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意味が分かると怖い話(超難問)

 今回は意味が分かると怖い話を投稿します。答えがわかった人はコメント欄へどうぞ。以前、短編ホラーのネタにしようとしたものの流用です。

呪いの藁人形

 あれは小学校の時だったと思う。同級生にオカルト好きな子なA子ちゃんって人がいて、よくこっくりさんとか、学校の七不思議とかを教えてくれた。当時は多感な時期だったし、本気でそう言った話を信じていたと思う。ちょうどオカルトの話がブームだった時期でもあったから。でも、あの話を聞いていなければ私の人生は大きく違っていたかもしれない。

 その日、A子ちゃんから聞いた話は「呪いの藁人形」だった。A子ちゃんによると、消したい人物の髪の毛を藁人形に入れると、文字通り地上から消すことができるらしい。死んだり殺すのではなく、最初からいなかったことになるので、なにも手掛かりは残らないんだとか。小さいころにマンガで読んだドラえもんの「独裁スイッチ」とか、「灼眼のシャナ」みたいだな、と思った。相手の髪の毛をどうにかして手に入れ、誰もいない近所の神社の木の幹に五寸釘を打ち、そのまま夜中の二時が来るのを待つ。そうすると、その人物は跡形もなくこの世から消えてしまうという恐ろしい呪いだ。そんな簡単に人をこの世から消してしまえるなんて。最初聞いた時は私はとにかく怖い呪いだと思って口裂け女と同じくらいの恐怖を感じた記憶がある。

 それから中学受験などもあり、私はトップの進学校に進学することができた。そこでひどいいじめにあうことになった。私は上位カーストの女子に目をつけられ、時折ひどい悪口を言われることがあった。相手にしちゃいけないといってもやっぱり傷つくものだ。特に中心となっていた生徒をB子とする。B子は椅子に画びょうをおいたり、教科書をトイレに捨てたり、本当にひどかった。私はショックで学校に行けなくなる時もあった。そこで、私は久しぶりに藁人形の話を思い出した。B子なんていなくなればいいという一心だった。私はB子の体操着についていた髪の毛を拝借し、夜になって神社で五寸釘を打った。次の日、学校に投稿すると、B子は消えていた。B子の座っていた椅子には見知らぬ生徒が座っていた。B子は死んだわけではなく、最初からこの世に存在しなかったことになるのだ。

 B子がいなくなってストレスから解放されたのか、私の学力は伸び続け、ついには学年一位になった。担任の先生からは「東大なら確実、あなたならその上も狙えるに違いない」と太鼓判を押された。受験目前になっても私の学力はどんどん伸びていた。もともと農学部に入ってウナギの研究をすることにあこがれていたのだが、もしかしたら理三も狙えるかもしれない、と思い始めた。直前まで迷ったが、落ちたら後期で理二に行けばいいと思い、理三に出願した。受験本番は数学で失敗したが、スレスレで受かることができた。

 大学に入学し、私は晴れ晴れとした気分になった。部活やサークルでいろいろな友達ができたし、彼氏だってできた。医学部の同級生で、アメフト部のイケメンだ。浪人しているので歳は少し上だが、大人びた貫禄を感じさせた。ただ、当時の私にはライバルの女がいた。女子大からアメフト部のマネージャーになったあざとい雰囲気の子だ。彼を私から奪おうとアプローチを熱心にかけており、私は焦った。なんど藁人形を使ってやろうと思っただろうか。しかし、その勇気はなかった。私は藁人形に頼らず、正々堂々と勝負することにした。ライバルの女は結局別の男ができて彼からは離れていった。結局卒業後に私たちは結婚することになった。

 新婚の時はウキウキ気分だった。医者同士のパワーカップルだ。なんだか人生の勝ち組になれたような気分だった。しかし、そうした受かれ気分は長くは続かない。お互いがキャリアを追及する中で、すれ違うことも多くなった。私がキャリアで苦労しているのに、夫はいつまでも遊び歩いており、私のことはどうでもよくなったようだ。昔はハイスぺの好青年だと思っていたが、結婚すると裏の顔が見えてくる。夫は自分さえよければどうでもいい。自分が上に行ければそれでいい。邪魔な人間は排除すればいい。そういう人間だった。私が具合が悪い中で当直を終え、ふらふらで家に帰ってきたときも、夫は「こっちは疲れてるんだから、少しは愛想の一つも見せろよ」の一言だけだった。私の心は限界に達しようとしていた。

 そんななか、ついに一線を越えてしまう出来事が起きる。夫は看護師と不倫していたのだ。噂は私の所にも流れてきたし、興信所を使って調べもした。どうも夫は不倫相手に離婚をほのめかしており、私のことは完全に邪魔者扱いみたいだ。「頭のいい女はやっぱり可愛げがないし、嫁にしちゃダメ」と豪語していたらしい。

 日付が変わり、夫が帰ってくる。「残業が多くて」と言い訳をこぼしていたが、この日は夫は五時に退勤しているはずだった。私はもう限界だった。反射的にそばにある刺身包丁で夫の腹を思いっきり刺した。気が付くと夫は冷たくなっていた。取り返しのつかないことをしたという実感はその数分後から私を襲って来た。人を殺してしまった。私は真っ青になった。

 ここで私にアイデアがひらめく。ここは藁人形の使いどころではないだろうか。夫の死体から髪の毛を引き抜き、藁人形に入れ、五寸釘を打てば夫という人間はこの世に最初からいなかったことになる。そうすれば私の殺人の証拠は消えるはずだ。土壇場のひらめきに感謝した。まだ二時まで少し時間がある。私は急いで夫の髪の毛を引き抜くと、近所の神社の木の幹に打ち付けた。時計の針が深夜二時を過ぎると、私は胸をほっとなでおろした。

 家に帰ってくると、なんと夫がリビングにいた。そんな馬鹿な。夫の髪の毛は藁人形にいれて確実に木の幹に打ち付けたはずだ。仮に何らかの事情で藁人形の効果がなかったとしても、死んだはずの人間が生き返るわけはない。夫も私の方をみて驚いた表情をしている。この世のものとは思えないような態度で、完全に腰を抜かしている。私はその時、再びアイデアがひらめいた。この状況がどうして発生したのか急に理解できたのだ。もし仮説が正しければ大変なことになる。夫がこの状況の意味に気が付く前に行動を起こさないといけない。私は五寸釘を打つのに使ったばかりのハンマーを握りしめると、腰を抜かしている夫を何度も殴り、死亡したのを確認した。次の日が夜がくると、夫の死体から髪の毛を抜き、今度こそ夫の存在を確実に葬るために近所の神社の木の幹に再び藁人形を打ち付けた。

 翌日の深夜二時を過ぎると夫の死体は消えていた。危ないところだった。もし私が先手を打たなければ、夫はこの状況の意味に気づき、私の方がやられていたかもしれない。こんな偶然があるとは私も驚きだった。夫もきっと藁人形の秘術を知っていたのだ。自分しか知りえないと思っていた情報は意外に他人も知っているものなのかもしれない、と私は思った。何はともあれ、私に夫はいなくなった。今日からは独身の女医だ。婚期は遅れてしまったが、これから素敵な男性を探してもいいし、キャリアを優先して結婚をあきらめるのもいいかもしれない。それくらい、私はクソ夫の対応に疲れていた。

 私は病院に出勤し、ロッカーで白衣に着替えようとした。すると、私のロッカーが跡形もなく消えている。あれ、と思って同僚に聞いてみると、「あなた誰ですか」という問いが返ってきた。すると私のスマホから着信音がなる。取ってみると、聞き覚えのない男性の声が聞こえた。「今日、会社に出勤していないみたいだけど、無断欠勤ということでいいかな。それとも体調不良か?」

 私はどうも女医ではなくなっているらしい。私は真実がはるかに恐ろしいものだったことを思い知った。私が元のキャリアを取り戻すには、夫と同じくらい冷酷で身勝手な人物にならねばならない。すでに二人の人間をこの世から抹消している私でも、その覚悟は付けられそうになかった。

Q1 最初、夫が死ななかった理由は何か。
Q2 主人公が女医でなくなっていた理由は何か。

  なお、藁人形にここで言及されている以上の効果はありません。

 


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