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人間の責任

今回の作品で、大切にしたいことがある。

わたしが演じる役は
天皇制を現している、とも言われたり
アメリカを指している、と言われたり
高度経済成長期を現している、とも言われる。

つまるところ、善なる側
市民の側、古き良き日本の側ではない
ということが言える。

一生懸命、加害の側なのだと意識しながら
演じてきたが…今ひとつ
何かが足りなかった。

ふと、自分の家の本棚にある
緒形正人さんの「チッソは私であった」を
手に取る。

芝居で、わからなくなったら
いつも最後はこの本に助けられてきた。
今回もそうだった。

水俣病闘争を闘い、被害者遺族であるのに
チッソと話し合おうとした
稀なるひと。
それが緒方正人さんだ。

わたしは「チッソ」になればいい。
しのごの余計なことはいらない。
ただそれだけなのだ。

緒方さんは言った。
自分が水俣病の原因を作った
チッソの社員だったら
同じように罪を犯したかもしれないのだと。

チッソの罪は、国の罪。
高度経済成長で目をつむってきた民衆の罪。
そして、何よりも。
他の生き物も沢山殺してしまった
人間の罪だということに
やっと気づいたのだと。

自分は、チッソと同じ地平に並んで
生きとし生けるものに
人間の責任を果たし、謝りたいのだと。

何度読んでも、涙が出る。
なんて素晴らしい人なんだろう…

わたしは今回
「チッソ」の側に立つチャンスを
神に頂いたのだ。
幸運である。

加害者として、まっすぐに立ちたい。
その罪を知るために
もっともっと
よき役者でありたい。

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