映画「首」


directed by 北野武
starring: 西島秀俊、加瀬亮、ビートたけし、中村獅童、木村祐一、遠藤憲一、勝村政信、寺島進、桐谷健太、浅野忠信、大森南朋、六平直政、大竹まこと、荒川良々、津田寛治、小林薫、岸部一徳

天下統一を目指す織田信長(加瀬亮)は、中国の毛利、甲府の武田、越後の上杉、京都や大阪の周辺の延暦寺・石山本願寺などの寺社勢力など群雄に囲まれ激しい闘いを続けていた。そんな中、摂津で一度は家臣となっていた荒木村重が反乱を起こし、姿を消す。信長は足軽から頭角を表し出世頭の羽柴秀吉(ビートたけし)、同じく出世頭を争う明智光秀(西島秀俊)ら、家臣を集め、信長自身の跡目を餌に村重の首をあげよと命じる。秀吉の軍師・黒田官兵衛(浅野忠信)の策で捉えられた村重を、なぜか光秀に引き渡す。光秀はそれを信長に差し出すことはしなかった。光秀の思惑、秀吉の思惑が交錯する中、苛立ちの中で次第に家臣の誰もを信用しなくなった信長に対して、光秀はこれ以上信長に翻弄される状況を打破したいと考えるようになり、そんな光秀の焦燥感を冷静に見つめる秀吉たちは「ある機会」を密かに待っていた・・・そして天正十年六月のあの日を迎える。

  戦国時代の筆頭に立つ有力武士たちの焦燥感と狂気に苛まれていく様と、末端の末端・・・ただただ「このままでは嫌だ、出世したい」という止めようのない欲望を持つ者たちの「狂乱」をももう一つの軸で描いていて、頂点は「本能寺の変」であるが、そことは全く違う次元での、「狂った戦国時代」も印象付けていた。
  北野武監督作品は、私はどうにも苦手にしていて、なかなかきちんと見たことがなく、見逃した作品も多いし、さりとて「どうしても見よう」という気になかなかなれないでいる・・・といった感じだが、この「首」は、最初から最後まで引きつけられて、熱くなりながら、見終わった。

女性陣が全く出てこない、男だけで描かれる戦国時代・・・この割り切り方がいい。
男同士のグダグダの色模様・独占欲・嫉妬の愛憎劇・・・まぁ、生々しくってね〜、耽美さは全くなく・・BLというよりは、もっと肉感的だなぁ。
 名も無い、農民から「戦さで出世したい」だけでついてきた男を中村獅童さんが演じていて、最後まで「取り憑かれた男」に徹して演じきっていて、最後の最後まで彼が引きずっていたことが印象に深く残った。
 信長の狂いっぷりを加瀬亮さんがかなり振り切った演技でガンガン押してくし、片や、大森南朋とビートたけしのやりとりは、コントだよなぁ・・・どうやらアドリブいっぱいらしいけど。
  史実にある大きな闘いや出来事はちゃんと踏まえながら、そこに至るまでのところはかなりデフォルメやらアレンジが盛り込まれてたし、私が時代劇を見るときは気にしてる「ペカペカ明るい照明で時代劇やらんといて!」的なところからいうと、重々しさが感じられる画面づくりで、なかなかおもしろかったです。

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