韓国の若者世代が地獄すぎる

 最近は韓国の若者世代がかなり苦しんでいるらしい。無限競争社会とかヘル朝鮮という言葉もあるようだ。30代男性の半分以上が未婚なんて話もある。韓国の特殊合計出生率は0.7であり、まだまだ下がる気配がある。

 筆者は歳を追うごとに人生がつらいと思うことが増えた。苦しい労働、高い不動産価格、家庭設計の難しさなど、問題ばかりだ。こうした困難は自分だけが抱えているのではなく、多かれ少なかれ日本人全体が抱えている関門だと思う。

 ただ、それでも韓国よりはマシだよなと思うことが多い。なぜ韓国があそこまで生きづらそうにしているか。その理由を考えてみると、単純な理由に行きつく。韓国は社会の変化のペースが速すぎるのではないかという点だ。韓国の若者世代が抱えている問題は日本でいうところのバブル世代・氷河期世代・その下の世代が抱えている問題が一気に来たような感じなのだ。

 韓国の成長ペースは非常に速かった。これは経済史的な推計を見れば明らかだ。例えば日本と比較してみよう。日本は1868年の明治維新で近代化を開始し、欧米に追い付いたのは1970年代のオイルショックの辺りだ。欧米が18世紀の後半から200年かけて成長したところを100年で追いついたので、ペースは2倍である。韓国が高度成長を開始したのは朝鮮戦争後の1953年、先進国に追いついたのは2010年代の半ばだ。この場合、成長のペースは日本のさらに2倍~3倍となる。すさまじい急成長だ。これほどの成長を遂げればどこかにひずみは生まれるに違いない。日本でいうところの三世代分の問題が一つの世代に押しかかっているのではないか。

 バブル世代は日本の場合、昭和の生き方を保持できた最後の世代だ。この時代はまだ女性の社会進出には否定的であることが多く、長時間労働を美徳とする文化があった。日本の場合はこの世代はそろそろ役職定年を迎えている。日本社会の成長が減速する前に大企業に入り、既得権を30年にわたって守ってきた世代だ。韓国の場合、バブル世代のような価値観が未だに強いようだ。社内の礼儀作法に細かく、結婚したら男が家をプレゼントしないといけないといった風習が残っている。女性の育休などのも未だに否定的な文化があるらしい。

 次の氷河期世代は悲惨極まりない。この世代は日本経済が停滞期に陥った時代に就職したため、ほとんどがあふれてしまった。韓国も似たような状態にある。2010年代に韓国の高度成長は終了し、安定成長の時代に入った。伸びているのだからいいではないかという考えもあるが、そうもいかない。人間は期待値とのギャップで不幸を感じる生き物だし、高度成長を前提とした進学・就職のシステムが安定成長の時代に対応できなくなっている。韓国の若者の多くは自分が就けると思った仕事に就けず、失業を余儀なくされている。日本の高度成長が終了したのは1970年代だったが、そこまで問題にならなかった。1970年代に就職する若者は断層世代だったため、一学年の人数が少なかった。その後の1980年代はバブル好景気だったため、企業は採用人数を増やした。結果としてその代償を払ったのは氷河期世代だった。韓国の若者はそこまで人数が少なくないので、ロスジェネのような生き方を余儀なくされている。

その下の世代はどうか。1980年代生まれはこれと言って定着した名前が無いのだが、仮にキレる17歳世代と呼ぶことにする。この世代は安倍政権下で女性の社会進出が一気に進んだ世代である。この時代は男性を差し置いて女性が出世するという事態が頻発し、一部の男性が不満を抱えた年代でもある。韓国でも似たように女性の社会進出が進んでいるが、そのことによって男性側が結婚しにくくなってしまった。韓国の男女対立は日本には見られないレベルで深刻なようだ。

 韓国の場合、バブル世代のような成長期の旧態依然とした慣行が残っているにも関わらず、キレる17歳世代のように女性の社会進出を巡る混乱が深刻化し、しかも就職事情は氷河期世代という最悪の状態にある。これでは子育てどころではない。少子化の最大の原因はこうした社会の混乱にあると思われる。日本に比べて三倍のペースで問題が発生しているため、少子化もはるかに深刻なのだ。最近は旧態依然とした慣習はなくなってきたようだが、次に来るのは日本でいうところのゆとり世代の草食化問題だろう。韓国では結婚を最初から希望しない若者が急増しているらしい。

韓国の人口ピラミッド
少子化は危機的な状態になっている

 こうした社会の混乱が招いているのは前例のない少子化だ。韓国の出生率は0.7である。一世代ごとに人口が3分の1になる。韓国の1993年生まれは72万人に対し、2023年生まれは23万人だ。このペースだと2053年生まれは7万人ということになる。一学年7万人となれば、これは人口230万のガザ地区と同じくらいだ。韓国という国は22世紀まで存続するか怪しい。

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