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「カラオケ行こ!」名付けられない関係性の尊さ

数年前、和山やま氏の「カラオケ行こ」のコミックスを夫がふらりと買ってきて、「面白かったから読む?」と言われなんとなく読み、「うん、まあまあ面白かったよ」で終わりそのままコミックスはメルカリ行き、その後その漫画の存在すら忘れていたのだが、皆様知っての通り実写版が公開され、かつ評判もすこぶる良かった為、興味本位で夫と二人で先日鑑賞してきた。

結果、やはりすこぶる良かったのである。
原作を殺さず、良さを活かしつつも映画ならではのエピソードや人物背景などが加えられ、そして何よりも

聡実君役の俳優さんが素晴らしい逸材だった!!!

もう、どこで見つけてきたの!?よくもまあ発見されたね!というぐらいに絶妙な「どこか陰のある思春期の繊細さと幼さを兼ね備えた(美)少年」だったのである。
萩尾望都の「トーマの心臓」でいうところのユリスモールっぽさがあるなあと思ってしまった。(エーリクと見る人もいるだろうが、私はユーリっぽさを感じた)
そしてヤクザの狂児(きょうじ)役の綾野剛も、原作の風貌とは違ったし「ん?綾野剛ってこんな老けてたっけ?」とやや面食らいつつも最後まで見て「うん、彼は狂児だったな」という結論にいきついた。黒いスーツを着てポケットに手を入れて歩いてるだけでとてつもないヤクザ感というか、「普通の人じゃねえ」感を出せるのはすごいなあと感服した。

基本的には原作に忠実に、シュールな笑いの部分も多く、劇場内は声をあげて笑っている人が多かった。(夫も隣で声を出してげらげら笑っていたが、私は映画館で声を出して笑う事ができないたちなので肩身が狭かった)
撮影場所は全然違う県だけど(これは不満点)、一応大阪が舞台なので、俳優陣も大阪弁を頑張ってくれていた。大阪在住の身からすると「頑張ってるけど、おしい」感は拭えなかったが、そこはご愛嬌。特に聡実役の子はかなり練習したんだろうなという感じがして、思ったよりナチュラルに話せており、努力が垣間見れて良かった。
ラスト、当たり前だがコミックス版だと聞く事のできない聡実の歌声を聞けたのも感動した。多分聡実役の斎藤潤さんもちょうど変声期を迎えている時期なのか、まさにギリギリのところで死ぬ気で狂児への鎮魂歌を歌っている感じでとても良かった。

劇場を出てから夫と「いやー面白かったね!!」とはしゃぎ、そして結局のところ、電子書籍版にて漫画も再購入、続編の「ファミレス行こ」上巻(これも下巻が待ち遠しいというかマジで待てないぞ)も購入、そしてつい先日劇場版を二回目鑑賞。二回見てもやはり面白かった。

私は聡実と狂児の関係性、いわゆる普通の友人でもなく兄弟でも親子でもない、もちろん恋愛でもない、名前のつけられないこの特別な関係性(知らなかったけれどこうゆうのをブロマンスというみたいだね)がすごく尊く感じられときめくのだが、結構レビューを見ていると「BL」作品として見ていたりそういった展開を望む人も多いみたいだった。
うーん。
私は別に二人のキスシーンが見たいわけではない。
この名付けられないけれど特別な感情を互いに抱く二人がとても尊いので、ぜひこの関係性のまま…
と思っていたのだが続編の「ファミレス行こ。」の上巻を読んで、なんだかまたちょっとニュアンスが違ってきたのかな、という感じがした。元々原作者の和山さんはBLを描いてきた方らしいので、やはりブロマンスというよりはBLとして描きたいのだろうか。うーーーん。上巻のラスト、結構「え!?」って感じで終わるので、下巻が出るの、三年後とからしいけど耐えられる気がしないぞ。

ちなみに上下巻揃うまで読みたくない派の夫にファミレス行こをむりやり読ませ、感想を聞いたところ、ちょっとびっくり考察が飛び出てきた。
本編に書かれていないところで聡実は狂児の余命が短いとなぜか勘違いしており「いつ会えなくなってもおかしくない」と思っていて、それが下巻にて回収され「カラオケ〜」のラストと同様に「聡実くんをおいて死ぬわけないやん」に繋がる、というなんかお涙頂戴展開を熱望していたのだった笑。夫も二人の関係性はいわゆる「ブロマンス」として見ておりBLにはなってほしくない、という気持ちがあってそこは私と共通の思いだった。

いろんな方がとても深い考察(時にはそ…そこまで掘り下げますか…!?と恐れおののく程の)をされていて読んでいてそれは面白いんだけれど、結局のところ、私達はただ和山さんの描く二人の結末を待つのみ。未来に楽しみがあるのはいいことである。とりあえず下巻読むまでは死ねませんね。

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