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チンドン屋さんになりたくて

母が亡くなってから、怒涛の日々だった。
ただ肉親ということではなく、濃い物凄く濃い
繋がりのある人だったので仕方ない。
今もふと気を抜くと、涙が出る。当たり前だから、汗をふくように涙をふく。ごしごしふく。
そして笑う。脈絡なく突然笑う。
そんな風にわたしなりに、面白おかしく
母の死をこの身のうちに取り込んで、生きていけたらと思う。

暗いのは嫌なのだ。わたしは面白いことが出来ないから、面白い人に救われて日々生きている。
次生まれ変わるなら、絶対面白い男の人に生まれ変わりたい。
そんな面白くないわたしだけど、ほんの少し人をにっこりさせる位は出来る時もある。
この1ヶ月はそれすら出来なかった。
そうすると、周りの温度が少し下がる。だから何となくわかるのだ。
ああ、わたしも限界だったんだな。
いつもの当たり前の笑顔や冗談を、繰り出せていなかったんだなって。
もうそれは嫌だ。優しさとかじゃなく、わたしが嫌だ。

自分に対して、なにしてるんだー!と
松田優作のなんじゃこりゃー!なみに
叫びたい気持ちだ。

面白い人間ではなくても、いやだからこそ
面白い空間を作ろうとする。
それだけが、わたしの存在意義なのに。
元気がなくて笑えなくて、ふざけられない。
それは本当に辛いことだった。

変なことをして、何だこいつと思われたい。
ふざけて、仕方ないみたいな顔をして笑う皆の顔が見たい。

なんだろう。
元気になってきて、したい1番のことがそれって
わたしってかなり歪んでいるのでは…

歪んでいるのだ。歪んでいるから、俳優やってたんだもの!

子どもの頃から、プラスチックのマイクを持って
台所から出てきて、踊りながら
ピンク・レディーやキャンディーズを歌っていた。
光GENJIになりたくて、ローラースケートの特訓もした。

なんだろう。正統派の表現者になりたかったわけでは、きっとないのだろう。
いつか「チンドン屋」さんみたいになりたい。
そう思っていた。
おかしなことをしたい。
そういう願望が常にあった。

女の子だけど可愛いねとか綺麗だねより
君はおかしな子だねと言われると
天にものぼるほど嬉しかった。

母は、そんなおかしなわたしを
とても面白がってくれていた。
少しは心配していたかもしれないけれど。
欲がなく、ただ変なことをしたいだけ。
そんな娘。
心配だろう、普通…

でも、どんな大きな舞台に立っても
役がどんなに目立つ役でも
「おかしなこと」をちゃんと出来て
お客さんにウケた時は
やっぱりお母さんも1番喜んでいた。

感性が同じだったのだろう。
それかもしかしたら、わたしが嬉しそうだったから、嬉しかっただけかもしれない。

ちゃんと「変なこと」したよ!
そしてウケたよ!
また次ももっと「変なこと」するよ!

それが、天国にいる母に
1番届くはずの言葉だから。
それを、わたしは知っているから。

またちゃんとしっかり
明日からフザけて、生きていこうと思います。
隙間があらばすぐ冗談を言い
余計なサービスばかりする。
そんな生き物としての
人生の軌道にバッチリ乗っていこうと思います。

ただいま。わたしの人生。
おかえり。お母さん。
わたしの人生の客席の
1番いい席とっといたからね。

見てて。

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