映画「隣人X」

※昨年末に鑑賞した映画のレビューです。

directed by 熊澤尚人
starring : 上野樹里、林遣都、ファン・ペイチャ、野村周平、嶋田久作、原日出子、バカリズム、酒向芳

ある日、日本は故郷を追われた惑星難民 X の受け入れを発表した。
人間の姿をそっくりコピーして日常に紛れ込んだ X がどこで暮らしているのか、誰も知らない。
X は誰なのか?彼らの目的は何なのか?人々は言葉にならない不安や恐怖を抱き、隣にいるかもしれない X を見つけ出そうと躍起になっている。
週刊誌記者の笹(林遣都)は、スクープのため正体を隠して X 疑惑のある女性・良子に近づく。互いに距離を縮め合ううちに、笹は良子に対して本当の恋心を抱き始める。しかし、X疑惑を完全に払拭できず、一方で編集デスクからスクープを迫られ、板挟みに悩み苦しむ笹は暗闇で自分に迫る影に脅かされる。その姿は後日紹介された良子の父にあまりにそっくりだった。ついに記事を書き上げた笹は・・・

話はあまりに突飛で現実味が薄い気がするが、何十年の前に見た古典SF「火星年代記」のドラマ版を彷彿とさせられた。確か自分自身も火星人だという記憶も失って人々の間に紛れ込んだ・・・って話があったように思う。
惑星難民Xは基本、地球外知的生命なのだけど、人間をコピーして全く見分けがつかないということなら、「Xは誰だ」という炙り出しすら、無意味ではないのか・・・ってことに人々はすぐには受け入れられない。
差別や排斥という負の行動の出発点は「差異」なんだけど、同質化してしまって見分けがつかないんだったらそもそも差別できないんじゃないか?
でも、人って何かと「差異」を見つけようとしたがるし、自分と違う、同じってことにこだわりがちなんだよね。とはいえ、私と私以外の人は全く同じってことはありえないんだし、みんな違って、みんな良い・・・んだってこと、理性的にはちゃんと分かっているんだけど・・・

酒向芳さんが、今までの「変人です」みたいな役柄ではなく、普通にどこにでもいる優しい父親・・・を演じている・・・
これが本作では一番成功していると思う。
酒向芳という俳優さんの幅の広さを改めて思い知った。とんがった人物、狂ったような人物、癖のある悪の強い役、悪役・・・が似合う俳優さんだと思っていたけど、こんなに「普通の優しい人」も演じられるのだと・・・ちょっとびっくりしたほどです。

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