ちょっとした小説的な?


眠っていたのだろうか。

朝か夜かもわからない暗闇。ここがどこかもわからない、なんでこんなところにいるのかも。何もわからない。私が何者かも。わからない。暗闇のせいで頭が痛い、ぼんやりして何も考えられない。泣き叫びたいのに声の出し方も涙の流し方も忘れてしまった。
安心しているのか。泣いていないというのは、泣く理由も忘れてしまって。忘れたことに悲しくなって。心は軽くなっているのにうずくまって。 
私は多分このまま何もしないままで暗闇に溶けて死ぬ。

水の流れる音、雨の音、風の音。

暗闇なのに音はする。何にもないのに音ばっかり色々なって心地よいはずなのになんだか胸騒ぎがする。
私はうんざりして歩きだすとすぐに冷たい水に足を滑らせて転んだ。もっとうんざりして流れる水、川を歩いて、歩いてもずっと暗い。どこを歩いているのかもわからない。
木がサワサワなる音と目を覚ました鼻に入る匂いで山だということはわかる。わかるのはそれだけでなんで私がこんなところにいるのかがわからない。
頭がいたい。さっき転んだ時に頭を打ったのか。

目を覚ます。

真っ暗なのに目が覚めているのに覚めていない気がする。潮の匂いに波の音、海だ。私は海が嫌いだ、人が多いし塩が肌に張り付いて気持ちが悪い。だから嫌い。
足先にはたしかに砂の感触がある。さっきまで山にいたのに。さっきだけど私は眠っていた。誘拐なら変な趣味を持っている誘拐犯だ。愉快犯。うん。歩く、歩くと腰の辺りまで海に入って行く。ラジコン操作されてるみたいにずんずんすすんでいく。
私は海がもっと嫌いになりそうにもがいて、息もできないで意識を失った。

また目が覚めると今度こそ死んだのか音もない暗闇。

立つことも手探りをすることもできない。その両方、二度とできない。四肢が無くなっていたから。寝返りを打とうと転がると私に繋がれていた見えない何かがちぎれる音と痛み、床に落ちた私を抱き上げる何か。また私は乗せられて、手術台に乗せられて管を繋がれる。さっきまでのは全部夢だったのか、実験だったのかはわからない。両目をくり抜かれた私には今私の腹を開いて内臓を取り出している生き物が人間なのかそうで無いのか、何もわからない。

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