今の老人は15歳ほど若返っているので、人生100年時代を心配する必要はないのでは
最近は人生100年時代という語がすっかり定着した。今後も日本人が健康で活動的であり続ける期間は伸びるだろう。転職や起業の幅もホロがるし、趣味の数も増えていく。概ね素晴らしいことだと思っている。
ところがニュースや動画サイトのコメント欄ではこれとは異なる意見が多く見られる。どうも寿命の伸びや長寿化に否定的な人間が世の中にはかなり多いようだ。私にとってはかなりの驚きだった。
良く見られるのは「身体がボロボロになってまで長生きしたくない」というものだ。この延長で長寿社会による社会保障上の負担を懸念する声も見られる。どうやら世の中の大半の人間はライフステージについて保守的な考えしか持っていないようだ。科学技術や働き方に関して多様な展望が期待されていることを考えると奇妙である。
もっとも、寿命が伸びたことによって多くの人間が苦しみながら過ごすという見解は間違いだ。例えばこのようなデータがある。
この調査を信じる限り、日本人の老人はこの20年で運動機能が10年〜15年ほど若返っているらしい。他の資料でも似た傾向が見られる。
こちらのデータでもやはり、この20年で10年〜15年ほど老人の身体機能は若返っていることがわかるだろう。
このデータを見てもやはりこの20年で10年〜15年ほど日本人の老人は若返っているようだ。寿命が伸びたことで虚弱な人間が増えているわけではないらしい。令和の80歳は恐らく平成初期の65歳なのだ。今の高齢者はとんでもなく元気ということになる。この画像の元となったサイトの運営者も70代だそうだ。
こうなると、定年退職の制度も見直しが必須だろう。平成初期の人間は60歳で定年退職していたが、これは現代の75歳に相当する。こうなると確かに「今までお疲れ様でした」という感覚になる。ところが現代の定年退職は職業人生の終わりというよりも、強制退職という側面が強くなっている。定年後のセカンドキャリアに関して議論が活発になっている背景にはこうした事情が隠れているだろう。
私は高齢化社会に関してあまりにもネガティブな論調が多すぎると考えている。昔の社会はいより若年人口が多かったが、手放しに肯定することはできないだろう。体の不自由を抱える人間は昔だって多かったはずだ。現在では治療可能な病気のせいで健康を損なう人間は多かったし、事故や災害も頻発していた。昭和の社会に寝たきりの90代老人はいなかったかもしれないが、その代わりに20代の青年が結核で横臥していた。寿命が伸びたところで、それは日本人の人生がゴム紐を伸ばすように移動しただけで、衰弱した老人があちこちでうめき苦しんでいるわけではない。
気になる点は、この20年で老人の身体機能が15年向上したとしても、寿命はせいぜい5年程度しか伸びていない点だ。日本人のピンピンコロリ化はむしろ進んでいるのだろうか。生物学的に寿命と老化は別のメカニズムであると言われているが、確かにそうなのかもしれない。今世紀末の日本人は、100歳まで元気だったのに、ある日突然死亡するという最期がマジョリティとなるかもしれない。
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