涙が出た。
ただ恐くて。

どれだけ生まれつき強ければ
どれだけ才能があれば
そして、どれだけ努力すれば

恐くない、本番の日が
迎えられるのだろう。

恐くない、緊張しないという人もいるのだから
単純に向いていないということなのかもしれない。

体に震えがくる。
何が恐いのかすら、わからないのだ。

でも、今回は今までと少し違う。
マイナスに偏る脳内の要素が
ひとつもないのだ。

優しい劇団員。
素敵な稽古場。
実直で穏やかな稽古。
家に帰れば
楽しみにしていてくれる家族。
楽しみだよ、と連絡をくれる友人。

今までの演劇人生で一番
多くやってきた個人稽古。

失敗する要素は、ないはずなんだ。

心を閉ざすな。
うつむいて、涙を流して
想像力の中に苦しんで。
それも大切なことだ。

でも、立ち上がろう。
大きな声で第一声を！
テンポよく、情緒に流れず！
なみだを流す自分と
外側から冷静にそれを観ている自分
その半分半分の間で
勇敢に、立っていよう！

やることはやった。
あとは、頭が真っ白になるまで
集中するだけ。