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映画とクラシック音楽と宇宙と

私の好きなCDのご紹介です。

ホルスト: 組曲《惑星》/J.ウィリアムズ: 《スター・ウォーズ》組曲 
ロサンゼルス・フィルハーモニック他
指揮:ズービン・メータ

CDとの出会い

17年ほど前、このCDを初めて手に取った時、「そう!これこれ!」と思いました。
何が「これこれ!」なの?と思われたかもしれませんが、見ての通り、このCDには2曲入っています。宇宙に関連した曲です。

1曲目は、ホルストの組曲《惑星》です。イギリスの作曲家、グスターヴ・ホルストの名曲ですね。第3曲目の木星(Jupiter)がとても有名です。

そして、2曲目が、そう! あの映画、「スターウォーズ」の曲が組曲となって入っています。

ジョン・ウィリアムズ: 《スター・ウォーズ》組曲 

作曲は言わずと知れたジョン・ウィリアムズです。
たくさんの映画音楽を作曲されています。「スター・ウォーズ」のほかにも「インディ・ジョーンズ」「未知との遭遇」「E・T」「ハリー・ポッター」など名作映画の音楽を数知れず作曲されています。

ジョン・ウィリアムズの音楽は、見事なオーケストレーションで構成されたているのが特徴です。素晴らしいオーケストラの曲の数々で、私はつねづねジョン・ウィリアムズは映画音楽家というより、クラシック音楽家だと思っています。しかし映画音楽はどんなにオーケストレーションが素晴らしくても、ポップスという扱いをされ軽んじられててきた時期が長くありました。

ロンドン交響楽団などは、早くから映画音楽の録音等行っていたようですが、保守的なオーケストラで演奏されることはありませんでした。
それでも2000年以降は映画音楽の演奏を徐々に取り入れるようになってきたそうです。

私がこのCDを手に取った17年ほど前、その風潮がまだちょっとだけ残っていると感じていた私は、ホルストと並んでジョン・ウィリアムズの名前があるのを見た時、おおおお!と思ってしまいました。
また、曲も《惑星》と《スター・ウォーズ》というのが粋ですよね。

その後2020年にジョン・ウィリアムズはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団で初めて指揮を振るという歴史的事件!があり、今ではすっかりクラシック音楽家と認められていて嬉しい限りです。
(その時の演奏が、ドイツのレコードレーベル Grammophon の公式YouTubeで公開されていますので、興味がある方は検索してみてください。《スター・ウォーズ》も演奏されています。)

こちらに収録されている《スター・ウォーズ》組曲は、1977年12月に録音されています。アメリカで「スター・ウォーズ」第1作目が公開されたのが1977年5月ですので、公開直後の録音ということになります。指揮のズービン・メーターから依頼をされ、組曲として編成し直したとのことです。

第1曲:メイン・タイトル
第2曲:王女レイアのテーマ
第3曲:リトル・ピープル
    酒場のバンド
第4曲:戦い
第5曲:王座の間とエンド・タイトル

(ちなみに、第1作目の音楽が編成されているので「帝国のマーチ」は入っていません。)

劇中曲やサントラと違って曲だけをじっくりと聴ける演奏会用となっているのがとても良く、第1曲「メイン・タイトル」と第5曲の「王座の間とエンド・タイトル」は圧巻の演奏です。ジャズバンドの「酒場のバンド」もしっかり入っているのがいいですよね。

ロサンゼルス・フィルハーモニック公式youtubeより
Main Title From "Star Wars"


グスターヴ・ホルスト: 組曲《惑星》

さてさて、ジョン・ウィリアムズと《スター・ウォーズ》について、つい熱く語ってしまいましたが、もう一曲の《惑星》についても少しお話ししようと思います。

グスターヴ・ホルスト作曲のこの曲は、《惑星》ということで、宇宙に浮かぶ星に想いを馳せて作曲したのかしら?と思いがちですが、実は占星術からインスピレーションを得たと言われています。占星術に関心があったホルストは、太陽系の惑星や天空の星座たちがもたらす暗示に強く惹かれ、それらを音楽化するというプランを思い立ったそうです。(CDライナーノーツより)

惑星の名前には、日本語だとわかりにくいですが、ローマ神話の神々の名前が多くつけられています。
7曲からなるこの組曲は、7つの惑星の名前が付けられ、その星に暗示する副題が付けられています。

第1曲:火星(Mars)     戦いをもたらす者
第2曲:金星(Venus)   平和をもたらす者
第3曲:水星(Mercury)  翼のある使者
第4曲:木星(Jupiter)    喜びをもたらす者
第5曲:土星(Saturn)     老いをもたらす者
第6曲:天王星(Uranus)   魔術を使う者
第7曲:海王星(Neptune) 神秘なる者
(副題は、今回取り上げたCDに記載されているものです。CDによって訳が違っている場合があります。)

それぞれ副題のイメージ通りの音楽となっています。特に第1曲の火星は、《スター・ウォーズ》に通じるものがあると思います。
また、第4曲の木星の何かを訴えかけるような演奏は、心を打つものがあります。

ロサンゼルス・フィルハーモニック公式youtubeより
The Planets, Op. 32 - I. Mars, the Bringer of War


ズービン・メータとロサンゼルス・フィルハーモニック

両曲とも、指揮がインド出身のズービン・メータ、そしてアメリカのオーケストラ、ロサンゼルス・フィルハーモニックの演奏となっています。

ズービン・メータは、1962年にロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督に就任し、ロサンゼルス・フィルハーモニックに黄金時代をもたらしました。
今回紹介した組曲《惑星》の録音は1971年に行われたもので、こちらの録音は、日本で1972年のレコード・アカデミー賞を受賞しており、ズービン・メータの録音した中でも特に名演奏と言われています。

そして、上記でも書きましたが《スター・ウォーズ》組曲は、1977年12月に録音されました。演奏会用の組曲を作って欲しいとズービン・メータがジョン・ウィリアムズに依頼したということで、同じ時期に「未知との遭遇」も組曲として録音されており、当初は《スター・ウォーズ》組曲と、組曲《未知との遭遇》がカップリングとして発売されていたようです。
発売当時は、「一流指揮者とオーケストラが映画音楽を演奏した!」とセンセーショナルに報じられたそうです。(CDライナーノーツより)
1977年頃は、まだ映画音楽が軽んじられていたであろうことがよくわかりますね。

その後、組曲《惑星》と《スター・ウォーズ》組曲がカップリングとして発売された経緯はわかりませんが、おそらく販売元のレコード会社DECCAの企画としてこの組み合わせとして販売されたのではないかと思います。この組み合わせで最初に販売されたのが2001年で、「宇宙をテーマにした名曲「惑星」と映画音楽の傑作「スター・ウォーズ」組曲のベスト・カップリング盤。」と謳っています。(UNIVERSAL MUSIC JAPAN HPより)

2023年現在もこちらの組み合わせのCDは販売されていますが、配信でも聴いたり購入したりすることが出来るようになっています。欲しい曲だけ購入できるのはとても便利ですが、組み合わせに「おおっ!」と思う感覚が少し薄れるのかなと思うと、ちょっとだけ寂しい感じもします。

宇宙と音楽を考える

紀元前、宇宙の惑星が動くときに音楽が奏でられている等、音楽と宇宙(天体)は密接な関係があると考えられていた時代がありました。
そして人類は壮大な宇宙の惑星に神々の名前をつけました。古くから人類は宇宙に想いを馳せ、音楽を作り、物語を紡いできました。

宇宙旅行の現実が目の前まできている現在、人類の宇宙に対する想いは、紀元前からどのように変わっているのでしょうか?

そしてもっと先の未来、《スターウォーズ》の世界のように地球以外の惑星に人類が住むようになったとしたら、《惑星》《スターウォーズ》はどのように聴こえ、どのような景色が見えるのでしょうか?

どんな未来になったとしても、《惑星》の金星と木星の音楽が心地よく聴こえてくるような世界になると良いですね。

そんな未来や宇宙に想いを馳せられるであろうCDのご紹介でした。


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