W町のA子さんの話

 私が住んでいる街ではハロウィンになると町内会でハロウィンをする習わしがある。協力してくれる商店街のお店にあらかじめ飴を配っておき、仮装した子供がきたら渡してあげるのだ。今年は私もスタッフとして参加する。今年はペロペロキャンディとチョコ、ジンジャーブレッドマンを配る予定。
 先に募集をかけた結果、参加者の数は子供20人 、大人は15人とわかっている。大人は子供の付き添いなのでお菓子は配られない。お菓子はそれぞれ21個ずつ用意される。だがペロペロキャンディ、チョコ、ジンジャーブレッドも21個ずつ用意されている。
 菓子を袋につめながらわたしは先輩スタッフにそのことを聞いてみた。
「まあ、しきたりというか…。予備というか。あなたもやってみればわかるよ」
 先輩スタッフはふふふとごまかすように笑った。
 それから商店街の所々にジャック・オー・ランタンを設置して、オレンジの旗を掲げてハロウィンぽくした。

 当日はわたしも黒いワンピースを着て箒とバケツを持って商店街に立っていた。仮装した子供が大人に連れられて商店街を歩いた。ピーター・パンにティンカーベル、骸骨、魔女。本格的なものからアニメのものまでいろいろな仮装に身を包んでいたが子どもたちはみな一様にに小さな体を揺らしながら片手で親の手をつかんでいる。
 緊張している子、怖がっている子、はしゃいでいる子、皆一様に頬を高揚させて可愛らしい。子どもがトリック・オア・トリートと言ったら怖がるふりをしてからお菓子を上げる。

 その日、用意しておいた21✕4個のお菓子は全部なくなった。1つあまらないとおかしいのだ。ちゃんとチェックして配ったので間違いないないはず。
 首を傾げる私に、先輩スタッフはそういうこともあるよと言って意味深に笑った。
  


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