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プログレッシブ歩き遍路・2002年 ⑤ 徳島

5月8日


柳水庵の納屋で目を覚ますと寝袋の上で何かがカサカサと動いている。
友人Sも起きたようなので聞くとそっちでもカサカサと何かが動いているらしい。

謎の虫が怖すぎて寝袋を頭まで被り出ることができない。

一瞬カサカサが止んだ時に思い切って寝袋から出る。
見回しても虫はいない。
音からしてカブトムシくらいはありそうだったが動きが速かったので本当に不気味だった。

豆を潰してぐちゃぐちゃの足に丁寧に靴下を履かせて、朝のエコーと缶コーヒーで重い体を起こしていく。

フィリオ夫妻はもう起きているようでテントを片付けたりしていた。
エコーも三本吸い終わる頃、フィリオ夫妻がまた炊き立ての米と味噌汁を差し入れてくれた。
ニッキ飴しかなかったので感動の朝ごはんをいただき、お礼を言い出発した。

残りの山道も凄まじくきつかった。
友人Sは軽快にウサギのように歩き、ちょっと先のベンチで俺を待ってたりする。
その余裕に少しイラつく。
一本杉庵というところでエコー休憩。

そうこうしながらひたすら歩くと、線香の匂いが立ち込めてくる。
ようやく焼山寺に着いた。

参拝し、食堂で素うどんを食べた。
エコーで一服し出発する。


                     *


下りの方が足が痛かったが、気持ちとしては下りの方が楽なので軽快に歩く。

ちょっと傾斜のきつい畑の中をひょいひょいと小走りで下ると、足元が濡れている所があった。
それで足を滑らせ思い切り胸から転けて二回転ほど転がった。
めっちゃ痛かった。
友人Sは息ができないほど爆笑している。
俺も爆笑した。

途中バスがいっぱい止まっている遍路の駅という所があった。
売店に立ち寄りポン菓子と干し梅と干し芋を買う。

店のおばちゃんがお接待と言いおにぎりとタケノコの煮物をくれる。
タケノコがめっちゃ美味しそうで嬉しい。
バス遍路のおばちゃんも缶コーヒーをくれた。

見た目どうりタケノコは絶品で、いただいた缶コーヒーとエコーで休憩した後出発する。

ここからはアスファルトの道なのでかなり楽だ。

フィリオ夫妻とは抜いたり抜かれたりして、今はフィリオ夫妻が先を歩いている。
歩くスピードは俺らの方が速いので次抜いたら多分もう会わないだろうと思う。

フィリオ夫妻を抜く時、八朔をくれた。
こちらも干し梅を渡す。
さようならと言って俺らは先に進む。

しばらく歩くと車で遍路しているマダム軍団に囲まれ、飴とガムを頂いた。
カバンの中には飴が増えていく。

ようやく山道が穏やかになり、家や店が増え始めた頃に50歳の銀行員だというお遍路さんに出会う。
お昼に買ったけど食べきれないからとおはぎを分けてくれた。
とても酸味があり今日買ったとは思えない不思議な味わいだったが全部食べた。
銀行員さんはとても疲れている様子だったが、おはぎのせいではないことを祈り別れた。

すっぱい


日も暮れてきたので寝床を探すが、あまり良い場所はなさそうなので川に架かる橋の下で寝ることにする。
野犬がいるが大丈夫だろうと思う。

近くの小さなお店で缶コーヒーを買うと、お茶と飴をお接待してくれた。
そしてうどん屋に入り素うどんを食べた。

川に戻って飴と缶コーヒーとエコーで寝る前のまったりした時間を過ごす。

友人Sは恋人のチコちゃんに電話したりしている。

自分の弟の中学卒業アルバムからこの子が可愛いとあたりをつけ、弟から連絡先を聞き出し、突然連絡し、付き合う。
という俺には絶対できない行動力で友人Sはチコちゃんと付き合っていた。

俺は彼女もいないし暇なので、高校の同級生Kさんに、片思いだけど好きで仕方ないというふりをして電話してみた。
そもそもあんまり話したことないしどうして電話してきたのかわからずKさんはちょっと戸惑ってるし、俺が片思いしているっていうのも今適当に自分で作った嘘やしなんで俺はこんなわけのわからない電話をしてるんや!
となり早々と気まずい電話を切り、むなしく先に寝た。




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