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なぜ男性は寿命が短いのか

 おなじみの寿命シリーズの投稿である。今回はなぜ男女で寿命が異なるのか考えてみよう。日本人の男女の寿命差は6歳である。百寿者の90%近くが女性であり、女性の方が寿命が長いのは確実である。ただ、こうした寿命の差異は近代になって生まれたものであり、それ以前は女性の方がやや寿命が短かった時代もあるのだ。

寿命の男女差

 こちらは寿命の男女差を示した図である。日本の寿命の男女差はやや長いことが分かる。

 男女差が大きい国と小さい国の差は色々考えられるが、一番は産褥死だ。実は近代以前は女性の方が寿命が短かった。当時のお産は命がけで、一回のお産の死亡率は1%とか2%といったレベルだ。しかも人生で産んだ子供の数が今より多かったため、計算上は成人女性の10%〜20%がお産で死んだことになる。今でもアフリカの最貧国では産褥死する人間が多く、女性の平均寿命の短さに繋がっている。

 また、イスラム世界の女性の寿命も短い。これは男尊女卑の気風や、女性の診察に制限が多いことなどが挙げられるだろう。極端な例だとタリバン政権下のアフガニスタンが挙げられる。イスラム教の影響が強い地域は女性の患者は女医しか診察できない。タリバンは女子教育を撤廃したため、将来的にアフガニスタンの女性は病院に行けないことになる。

 しかし、普通の先進国では寿命の男女差は大きい。だいたい4年から6年という辺りが多いようだ。その理由について探ってみよう。

男性の方が体格が大きい

 これが真っ先に挙げられる。栄養失調等の影響を除外した場合、人間は身長が低いほうが長生きするらしい。これは人間に限ったことではなく、哺乳類全般に言えることである。1センチごとに寿命が0.5年縮まるという研究もある。日本人の身長の男女差は12センチあるが、理論上は男女の寿命差の6年は説明できることになる。

 身長が高いほうが死にやすい理由は色々考えられる。まず絶対的な細胞量が多いので癌になりやすい。また、大柄な人の内臓は身体を維持するために酷使されており、疾患を抱えるリスクが高い。老年期の行動も関係しているかもしれない。身体が大きい方が転倒した時もダメージを受けやすいからだ。

男性の方が不摂生しやすい

 これも挙げられる。男性と女性、どう見ても男性の方が大酒飲みや暴飲暴食を好む。病院に行く回数も男性の方が少ないらしい。喫煙者の割合も男性の方が遥かに高い。こうした事情を反映してか、独身男性の寿命は10年以上短いようだ。

男性の方がイレギュラーな死をしやすい

 イレギュラーな死とは自殺・事故死・殺人・戦死などだ。こうした行為は基本的に男性の方が明らかに多い。自殺率も事故死率もどの国でも男性の方が高い。男性の方が活動量が多く、過激な行動を取りやすいからだろう。

男性の染色体が少ない

 男性はXY染色体だが、女性はXX染色体だ。女性の方が遺伝子的に最初から強いという議論がある。男性の場合はX染色体が1つしか無いため、エラーを抱えてもバックアップがない。例えば血友病は男性ばかりがかかる病気だが、これは男性にX染色体が1つしか無いことが原因で起きる。女性の場合は原因因子を持っていたもX染色体が2つあるので、保因者で済むことがほとんどだ。同様に色弱も男性ばかりだ。こうした要因が男性の寿命の短さに影響しているのかもしれない。

男性ホルモンは体に悪い

 この可能性もある。宦官に関する研究で、彼らの寿命が近代以前にしてはありえないレベルで高かったというものがある。男性ホルモンは健康にとってあまり良くないようだ。漫画では力を手にしたものは代償を払うと決まっているが、男性ホルモンもまさに力を増強することで寿命を縮めるという効果を持つのかもしれない。

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