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一生安泰(意味が分かると怖い話)

 俺は大学4年生。いや、本当は5年生。サークル活動とナンパに明け暮れ、大学5年間を遊び倒してしまった。優秀な同級生が留学したり難関資格を取ったりしている横で、俺はただ楽しんでいただけだ。それでも、充実した青春だったと思う。授業を切って彼女と一日中イチャイチャしていたこともあったっけ。

 そんな俺だが、今とっても困っている。大学時代に何もしていないので、まだ内定が一個もないのだ。遊ばずに努力をしていた同級生は軒並み大手の会社に受かっている。ずいぶん差をつけられてしまった。慌てて就活をしても、遅かった。もう三月も下旬で、あと少しで卒業だ。この先どうしたものか。俺は頭を抱えていた。

 すると、部屋の隅に見知らぬ男が立っているではないか。一目でこの世のものではないと理解した。男は10代にも見えるし、60代にも見える、独特の風貌だった。

 男は話しかけてきた。びっくりするような野太い声だった。「何かお困りのようですね。私は悪魔です。解決できることならなんでも力になりましょう」
俺は即座に答えた。「そうなんですよ。本当に困ってます」
「なにか希望でもありますか。」
「そうだな・・・ゲスな上司のもとで働かせられるのはダルすぎる。楽して大金を稼いで一生楽しく暮らしたい」
「そうですね・・・お助けしましょう」

 俺は胸が高まった。この悪魔が何者かはわからないが、超自然的な方法で問題を解決してくれそうな気がしたからだ。
「一生遊んで楽しく暮らしたい、それがあなたの願いということでいいですか」
「はい!このまま楽しく一生を終えたいです」
「その願い、必ず叶えましょう。悪魔は冥界の決まりで嘘をつけないのです。その代わり、条件があります」
「なんすか?」
「死後にあなたの魂をいただけませんか?」

 俺は魂が何なのかはわからなかったが、死後の世界などよくわからないし、それよりも現世を楽しく暮らすことの方が大切だと思った。死後に魂を渡す程度なら安いものだ。
「それでいいので、早く楽しく暮らせるようにしてくださいよ」
俺は促した。

 悪魔は答えた。「わかりました。では契約書にサインしてください」
俺は契約書に喜んでサインをした。
「これで一生遊んで暮らせるんですか」
「はい。これであなたは一生遊んで人生を終えることになります。病気をすることも、仕事でクタクタになることもありません」
「やった!一生安泰だ!」
俺は人生が開けたことに心からのうれしさを覚えた。

 悪魔は言った。「私もホッとしました。今月の魂の回収ノルマをやっと達成できそうです」














答え
 悪魔は今月の回収ノルマのために月末までに「俺」の魂を回収するつもりでいる。「俺」は大学を卒業する前に死亡すれば、一生遊んで暮らしたことになるし、病気になったり、仕事でクタクタになることもない。今すぐ死ねば、死ぬまで楽しく暮らしたことになる。

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