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愛が愛であれますように

大丈夫だよ 愛されるから
つらい顔して 笑わなくていい
生きることの悔しさばかり
見つめる君は もう強いから

とめるなメロディ
やりきれないときも
いつくしむように 鳴らしておくれ
ひたむきに けんめいに

星がない夜も おしゃべりをしたね
ものがたりを灯りにして 悲しみを照らすのさ
時をこえるのは 言葉だけなんだ
優しすぎて 笑えるような 
明るい声でつたえてよ


いきものがかりが二人体制になって
はじめての楽曲である。
タイトルは「STAR」
今話題を呼んでいる映画『銀河鉄道の父』の
テーマソングだ。

いきものがかりの歌詞の
何がそんなに好きなのか、一言で言うのは難しい。
彼らの歌は「みんなの歌」的な存在で
大衆全体にアピールする、普遍的なもの。
批判する人たちにとってはそれが
「平凡」「思想がない」なんて言われる
部分なのだろうと思う。

ボーカルの吉岡聖恵さんの歌い方だってそうだ。
彼女に似た歌い方をする人をあまり見かけない。
聖恵さん自身が歌っているというよりは
時代が いきものがかりに求めるものを
聖恵さんが嗅ぎとって、声にして出している。
そんな印象を受ける。

今回の歌には例えばこんな歌詞がある。

「だけど君は叫ばなきゃ 大切なひとのために
その手を離しちゃだめだ いのちをつかいきれ」

「みんなの歌」です、毒も棘もありません
そんな包装紙に隠れている
いきものがかりの本性である。

宮沢賢治とその最愛の妹トシ。
そのモチーフがこの詩であることは、明白だろう。
その愛は、創作活動は、人生は
美しいものだったと皆が言った
歌詞はそう歌っている。

でも、そうじゃないのだ、と。
死の間際まで、その手を離しちゃ駄目だ
そして、叫ばなければならない
命を使い切るのだ、と。

どこが「みんなの歌」なのだろうか。
それを歌う聖恵さんのボーカルの冷静なこと。
伝えるメッセージは当たり前に
グループで共有している。言葉はいらない。
それが、いきものがかりである。

感情的に乱れて、歌ったりは決してしない。
だって「みんな」が感情移入する
「歌」を作っているからだ。

もはや職人である。裏方さんである。
かっこいい。ロックだ。

「平凡」なんてくだらない言葉だ。
では奇をてらえば、反逆めいたことを口にすれば
「非凡」なのか。

ジャイアント馬場がなぜ「王道」を歩いたのか。
馬場がいなければ猪木も存在し得ないのだ。

「優しすぎて 笑えるような 明るい声で」
吉岡聖恵はうたう。
「ひたむきに けんめいに」
水野良樹は言葉を綴る。

平凡の繰り返しを恐れないものを
天才と言う。
稀なるものは、大衆を恐れず
大衆に開いてゆく。

わたしは「いきものがかり」の歌が
とても好きだ。

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