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相続人同士の「共有名義」を避けたほうが良い理由 〜共有名義の注意点〜

 来年4月からの相続登記(所有権移転登記)の義務化に向けて、現在もなお相続登記がなされずに故人(父母や祖父母など)のままになっているという方からのご相談が多く寄せられるようになりました。
こちらについては、今年2月27日に「相続登記の重要性」について書かせていただきましたので、よろしければお読みください。

(2023年2月27日「相続登記の重要性」こちらをご参照ください)

 また、相続登記の義務化に関する詳細は、法務省の以下サイトやパンフレットも出ておりますので、ご参照ください。
【法務省】https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00435.html
【パンフレット】001397793.pdf (moj.go.jp)
 
 さて今回は、相続登記の中でもトラブルに繋がりやすい「共有名義の相続登記」についてお伝えさせていただきます。
 
 相続財産の多くが不動産(土地や建物)のために、相続人同士が平等に財産を分けることができないというケースは良くあることだと思います。
国税庁の統計でも、相続財産の約半分を不動産(土地や建物)が占めているというデータも出ています。
 
「共有名義」とは、一つの不動産(土地や建物)に対して、複数の相続人を所有者として登記を行うことをいいます。 主に複数の相続人で相続するケースや、複数人で出資して不動産を購入するときに共有名義となることがあります。
例えば、相続人(子)が3人いて全員が法定相続分を主張した場合、相続人同士の公正を図るためには、3人で「共有名義」にするという方法が考えられます。
 
 相続人の1人が不動産を相続して、他の相続人たちに対し1/3相当の金銭をそれぞれ支払う(代償分割)という方法もありますが、不動産の価額が極めて高い場合には高額の代償金を支払わなければならず、「共有名義」にせざるを得ないこともあり得ます。
 しかし、中には「とりあえず共有名義」にして、必要に応じて解消すれば良いと共有にしたものの、後々、揉め事に発展するということも少なくありませんので、共有名義のデメリットも良く理解したうえで行っていただければと思います。

以下に、主なデメリットを列記します。
(1)共有不動産を売却する際は、共有者全員の同意が必要
       仮に、持ち分が1/10の共有者だとしても同意が必要
 
(2)賃貸やリフォーム(軽微なものは除く)をする際にも、制限がかかる
    共有持ち分の過半数の合意が必要
 
(3)共有者の持ち分は相続の対象になる。
   初めは兄弟での共有であっても、相続によって子供、孫、
        それらの配偶者など、共有者が増えていくこともある。
 
ここで、以前、ご相談いただいた事例を紹介します。
お父様が亡くなり、遺された財産は
・お母様と一緒に住んでいた家
・1,000万円ほどの預貯金
でした。
相続人のお母様・長男・次男の3人で話し合った結果、預貯金は全てお母様、自宅土地建物は、3人で1/3ずつ均等の割合で共有登記することになりました。
 
それから数年たった頃、長男から電話があり、お母様が認知症になってしまったとのことでした。長男からは、「母を介護施設に入れたい。母の住んでいる家を売って、その費用にあてたい。そう思って不動産業者に相談してみたが、意思能力の無い母の名義が持ち分に入っているため、売却ができないと言われた」そうです。

 認知症の程度によりますが、お母様の意思確認ができない以上、成年後見人を選任するしかありませんが、成年後見人を選任するには手間も時間もかかります。
いざ選任されたとしても、成年後見人の判断で売却が認められないことも多く、仮に居住用不動産の処分に同意してくれたとしても、事前に家庭裁判所に許可を得る必要があるなど、ハードルはとても高いものと言えます。
 
 以上は、共有者が認知症になった事例ですが、共有者の所在が不明な場合でも同意を得なければ売却することは出来ません。
また、全員が売却に同意したとしても、売却金額や引き渡し時期などで揉めたケースもよく見てきております。
 
 出来れば、相続人同士の「共有名義」は避けたほうが良いと、私は思います。
 
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