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東大法学部の内部カーストと就活事情について語る

 東大法学部、それは東大の看板学部であり、古来からエリートの登竜門と考えられてきた。現在でも東大文一の偏差値は文系最高峰で、東大でも二番目に難易度の高い学科とされてきた。一部の医学部を除けばこの国で最もレベルの高い学部だろう。また、進路が多種多様なのも特徴だ。今回は東大法学部の内部事情について語りたいと思う。

入学時点

 東大法学部の大半は東大文一の出身である。日本の文系大学の中では最難関であり、理系を含めても一部の医学部を除いて負けることはないだろう。しかも上位層は青天井だ。科学オリンピックの入賞者も複数人知っている。

 女性の割合は25%ほどだ。概ね半分強が現役で、男性の方が圧倒的に浪人率が高い。出身校は首都圏・関西圏の有名中高一貫校と地方公立名門校がほとんどだ。文系最高峰であり、ポジティブな動機で入学してくる者が多いので、理系科目が得意な人が多い。概ね現役合格者は地方公立の文系首席か有名進学校の優秀層だ。浪人だととんでもない逆転合格の者がいる。

 入試の成績と入ってからの優秀さは無関係と言われるが、勤勉な人はやっぱりどちらも強いと思う。なお高校までの「地頭」と司法試験の才能はあまり関係ない。首席入学でも法律にさっぱり興味が持てず、早々に方向転換する者は多い。

 東大は傍系進学が可能なので、文一から他学部に行く人と文一以外から法学部に来る人がいる。どちらも総じてかなり優秀だ。自分のやりたいことを早期に見極め、そのために成績を上位に乗せることができる人はデキるのである。

東大法学部の進路

 東大法学部の進路は大きく分けて「法曹」「官僚」「民間」に分けられる。割合はそれぞれ同じくらいという感じだ。「民間」という進路があるのが独特かもしれない。近年は官僚に全く興味がないという者も多いが、彼らは結構進振りで他学部に逃げていくので、法学部の割合としては大して変わらないと思う。
 法曹志望者は予備試験の突破を目標とする。在学中に合格できなければロースクールに進学する。東大法学部生にとってはローは浪人に近い感覚だ。
 官庁志望者のうち実際に官庁に内定できるのは半分だ。それ以外は基本的に「滑り止め」の民間企業に行くことになる。彼らはメガバンクに進むことが多い。
 民間志望者の多くは法学部に進学したものの、法律に興味があまり持てなかった人間が多い。こうした人間は早々に司法試験から撤退して外資や大手企業に切り替えている。外資が必ずしも優秀層の花形ではないのが経済学部との大きな違いと思われる。東大法学部でも半分は司法試験で挫折するのだが、他の進路が良いのでほとんどハンデにならないのが特徴だ。進路が固定化される医学部にはない強みと思われる。
 もちろんゲーム会社に就職したい等、こだわりを持っている層も一定数おり、彼らは官庁には目もくれずに就職活動を行う。

東大法学部の上位層・中間層・下位層

 どんな集団でも上位2割・中間の6割・落ちこぼれの2割に別れるという俗説がある。いわゆる働き蜂の法則というやつだ。東大法学部も格差が非常に激しい学部の一つである。

 上位層(上位20%以上)は概ね在学中に予備試験に合格するか、上位官庁(財務・外務・警察・経産・自治)に内定することが多い。一部はやりたいことがあって他の省庁や外資系に進むこともある。進路が迷走してやっぱりロースクールに入った人もいる。ただしやっぱり多いのは法曹と上位官庁である。意外に学者は見なかった。法学の探求よりも出世と試験突破が好きなタイプが多いのかもしれない。JTCにこの層はほとんど進まないと見て良いだろう。中には20代にして副市長に就任した知人もいる。
 有名人で挙げるなら、司法試験に合格して財務省に進んだ山口真由だろう。他にも最高裁判事になっていたり、法学者になっていたり、官僚を辞めて政治家になっている人々はだいたいこの層の出身だ。

 中間層(上位20%〜80%)は様々な進路がある。ロースクールに進んで弁護士になる人、中堅官庁(厚労・国交・防衛・金融など)に進む人、一流企業に進む人が多い。官庁の面接で不採用になったものは比較的メガバンクやJRなど保守的な民間企業に進むことが多く、最初から民間志望の者はホワイト企業に絞ったり、外資コンサルを狙ったりなどと独自の方針が明確な人が多い。東大法学部は民間就活ではめっぽう強く、大体が総合商社や大手金融機関に決まる。あえてベンチャーや新興IT企業に飛び込む者もいる。稀に政治系の研究者になる者もいる。
 有名人で挙げるなら、大蔵省に落ちて長銀に進んだ林修だろう。新卒就活にはかなり成功しているのだ。他にも上場企業の社長になっていたり、弁護士としてそこそこ儲けている人々は概ねこの層の出身だ。

 下位層(上位80%以下)に関しては、余り進路が芳しくない。どんな集団にも落ちこぼれは発生するものだ。特に都会に不慣れな地方出身の学生が良く見られる。
 この層の場合、民間就活を試みるもののメガバンクに全滅し、大手企業の内定を掴めないことが多い。東大法学部の下位層は早慶の中堅層よりも就職に苦戦するだろう。
 官庁の場合は運ゲーなので意外に中堅の省庁にも潜り込めたりするが、内定を貰えなかったり、そもそも公務員試験に落ちてしまう者もいる。堅い業界には向いてないと悟り、方針を切り替えて総合商社や広告代理店に内定して大逆転する者もいる。
 よくある進路としては準大手企業・中小コンサル・里帰りして地銀就職・塾講師・プログラマー・怪しげなベンチャー・地方公務員・医学部再受験・フリーター・自殺(!)などだ。もちろん起死回生で穴場の官庁や大手保険会社に入った者もいる。
 有名人としては新興宗教で成功した大川隆法などが挙げられるだろう。

東大法学部生が10人いたら

 東大法学部生の典型的な姿を描いてみよう。ここに東大法学部生が10人いたとする。

 1人目は在学中に予備試験に合格し、最強のエリートコースを歩む。東大医学部と並ぶ知的エリートの最高峰だ。彼らは四大事務所に就職して初年度から1000万を貰うか、裁判官・検察官になる。雲の上のエリートである。

 2人目は東大ローに進学し、法曹のエリートコースに乗る。四大あるいは中堅の弁護士事務所に内定するか、裁判官・検察官になる。一人目と余り変わらないエリートである。たまに学者になる。

 3人目は法曹志望だが順調には行かない人だ。東大ローに落ちて他大に進んだり、司法試験に一発で受からなかったり、事務所の就職に苦戦したりする。就職先は中堅の弁護士事務所か街弁、最悪の場合は司法試験に失敗して行方不明になる。法科大学院在籍中に見切りを付けて就活し、官庁や政府系金融に内定を掴む者もいる。さすがである。

 4人目は国家公務員試験に合格し、上位省庁(財務・外務・警察・経産・自治)に進む者だ。こちらも古典的なエリートコースである。必ずしも上位省庁に進むものが全てではなく、辞退して他の省庁に進むものもいる。この中では外務省が桁違いに難関と思われる。

 5人目はそれ以外の省に進む者だ。国交・厚労・金融・農水・総務が多いが、稀に人事院や国会職員もいる。文科省は不人気である。

 6人目は官庁訪問に失敗して民間企業に進むものである。就職先はメガバンクが多い。官庁志望者は保守的な考えを持っているか、余り民間企業に関して調べていないので、惰性で有名企業の内定をもぎ取って勝負に挑むのが通例だ。

 7人目は外銀やコンサル志望である。金が欲しいが司法試験には向かないと判断した人が多い。官庁と併願する人もいる。割合として首都圏の出身者が目立つ。最近はこのタイプが増えているらしい。

 8人目は日系大手企業を狙うタイプである。普通の文系大学生と言えるだろう。総合商社・デベロッパー・インフラを狙うことが多い。基本的に経済学部と同一だ。基本的にホワイト高給志向で、官庁は眼中にない。

 9人目はやりたいことがあるタイプである。出版社やテレビ局など、法学部っぽくない分野の企業を狙う層だ。地方出身だと地元に貢献したいと里帰りして地銀や地方公務員になったりもする。あえて新卒でベンチャーに入る者も含まれる。他学部の大学院に入ったり、会計士を目指すものもいる。変わり者だと俳優や芸人を目指したりもする。うまく行かなくてメーカーや金融といった業界に結局進むこともある。

 10人目は迷走する層である。やりたいことが見つからずに留年を繰り返したり、就活で希望の会社に全落ちし、無名企業に不本意入社する者が多い(やりたいことがあるタイプとは別だ)。大学院に進んだものの埒が明かず、塾講師になったり、里帰りする者もいた。東大法学部といえども下位一割はかなり就職に苦戦するのだ。自殺者も知人だけで三人出ている。

異常に高い留年率

 東大法学部の特徴として、異常に留年率が高いことが挙げられるだろう。だいたい学年の30%が留年する。ただし単位を落として留年するものは稀だ。大半は就職浪人である。司法試験や官庁など、狙う対象のレベルが高いので浪人が増えてしまうのだ。この文化は昔からのようで、例えば前川喜平は2留、谷垣禎一は4留している。

 なお、留年しても東大法学部に限っては大してハンデにならない。大学受験の浪人と基本的に同じ感覚だ。ここも独特のカルチャーかもしれない一留した後に上位官庁や総合商社に進んだ者は非常に多い。社会人になってから出会った東大法学部卒もプラス2はザラで、プラス5から超大手企業に滑り込んだ猛者もいた。なお、公共政策大学院への進学はモラトリアムであり、毒にも薬にもならない。自主留年よりマシという立ち位置だ。

 興味深い傾向として、司法試験に失敗したり遊びすぎて留年したものは総じて就職が好調だった。一方で民間就活に失敗して留年した者は二回目も民間就活に失敗することが多かった。むしろ官庁に切り替えて起死回生したものもいる。人間にはどうしても素質として向き不向きがあるようだ。

東大法学部生のタイプ

 東大法学部の学生は色んな意味で偏っている。その人間性も極端だ。彼らは大きく分けて3タイプに別れる。

1.ガツガツ系・・・30%
 このタイプは競争心が強く、とにかくガツガツしている。見た目も独特の威圧感がある。外銀や外コンにいそうなタイプを思い浮かべれば良いだろう。大体周囲から優秀と言われることが多く、彼らもそう呼ばれたがっている。概ね学内では「陽キャ」あるいは「エリート」と認識される。性格タイプとしてはENTJ・ESTJ・INTJ辺りが多い。
 彼らの生きがいは良い成績を取り、あらゆる分野で自分の有能さをアピールことである。成績は概ね良く、官庁や外資系など東大卒の多い環境で評価されやすい。民間だとそこまでウケないが、スペックでどうにかする。とにかくパワーがあり、デキる奴オーラが漂っているので学内の女子にモテる。 
 あんまり優しいタイプには見えないし、ユーモラスなタイプでもない。ちょっと怖い。
 首都圏の有名進学校の出身が多い気がする。しばしば親も東大法学部の出身だ。二世は強い

 有名人だと豊田真由子が該当するだろう。今話題の木原誠二もそうかもしれない。

2.真面目系・・・30%
 
とにかく無難なタイプである。比較的大人しく、自己主張が控えめだ。コツコツ勉強するのが得意な真面目な人たちである。地方公立で優等生だった人が多い。このタイプはそこまで競争が趣味ではない。純粋な志で弁護士を目指したり官僚を目指したりする。もちろん無難に民間企業に進む者も多い。理想主義者は社会派弁護士になったりもする。性格タイプはISTJ・ISFJ・INFJあたりが多い。
 優秀な頭脳とバランスの取れた人格を持つ人達だ。ただ有名人はあまりいない。日本の伝統的大企業の社長になっているのはこのタイプではないかと思う。

3.オタク・変人系・・・30%
 
非常にキャラの濃いタイプである。彼らは非常に面白い。物知りだし、常識にとらわれない発想も持っている。クイズ番組に出ているようなタイプを思い浮かべれば良い。また、アスペ・メンヘラ・サイコパスの片鱗をのぞかせる者が多い。このタイプが全体の30%も存在する環境はなかなか特異だと思う。
 私の観測した中でも、世界中の地名を暗記するのが趣味だったり、あらゆる日本語で韻を踏む特技があったり、カードゲームの全国大会で優勝したりとカオスだ。ただし皆最低限の社会性は持っている。これが東大法学部の良さである。性格タイプはINTP・INFP・ENTPが多い。

 彼らの運命は様々だ。司法試験に挑戦したり、中堅官庁に進んだり、メガバンクに内定したり、学者になったりする。マニアックな就活を行うことも多い。ただし外資に進む者はかなり少ない。
 就職に苦戦するものも多く、落ちこぼれになる危険が高いタイプである。総じて文化人タイプであり、ビジネスの世界で競争することには向いてないのだろう。
 このタイプの有名人は大量にいる。林修はおそらくこのタイプだ。他にも作家になったりユーチューバーになったりするのもこのタイプであることに間違いないだろう。奇行で有名になった柴田孝之町長や小園拓志町長など地方自治体の長にも潜んでいたりする。以前話題になったマスク拒否男も多分この系統だ。

4.その他・・・10%
 
実際には上記のどれにも当てはまらない者がいる。見るからにDQNとしか言いようのないものや、ただただ無気力な者など様々だ。スーパーお嬢様もいる。ユーモラスな人気者だが、何をやっても異常に優秀な者もいる。香川照之を上回るような日本有数の名家の出身者もいた。東大法学部には極めて多様なタイプが在籍していた。

 東大特有かもしれないが、普通の小中学校で一軍に入って楽しくやれるタイプの人が、大学に馴染めず落ちこぼれる例も見てきた。彼らはほとんど学校に来ないで部活に明け暮れるか、バイトにハマるか、学外の彼女とダラダラしている。


 


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