鏡に、私がうつっている。 横では、男が壁に寄りかかってクスクス笑っている。 なん? 気分悪いって。 「お前さー、三角巾をほっかむりしてどーすんだよ」 初対面でお前扱いかよ。まあ、店長だからしかたないか。 「だって、こんなのしたことないし」 「今ドキの高校生は、そーなんかなー。ほら、貸してみな」 あごの下でしっかりくくっていた、レースのふち飾りのある白い布を渡した。 男は、私の後ろにまわって、鏡の中からこっちを見る。ふつーにイケメン。 「そのボサ髪
子猫のポンは、とけた銀のように見えた。 真夏の正午。 黒いほどの濁りのない青空も、暴力的な太陽にかすんでいる。 砂が舞う。地表がえずき、吐き出しはじめる。 ガラスのようなツルリとした物体を、次から次へと。 物体は、空気に触れた途端にふくらんでいき、中に色を浮かべ始める。 そうして、風船のように丸くなって、プウカプウカと天へ向かうのだ。 この1年の間に死んで、地中へ沈んでしまっていた魂がすべて昇天する日、が今日。 あの黄色の風船は、チョウチョだったんかな。 そ