映画「哀れなるものたち」


原題:Poor Things
directed by Yorgos Lanthimos
starring : Emma Stone, Mark Ruffalo, Willem Dafoe, Ramy Youssef, Christopher Abbott, Jarrod Camichael

不幸な若い女性ベラ(エマ・ストーン)は塔から川に飛び込み自ら命を絶つが、風変わりな天才外科医ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)によって自らの胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇生する。身体は成人女性だが、脳(心)は赤ん坊・・・そんなベラはあらゆることを吸収する好奇心に満ちていた。家の中だけで育てられた彼女は、やがて「世界を自分の目で見たい」という強い欲望にかられる。バクスターの弟子の医者のマックス(ラミー・ヨセフ)と婚約という形を取り、セックスに目覚めた彼女は、放蕩者の弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)に誘われて大陸横断の旅に出る。大人の体を持ちながら新生児の目線で世界を見つめるベラは時代の偏見から解放され、平等や自由を知り、驚くべき成長を遂げていく。

ヨルゴス・ランティモス監督、やり切った〜!!って感じです。
いやぁもう、えげつない、ものすごい、エロ・グロ・・・
何か事故のショックで、誰かと入れ替わった・・・って話はいろいろあれど、外科手術的に物理的に入れ替えた・・・って、まぁ〜「ブラックジャック」だぜ!
ただ、ブラックジャックのような、感情に訴えるような主義主張、信念がある医者ではなく、マッド・サイエンティストの塊のような父親に強制的に(ほんまに物理的に強制的に)変えられてしまった自らを呪わないで、すべて受け入れて淡々としているバクスター教授・・・こんな狂気・・・突き抜けた、振り切った狂気を演じられるのって、やっぱり、ウィレム・デフォーを置いて他にいないよね。

 エマ・ストーンの体当たりの熱演は、もう裸、裸、セックス、セックスのオンパレード、カップルで観にいく映画やないです!
ただ、あまりにあっけらかん・・・なので、ベラにくびったけだったダンカンも、ひたすら振り回される「ダメ男」になっちゃってて・・・
ベラが次第に「自己」に目覚め、大人になっていく・・・内面の成長・・・の前に、もはや自分の身体って、単なる「うつわ」的に捉えてる。
内面や精神的にはどんどん成長していって表情はどんどん高貴な感じになっていくのに、身体に対しては全く無頓着・・・ダンカンが次第に落ちぶれていくが、彼に対しても全く無頓着・・・ただ父として慕うバクスターに対しては「愛情」だと認識できるようになっていく・・・

しかしまぁ、絵づくりがすごい!!
あまりに「とんでも!」なストーリーなんだけど、シーンの美しさ、絵の美しさは圧巻で、情緒的なものはないのに・・・そう、西洋の名画、古典絵画の世界そのままの「止まった時間の中にある美しさ」が素晴らしい・・・
セット、衣装、背景、細かい調度品、食器に至るまで、細部まで統一感があって、美しいのだ。16〜17世紀ぐらいの絵画の中にそのまま入り込むような陶酔感も感じられた。
こんな様式美、絵画の中のような美しさの中に、とんでもないストーリーが展開していくっていうギャップも強烈で、ほんまに、ものすごい作品でした。

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