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映画は音楽と共に

2024年3月10日(日本時間では3月11日)に、第96回アカデミー賞がハリウッドのドルビー・シアターで開催され、各賞がそれぞれ決まりました。
日本の2作品が受賞した事もあって、テレビ、新聞等は大いに賑わっていましたね。

というわけで、本日は、アカデミー賞の音楽関連賞を受賞した映画の音楽を5作品ご紹介します。ご紹介する作品は、ちょっと遡って1930年代から1970年代に公開され、音楽関連賞を受賞したものから、クラシック関連の作曲家によるものを選びました。


『ロビン・フッドの冒険』 エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(第11回アカデミー賞作曲賞受賞)

1938年に公開されたアメリカ映画『ロビン・フッドの冒険』は、第11回アカデミー賞の作曲賞を受賞しています。作曲は、オーストリア出身の作曲家コルンゴルトです。
コルンゴルトはオーストリアでクラシック作曲家として活躍していましたが、戦争の影響でアメリカに亡命しました。亡命後映画音楽を作曲していくことになるのですが、コルンゴルトの素晴らしいオーケストレーションは、ハリウッドの音楽に革命を起こし、その後の映画音楽に多大なる影響を与えました。
映画『ロビン・フッドの冒険』は全編に音楽が使われており、映画の世界観が組み込まれ、交響詩の様な楽曲となっています。
古い映画ながら彩りがとても綺麗で、まるでRPGの様です。音楽が映画をさらに盛り上げ、とても楽しい映画となっています。
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ちなみにコルンゴルトは、こちらの映画の2年前に制作された映画(『風雲児アドヴァース』)の音楽も作曲し、音楽自体はアカデミー賞を受賞していますが、受賞者としては、映画制作会社の音楽部門が受賞しています。


『女相続人』 アーロン・コープランド(第22回アカデミー賞ドラマ・コメディ音楽賞受賞)

1949年に公開されたアメリカ映画『女相続人』は、第22回アカデミー賞のドラマ・コメディ音楽賞を受賞しています。この映画の音楽はアメリカの作曲家コープランドが担当し、賞を受賞しました。音楽自体は、フランスの作曲家マルティーニが作曲した歌曲「愛の喜び」をはじめとする古い歌曲が使われ、コープランドはこれらの曲を映画用に編曲しています。歌曲「愛の喜び」はイタリア歌曲としても有名で、プレスリーの有名な楽曲「好きにならずにいられない」の原曲にもなっています。
コープランドはこの映画の他にも映画音楽を3曲担当しており、全ての作品でアカデミー音楽賞にノミネートされています。
『女相続人』は男女の愛憎劇で、主人公の女性の心の内の変化が描かれています。美しい音楽でありながら、少し不穏なメロディで始まります。メインの登場人物が4人しかいないのですが、引き込まれる内容です。
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『巴里のアメリカ人』ジョージ・ガーシュウィン作曲(第24回アカデミー賞ミュージカル音楽賞受賞)

ジョージ・ガーシュウィンが作曲した楽曲「パリのアメリカ人」にインスパイアされて作られたアメリカのミュージカル映画です。1951年に公開されました。第24回アカデミー賞では、ミュージカル映画音楽賞のほか作品賞等合わせて6部門受賞した名作です。(6部門受賞とは別に、主役のジーン・ケリーが名誉賞を受賞しています。)
全編ガーシュウィンの曲が使われ、歌詞はジョージの兄、アイラ・ガーシュウィンのものとなっています。賞の受賞はガーシュウィンではなく、編曲等を担当した作曲家のジョニー・グリーン、ソウル・チャップリンの2名となっています。
この映画は、ガーシュウィンの名曲が無駄なく効果的に散りばめられています。そして主役のジーン・ケリーの歌と踊りが、物語をさらに彩ります。ピアニストのオスカー・レヴァントの演奏も見どころです。
ガーシュウィンの音楽を余すことなく楽しめる映画となっています。
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『ウエスト・サイド物語』レナード・バーンスタイン作曲(第34回アカデミー賞ミュージカル映画音楽賞受賞)

1957年にブロードウェイで上演されたミュージカルを映画化し、1961年に公開されたこちらの作品も、第34回アカデミー賞で作品賞、ミュージカル映画音楽賞を含む10部門で受賞した名作ミュージカルです。作曲はレナード・バーンスタインですが、ミュージカル映画音楽賞としては、編曲などを担当した、ソウル・チャップリン、ジョニー・グリーン、シド・ラミン、アーウィン・コスタルの4名が受賞しています。
物語は、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」をベースに、移民に対する人種差別や貧困といった1950年代のアメリカの社会問題が反映され、それまでのミュージカルにはなかったダークな部分が描かれています。とはいえ、オープニングの音楽から引き込まれ、それに合わせたダンスも素晴らしいです。下の動画は、そのオープニング(プロローグ)の部分になります。冒頭から音楽とダンスに圧倒されますが、その後のダンスパーティの場面は音楽もダンスも圧巻のシーンです。
音楽は、それまでのミュージカルの音楽の要素に加え、ジャズやラテンのリズムを融合させた画期的な方法が取られました。映画化の際のオーケストレーションについては、バースタインから細かな指示があったと言われています。劇中の音楽は後に、組曲「シンフォニック ダンス フロム ウエスト サイド ストーリー」として発表され、今でも世界中のオーケストラが演奏する人気のナンバーとなっています。
時代背景もあると思いますが、この映画は明らかに上記3作品に比べると、演出も音楽も変わったように見受けられます。この辺りの時代から、映画の転換期を迎えたようにも感じます。

『ウエスト・サイド物語』は、2021年にスティーブン・スピルバーグによってリメイクされました。現在、1961年版、2021年版共にAmazonプライム等で閲覧可能です。


『JAWS』ジョン・ウィリアムズ(第48回アカデミー賞作曲賞受賞)

みなさんご存知(かどうかわかりませんが)の『JAWS』の音楽は有名ですね。1975年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督のアクション・スリラー映画です。第48回アカデミー賞では、作曲賞を含む3部門で賞を受賞しました。
『JAWS』の音楽は、バラエティ番組などでもよく使われています。低音の短く繰り返されるフレーズがだんだん早くなる感じが、迫り来る恐怖心を煽られ、音楽だけでもとても怖いです。サメが襲ってくる映像にこんな音楽を流されたら、もう恐怖映画でしかないですね。この様に人の心を揺さぶる音楽は、ジョン・ウィリアムのお得意とするところかと思います。
ジョン・ウィリアムは1971年公開の映画『屋根の上のヴァイオリン弾き』でアカデミー編曲賞を受賞していますが、自身の作曲の受賞はこの映画が初めてとなりました。
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以上5作品をご紹介しました。
アカデミー賞の音楽関連賞は、1935年の第7回(1934年の作品が対象)から設置されました。上記でご紹介した様に、かつてはドラマ・コメディ部門とミュージカル部門で分かれていたり、作曲と編曲で分かれていましたが、現在は作曲賞と歌曲賞の2賞となっています。
今回歌曲賞についてはご紹介しませんでしたが、こちらの賞もたくさんの名曲がそろっています。歌曲賞は、映画のために作られた歌曲に対して、作曲家と作詞家に贈られる賞ということで、歌手は受賞対象ではないようです。(歌手が歌ってこその曲だと思うのですけどね・・・)
作曲賞、歌曲賞共に、上記でご紹介した方以外にもそうそうたるメンバーが名を連ねています。

今回は賞を受賞した映画をご紹介しましたが、賞を受賞したから名作、しなかったから名作じゃない、ということではありません。無冠の名作と言われる映画も、世の中にはたくさんあります。また、世間がなんと言おうと、私にとってこの映画は名作だ!という作品も皆さんの中にもあることと思います。また機会があれば、映画音楽をご紹介できたらと思います。

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