天運の極意

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天運の極意

☺️ プロになりたいアマチュア小説家です。  ※無断転載、盗作は禁止しております。 t591.novel@gmail.com

マガジン

  • 恋の因縁

    今昔物語をもじったお話になります。

  • 【昔話】雪の夜に見たもの

    ・ホラー要素のある簡単な昔話 ・一話あたり200字前後

最近の記事

【小説】おかえり、カリスマ【三】

 夕食を終えた私は、一段飛ばしで階段を上がり、自分の部屋までやって来て、部屋の明かりをつけずに、遠ーくにある街灯を窓を開けて眺めた。 「はぁ、」 ため息を吐きながら私が思いを巡らせていたのはやはり、過去だった。というのも、こんな私にも、私の人生にも、ダイヤモンドのようにキラめく輝かしい時期は、ちょこちょこ存在したからだ。でも、いつからだろうか?自分がこれほどまでに過去を振り返ってばかりになったのは。今となっては何か考えよう、頭を使おうと思って最初に描かれるのはいつだって過去の

    • 【小説】おかえり、カリスマ【ニ】

       今日も駅まで歩き、電車に乗り、大学の最寄りで下車し、そのまま大学まで直行。かと思いきや、学校とは真反対の方向へ歩いて行く。大学から離れるようにして、人けのあまりない道をずーっと行き、そして一本だけ道を逸れると川と出会うので、その川に沿って木や芝生が植えられている道を私もそれらと同じようにその川に沿って向こうの方まで歩いて行く。そしてそのまま十分間くらい歩いて行くと、左手にこじんまりとした中学校が現れる。その周りには、まだ建ってから間もないと見える家々がポツポツと並んであって

      • 【小説】おかえり、カリスマ【一】

         Bというカリスマがいました。私が中学生の頃です。Bは、学校でタバコをプカプカと吹かすような明明白白な不良も、強度近視のガリ勉も(私もそうでしたが)分け隔てなく、まさに平等に関わっていました。私たちの保護者らはそんなBのことを、あの子あんな子達と一緒にいるけど大丈夫?とか言って、知りもしないし、分かりもしないのをいい気に一丁前に心配していました。しかし私は、Bに対してそんなふうに思うことはありませんでした。なぜなら知っていたから。Bの邪を祓い、世界を燦々と照らしつける太陽のよ

        • 恋の因縁 最終話【911字】

           こうして女は館へ差し出された、御伽の相手として。新しくやってきたその役人は、まず女を強く抱き寄せ、次に口付けすると、そのまま一緒に横になり交じり合った。しかしこの時、男はなんとなく違和感を感じたのでコトを終えた後に、こう質問した。 「お前はどういう者なのだ?」 「わたくしはもとは、この国ではなく京におりましたのです」 これを聞いて男は、京の女がなぜ地方へ降りてきて下女なんかやっているんだ、と不思議に思った。  それからというものの、男は毎晩この女を館に呼び続けた。続ければ続

        【小説】おかえり、カリスマ【三】

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        • 恋の因縁
          4本
        • 【昔話】雪の夜に見たもの
          14本

        記事

          恋の因縁 三話【599字】

           しかし帰ってみると男はすでに妻をもっていた。その妻の家に行ってみると妻にこっぴどく憎まれて散々に言われた。しかし男は、その妻の家に面倒を見てもらっていたので自分が連れてきた女一人守ることができなかった。そればかりか男は、女をほったらかしにし、寄り付かなくなってしまった。そういうことにより、女は結局、男の家の下女として扱われるようになった。そして、そのまま月日が経ったある日、国を統治する新しい役人が京から送られてくると決まった。そのために国をあげて、この上ない歓迎をすることと

          恋の因縁 三話【599字】

          恋の因縁 二話【591字】

           男はおどろいた。 「その娘に会わせてください。もし本当に娘が美しければ、国へ連れて帰って妻にします」 老婆はこれを嬉しく思い、それを娘に伝えた。 「このままじゃあ、一人で寂しいだろう。どうだ?地方で行政官をされておる方の息子と一緒になるのは」 これに女は、驚きと恥じらいを覚えた。なぜなら、いくら落ちぶれたとはいえ、もとは高貴な人の娘である自分がそんな片田舎の行政官の息子に世話されるなんてことはどうしても考えられなかったからだ。 「どうして私にそんなことができましょうか、でき

          恋の因縁 二話【591字】

          恋の因縁 一話【886字】

           その昔、京の都に、それはそれはとても高貴な女がいた。この女には父親が薦めて結婚させた身分の賤しい夫がいた。女の家はこの婿の面倒をよく見た。がしかし、それから数年ばかり経ったころ父が急に亡くなった。そして、その悲しみに暮れる間もなく、母も亡くなった。すると、たちまちこの家は貧しくなっていき、次第に使用人たちが姿を消していった。なので女は、 「この家にいては貧しい思いをするばかりですからどうぞ暇(いとま)を取ってくださいな」 と言った。これによって使用人はすべて消えてしまい、か

          恋の因縁 一話【886字】

          【昔話】雪の夜に見たもの 最終話【314字】

           走っていると、体のどこかからドクドクというのが聞こえ、早くも手足の感覚がなくなってきた。すると少し先の方にあたたかい光を発する屋台が見えた。あんなとこに屋台?いや、そんなことはいい、男が一人いるのが見える。向こうを向いている。助けてもらおうと近づく。 「すぐそこの小屋で危うく殺されかけました。助けてください」 もうこの時分には寒いやら怖いやらで半分泣いていた。そして屋台の光に照らされる男の顔が善五郎に振り返ったとき、善五郎は失神した。というのも、その男の顔には目もなければ鼻

          【昔話】雪の夜に見たもの 最終話【314字】

          【昔話】雪の夜に見たもの 十三話【201字】

           善五郎はそのまま馬乗りにされかけたが胸のあたりを思い切り蹴飛ばした。それは向こう側に倒れた。善五郎はそのあいだに部屋を出ようとしたが部屋に残った片足を掴まれた。むこうは横たわったままこっちに顔を上げてニタァ〜としている。 「ウワッー!」 悲鳴が再生された。善五郎はもう一方の足で掴まれている手を力いっぱい踏んだり蹴ったりした。力がゆるんだのを感じとって善五郎は部屋を出た。そしてそのまま小屋も飛び出した。

          【昔話】雪の夜に見たもの 十三話【201字】

          【昔話】雪の夜に見たもの 十二話【230字】

           顔を入れた瞬間、左隣になにかある、いや、いる…。左に首を回すと、そこには黒々とした長髪を宙に大きく大きく舞い上がらせ、口角がそのまま耳に届きそうなくらいの満面の笑みを浮かべた女(?)の顔が真正面からこちらを捉えていた。 「ウッ、ウワァー!」 ほとんど反射的に声を上げて善五郎は完全に腰を抜かしてしまった。 「だまって眠っておればいいものをっ!」 そう言うや否やそれは善五郎に襲いかかり部屋の中に引きづり込んだ。この間もひたすらに悲鳴を上げ続ける善五郎はこれと取っ組み合いになった

          【昔話】雪の夜に見たもの 十二話【230字】

          【昔話】雪の夜に見たもの 十一話【214字】

           善五郎は逃げようと思った。がしかし素っ裸のままではとてもじゃないが外へは行けない。凍え死んでしまう。気が動転しながらもどうしようかと考えていると、玄関に立て掛けていた銃が目に入った。これだ!そこまで四つん這いになってそろりそろりと移動して一丁の猟銃を手にしてまたそろりともとの場所へと戻った。そして再び覗いた。あら?おらん。そこには首から上のなくなった安兵衛の遺体だけがある。善五郎は戸をゆっくり開けて部屋に顔だけ覗き入れた。

          【昔話】雪の夜に見たもの 十一話【214字】

          【昔話】雪の夜に見たもの 十話【214字】

           女は自分の着物を脱ぎ落とし女自身も裸になった。こちらに背を向けている女の裸体はそのまま安兵衛の顔にまたがって腰を下ろした。善五郎は、なんて破廉恥な!と思ったが違った。喰っている…女は安兵衛を喰っている……本来性器であるはずの部位で…。女は遊女のようなあだっぽい声を上げながらも安兵衛の頭をグシャグシャと音を立てて血まみれにしながら喰っている。驚きと恐怖とで善五郎はヒッ!と声を上げてしまった。が、女は気づいていない様子だった。

          【昔話】雪の夜に見たもの 十話【214字】

          【昔話】雪の夜に見たもの 九話【240字】

           善五郎は違和感と寒さに目を覚ました。気づくと素っ裸である。部屋も暗いし囲炉裏の火も消されている。おまけに安兵衛も消えてる。あまりの寒さに歯をガチガチさせながら善五郎はキョロキョロした。すると女がかつて指差した私たちが休むはずの部屋の引き戸から橙の光が漏れている。四つん這いになって近づき、そっと光の漏れに片目を近づけた。狭い部屋であるその中に自分と同じように素っ裸の安兵衛が仰向けに寝転んでいる。そこに女もいる。と次の瞬間、善五郎は自分の目を疑いながらも身震いする破目になった。

          【昔話】雪の夜に見たもの 九話【240字】

          【昔話】雪の夜に見たもの 八話【263字】

           「今夜は私どもを泊めていただきありがとうございました。その詫びにあなたに何か差し上げたいのですが何がいいでしょうか」 善五郎がそう言うと女は慣れたように 「いえ結構です。欲しいものなら既にありますから」 と言う。 「いえいえそんなこと言わずに。おおげさに言ってしまえばあなたは私どもの命の恩人です。何かさせてください」 まるで必死に安兵衛が言う。するとようやく、 「それじゃあ……」 と女が口を開きかけた、そのとき!善五郎も安兵衛も急に眠たくなり、我慢など選択肢にも上がって来な

          【昔話】雪の夜に見たもの 八話【263字】

          【昔話】雪の夜に見たもの 七話【209字】

           「私たちは幸せ者ですね〜善五郎さん」 ヘラヘラと言う。 「ああそうだな〜、何か感謝のあかしとしてできることはないかな〜」 「何をしましょう?何をあげましょう?」 「そうだなぁ…」 考えるも思い浮かばないので、 「何がいいかは直接あの人に聞いてみよう」 「それは名案ですね」 と安兵衛。それからしばらくして女が現れた。お茶を手にしていた。それを二人に渡すと女は囲炉裏を挟んで二人の正面に正座した。二人は熱い茶を啜りながらこう切り出す。

          【昔話】雪の夜に見たもの 七話【209字】

          【昔話】雪の夜に見たもの 六話【163字】

           椀が小さいがために何度もお代わりしなくてはいけなかったがそれがまたうまかった。善五郎と安兵衛は二人ですっかり鍋を平らげてしまった。気づいた時にはもう遅い。 「あっ、申し訳ないことをしました…あなたの分も…」 「いえ結構です。腹は減っておりませんので」 それだけ言い残して音も立てずに立ち上がった。鍋を片手に奥の部屋へと消えてゆく。

          【昔話】雪の夜に見たもの 六話【163字】