に関しては、小学生の頃に読んだ『キャプテン翼』(中学生編まで)が頭の片隅にちょびっと残っている程度なので、詳しくはありません。選手の名前すらほとんど知らない状態でのキックオフ。それでも試合を見ていると惹き込まれるものですね。



◆ドアン・リース

 韓国在住のため、中継は韓国語で観ています。そこで聞こえてきた選手の名前が・・・

「ドアン・リース」

 え、誰よ。

 明らかに対戦相手のドイツ人選手ではなく、日本人選手に向かって言っています。もちろん試合を観ている方は分かると思いますが、堂安律(DOAN Ritsu)選手のことでした。

 しかし、何度聞いても「ドアン・リース」としか聞こえません。堂安を「ドアン」と発音するのは理解できます。英語表記も ”DOAN” なので。

 問題は「リース」です。

 しかし名前が律(りつ)と分かった瞬間に、思い出しました。韓国語には「つ」の発音がないのだと。

 ハングルには基本母音10字と合成母音(または二重母音)11字、計21字の母音があります。これらに19字の子音が組み合わさることでハングル文字は形成されますが、この組み合わせのバリエーションが豊富なため、表記可能なハングル文字数は有に1万を越えます(※)。

※詳しく知りたい方は下記ページをご参考ください。
〈ハングルの旅 7〉表記可能な文字は1万1,172個

 これほど膨大な文字数を持つにもかかわらず、ハングルには「つ」の音がありません。そのため「つ」を含む外来語には、近い音を持つ文字が代わりに使用されます。たとえば、みんな大好き「とんかつ」は「돈가스(とんかす)」と表記されることが多いです。

 さてさて、本題の堂安選手はというと「도안 리쓰」。

 「쓰」は少し強めの「ス」の音で、日本語で表記するとすれば「ッス」の音になります。そう、より正確にいうと「ドアン・リッス」と呼んでいたわけです。

 この「쓰」は、日本語の「つ」の代替としてしばしば使用されます。

 私の名前にも「つ」が入っているのですが、特に学生の頃は決まってこの「쓰」を使用され、私はそれが気に入らなかったので「츠(※)」に変えてもらっていました。なぜなら「쓰」は何度聞いても「す」でしかなく、一方の「츠」は辛うじて「つ」に聞こえなくもないからです。

※「츠」は「い」のように口を横に開いた状態で「チュ」と発音します。

◆イトー・ジュニア

 さて、もう一方いらっしゃいました。名前がよく分からない選手。

 この選手に関しては「イトー、イトー」と言っていたので、きっと伊藤か伊東だろうとそれほど気にしていませんでしたが、途中途中で気になる単語が耳に付きます。それが・・・

「ジュニア」

 あらめて聞いてみると、やはり「イトー・ジュニア」と言っています。

 「え、ロハス・ジュニア的な?」
 『まさかあ。日本人だよ?』
 「じゃあ、千原ジュニア的な」
 『選手だよ。芸人さんじゃない』
 「んじゃ、ライアン小川
 『しつけえな』

 と、心の中で一通りのひとり突っこみが終わったところで調べてみると「純也」ではないですか。そこで隣にいた韓国人の旦那に訊いてみました。

「ねね、ジュンヤって言ってる? ジュニアって言ってるよね?」

 しかし彼の返答はこうです。

「何言ってんの~。はっきりと『ジュンヤ』って言ってるじゃ~ん」

 しかも「ひょっとしてリスニング力が落ちた?」と言われる始末。全くもって納得がいかない私は、日本人の名前を聞き間違えるわけがないという確固たる自信のなか(つまり、原因は発信者側にあるという決めつけ)、ハングル表記の「이토 준야」を見て気が付きました。

 ジュニアじゃなくて『ジュニャ』と言ってるんだ、と。

 준야は 준(ジュン)と 야(ヤ)が組み合わさって出来ていますが、この「ン」にあたる「ㄴ」が隣の「야(ヤ)」の音と合わさって「ジュニャ」と発音されているのです。英語の ”Can I ~~~?” が「キャン・アイ」ではなく「キャナイ」となるのと同じ原理です。

 そう、だから、私の耳はおかしくない。
 リスニング力も落ちてはない(←気にしていた)。

 むしろ、この小さな違いを聞き逃さなかった自分を誇りに思いたいと思います。

 ではでは。

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