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「統制と秩序」のBluesky、「自由と混沌」のX――SNSに求めるものはなにか

 人気SNSの一つであるTwitterが実業家のイーロン・マスク氏に買収され、「X」に名称を変更してから約半年が過ぎました。先日、Xの代替SNSの一つであるBlueskyが、招待制を撤廃したことで、多くのXユーザーがアカウントを作成して話題になりました。

 Blueskyは旧Twitterの創業者の一人であるジャック・ドーシー氏が開発に関わったSNSアプリです。Xと似通った画面表示と機能を持ち、サービス開始当初のTwitterの雰囲気を感じられるというユーザーもいます。

 マスク氏がTwitter社を買収し「X」に名称変更してから、従来使うことができたサービスが使えなくなったり、タイムラインに表示される投稿の傾向が変わるなど、ユーザーからの不満も少なくありませんでした。

 中でも大きな変化は有料化・収益化の導入です。Twitterのころから有料サービスはありましたが、Xになってから、有料ユーザーがインプレッション数(自分の投稿がどれだけ他のユーザーに表示されたか)に応じて収益を得られるようになりました。

 この「インプレッション数」というのが厄介で、どんな内容でも表示数さえ稼げればいいので、話題のキーワードに対して敢えて不穏当な投稿をすることで批判を誘い、わざと「炎上」するアカウントも出てきました。

 また、話題になっている投稿のリプライに、とにかく無関係な投稿を送り付けてインプレッションを稼ぐ「インプレゾンビ」が大流行していることも昨今問題になっています。当然彼らは有料アカウントなので、リプライ欄の上位に表示されるのですから、迷惑この上ありません。

 Xへの不満が高まる中で現れたBlueskyは、ユーザーたちはゾンビ蠢く町から見ればオアシスに見えたことでしょう。Blueskyは収益化もありませんからインプレゾンビは湧きませんし、不穏当な投稿をするアカウントをまとめて非表示にする機能があり、タイムラインを平和に保つことも可能です。

 また、非常に厳しい表現規制があり、少し過激な絵を不用意に投稿すればたちまちアカウント停止になってしまいます。Xはそのあたりの規制もかなり緩いので、見たくもない過激な表現が表示されてしまうこともよくありました。

 ここまで聞くと「Bluesky最高じゃん!X終わったな」と思うかもしれません。しかし、私はBlueskyはすでに最大の武器を手放してしまっているように思います。それは「表現の自由」です。

 Xを見ていると、「前のTwitterに戻ってほしい」などという人が多くいますが、私に言わせれば買収される前のTwitterもそれはそれで酷いものでした。これはグーグルもフェイスブックも同じですが、Twitter社は完全に左翼の活動家に浸食されていました。

 2020年のアメリカ大統領選ではトランプ大統領のアカウントを凍結し、それを批判するアカウントも次々と凍結しました。話題のキーワードを表示する「トレンド」も、朝日新聞やハフィントンポストなど、左派系の記事や「○○の辞任を求めます」などの反政府的な投稿ばかりが上位に表示され、保守系の投稿は非表示にされました。

 イーロンマスク氏がTwitter社を買収したのは、こうした状況が「健全ではない」と感じたから、というのも理由の一つです。彼は特に保守派というわけではなく、SNSをあるべき自由な環境に戻そうと思ったのです。

 Xには現状として問題も多くありますが、少なくとも自由な投稿はできます。対してBlueskyは先述の通り、非常に厳しい表現規制をかけています。確かに秩序はありますが、どんな投稿が「不適切」なのかおびえながら投稿することになります。

 また、Blueskyは始まったばかりですから、今は広告も有料化もありませんが、いずれ何らかの形で利益を得ねばなりません。その時にどういった制度になるかは未知数です。

 私個人の感想としては、開始当初から管理社会の様相を呈しているBlueskyよりも、ごちゃごちゃしてて治安も悪いが、比較的自由に活動できるXのほうが、楽しいと感じます。

 ただ、インプレゾンビだけは早く掃討してください、イーロン。


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