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【アニメレビュー】夜のクラゲは泳げない 第一話感想:作画◎の青春群像劇アニメだが、納得感がない

初めましての方は初めまして。そうでない方はいつもお世話になっております。

朝霧くもりです。


さて、2024年春アニメもついに始まりましたね。

今回は春放送のオリジナル作品の中でも注目を集めている「夜のクラゲは泳げない」をレビューします!


よくある青春群像だと思って見てみましたが……結果はどうだったでしょうか?

それでは行ってみましょー!


※辛口評価しますので、批判を受け入れられる方のみお読みください。


第一話あらすじ(ネタバレはないです)

光月まひるは、いわゆる「その他大勢」のJKであった。
イラストレーター「海月ヨル」として活動していた過去と比べて、まひるは存在意義を失っていた。

人生の意味を求めて夜を彷徨っていたある日、自分の絵が好きだという女子高校生「山ノ内花音」に出会う。

歌手という目標に向かって突っ走る花音は、まひるを絵描きとして仲間にスカウトする。
過去に批判されて自信を失ったまひるは、そんな自信満々な花音の誘いを断ってしまう。

ハロウィンの夜、渋谷を訪れたまひるは再び花音と出会って……。

これは、自信の無い元イラストレーターまひると、匿名シンガーとして成り上がりを目指す花音の青春ストーリーである。


良かった点

作画が綺麗

制作動画工房だけあって、女の子を描く能力が高いですね。

キャラの動きや町の雰囲気など、細かな描写でも若い人特有のエネルギッシュな感じが出ていて良かったです。

ふつくしい (引用:©JELEE/「夜のクラゲは泳げない」製作委員会) 

特段動きのある描写はないですが、どのカットも綺麗に見えるように工夫されていたと思います。


作品のコンセプトが良い

作品でも言及されていた、「何者かになりたい」という気持ちに焦点を当てていたのは良かったですね。

若いときには、人と違う所を頑張って見つけようとしたり、自分の中に凡人でない部分を見出そうとしたくなるものです。
(めっちゃおじさんっぽいこと言ってしまった……)

現実には95%以上は凡人なんですよね。
なんなら、残り5%の人もさらに上がいることがほとんどで、何かで特別な存在になれることは極めて稀です。

しかしながら、若いときにはそういった大局的な視点は分からないものです。
また、問題に直面した時、自分の価値観で判断してしまいがちになります。


第一話でこういった題材を取り上げたのは高評価でした。

主人公の葛藤も、後述する問題点が無ければとても良かったと思います。


良くなかった点

男向けに媚びる描写が多い

流石にどうかと思いますね。

サービスシーンはあってもいい派閥の人間ですが……


私が求めるのは、「魔法少女にあこがれて」のようなガチ目の描写か、日常の中のふとした瞬間に色気を感じる描写です。

断じて安易なお色気シーンではありません。

R18スレッスレやんけ……(引用:©JELEE/「夜のクラゲは泳げない」製作委員会

こんなんとか冒頭数分で流れて論外ですね。

お色気シーン→日常描写じゃなくて、日常描写→お色気シーンが良いです。
追加で、こんな露骨じゃなくサラッと流す位でお願いします。

プラトニックな描写を重ねる中で、偶然にも相手のちょっとえっちな場面に遭遇して異性と意識しちゃうのが一番興奮しますよね。
これほんとにアニメレビューか?


勿論これに惹かれて視聴する人もいるでしょうが、私は好きになれませんでした。

アングルは良いけど断じて違う(引用:©JELEE/「夜のクラゲは泳げない」製作委員会


主人公の感情や行動に共感できない

第一話は主人公である「光月まひる」の過去に焦点が当たっていましたね。

過去に描いた絵を批判されるというトラウマで自身が無くなり、やりたいことも見つからない。
偶然出会った花音は自信満々で、自分とは違う世界にいる。

自分は何者かになりたいけど、何者かになれないと心の中では思ってしまっている。


そんな題材は良かったのですが、そう思う理由が深掘りされていないんですよね…………。


「何者かになりたい」と思うのは思春期だから当たり前だろと言わんばかりで、なんでそう思ったの?という根拠が薄く感じました。

自分が拠り所としていた絵を諦めたせいでアイデンティティを見失ったと考えられる描写はありますが、そもそも絵が描けなくなったのは小学生時代です。

受験が迫っているという事は主人公は高校3年生ですが、じゃあ6年間何してたの?ってなります。


それだけ絵に未練があった?
じゃあなんですぐ絵描きを辞めた?


トラウマをずっと引きずっていたから、というのも弱いです。
そのトラウマの原因も「主人公の共感性が高くて周囲の批判で傷ついたから」程度で、そもそも絵に挑戦するようなメンタルの持ち主と思えないんですよね。

流されやすい性格で、批判されるとすぐ落ち込む。そのせいで何にも挑戦できず周りに合わせてばかり。

そんな性格でよく小学生の時に絵を描こうと思えたなと感じました。
それまで何も興味があることが無く、批判されることも無かったので自信があったんですかね?


ここまでなら、小さい頃は自信があったがイラストの一件を経て自信を喪失したまま立ち直れず、何にも踏み出せずにいたという解釈は一応成立します。

しかし真の問題は、そんなにウジウジしていたのに、自分を肯定してくれる花音にあった途端に再び筆を取る決意を固めたことです。


そもそも、イラストレーターを辞めた時も批判だけでなく肯定意見もあったはずです。
なのに辞めたということは、周りと対立することが怖かったことが原因だと考えられます。

この仮定が合っている場合は、花音一人から好きだと言われた程度で立ち直れるはずがないんですよね。
何故なら、一人が肯定してくれた程度では周囲の批判があるという事実は本人の中で変わらないからです。


批判しかされなかったせいで辞めたけど、好きと言ってくれる人がいて一歩踏み出せたという解釈もあり得るように思います。

しかし、現実にはそんなことありえません。

だってコンクールに出てコンクリートの壁に絵をかいてるんですよ?周囲はともかく、大人たちには評価されていたことは明白ですよね。


では自分の周りに合わせることが大切だと思っていて、そういった大人の肯定意見を理解していなかったならどうでしょう。

それならば、このウジウジした性格では絵描きなんて大嫌いになると思うんですよね。
二度とイラストなんて触らないと思いますし、花音はトラウマを深く抉る存在に思えたはずです。肯定の言葉一つで救われるなんて展開にはならないでしょう。


自分が思いつくこれらを解決する唯一のパーソナリティは、周囲から反対されても隠れて頑張ってきて、その努力が一人のファンによって報われたというものです。
だから、そのファンのことが気になる。誘いを断れない。

この展開なら納得できます。


しかし、そんな性格は作中描写からはあり得ないと言わざるを得ません。
何故なら、隠れて頑張ってきた花音に対して意外と思う反応を見せているからです。

普通は隠れて頑張ってきた背景があるならば「あなたもそうなんだ!」って共感すると思います。

でも逃げてますからね。明らかにトラウマ抉られて不快に思ってます。


……というように、主人公の性格設定がちぐはぐ過ぎて人物像が見えてこないんですよね。


要は主人公の考えが分からないし好きになれないということです。
せめて行動原理が理解できるなら話の流れにも納得できるんですけどね。

これは主人公のパーソナリティが筆者と真逆なのもあると思います。
これを読まれている方のお気を悪くさせてしまったら申し訳ないです。


その点、花音は分かりやすく真っ直ぐな性格で良いんですけどね……
そんなに匿名性にこだわる理由がまだ描写されていないので、こちらも現時点では行動原理が分からずじまいです。


結論として、主人公のパーソナリティの作り込みが甘いように感じました。


ここまで書いといてアレですが、花音の歌っている姿を見て決心ような描写から、なんかキラキラしてて良いなって思った線が濃厚です。

でもそれって超浅くないですか?

10代なんてふとした瞬間に気が変わるものだ、と言われるならどうしようもないですけどね。
少なくとも自分は主人公のパーソナリティに納得できなかったという話でした。

その点、ぼっち・ざ・ろっくは心理描写も完璧だったなぁ……。


さて、感情に関する話が9割になってしまいましたが、言動も最後に取り上げます。

最後の路上ライブ乗っ取ったのは驚きましたね。

路上ライブって届け出を出しているからこそ許されています。
知名度0の素人が他人のギター借りてマイク借りてポスター剥がして壁に落書きしては無茶苦茶過ぎます

何やってるん?(引用:©JELEE/「夜のクラゲは泳げない」製作委員会

また、自分の好きな惜しアイドルが追い出されて他人が勝手に配信乗っ取ってるのに「この曲は…!」、「歌上手い」なんて好意的な意見が出ることなんてありえません

普通は「は?誰だよコイツ」、「邪魔すんな」、「推しのポスター破いたの許さん」って感想が流れるでしょう。
それだけに収まらず、SNSで炎上しそうですけどね。どうするんでしょうか。


まだ二話を見ていませんが、この配信は主人公たちが注目される理由付けとして作られているように感じました。

そう考えると、前述の行動原理が分からない件も相まって、脚本を先に作ってキャラやモブをそれに合わせて動かしているように見えます。


いわゆるご都合主義ご都合展開です。
上手くごまかせていれば問題にならないんですが、一度匂いを感じてしまうとずっと忘れられないんですよね。

この予想が良い意味で裏切られて欲しいと切に願います。


第一話総評

作画やテーマは良かったんですが……。

如何せん、主人公が好きになれないのと、そんな主人公の性格すら分からないせいで首を捻りながら視聴していました。
また、脚本ありきでキャラを動かしているように感じられました。

薄っぺらい開幕のお色気シーンも相まって、正直に言うとマイナス点の方が多い印象を持ちました。


第二話の面白さで切るか見るか決めようと思います。
そもそも第一話は導入でしかなく、本番はここからですしね。

総評はD(切る)、C(保留)、B(視聴継続)、A(面白い)、S(覇権)のうちCランクとします。

面白そうな雰囲気を纏った納得のいかないアニメでした。


〆の挨拶

ここまでお読みいただきありがとうございました!

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また次回の記事でお会いしましょう!
サラダバー!


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