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憧れの利尻島へ(②:利尻富士登山録)

全4回の利尻島旅行記の3回目です。
利尻富士に登ったので、その際の記録を書きます。

第1回目、第2回目はこちら↓


もともと利尻島に行こうと思ったのは利尻富士登山が目的でした。
航空券を予約した時点では、なぜか標高1400くらいかと勝手に思い込み、実際は1700超えると知って戦々恐々としていましたが、天気にも恵まれ、無事に登頂することができました。

今回の行程

鴛泊→利尻富士温泉→利尻北麓野営場→ポン山分岐→第1見晴台→第2見晴台→長官山→利尻山避難小屋→9合目→山頂 (鴛泊コース往復)
コースタイム:11時間20分(山と高原地図)※途中ワープ(後述)したため、実際の歩行距離では9時間55分

行動記録

鴛泊→北麓野営場

鴛泊の宿を朝4時過ぎに出発。
緯度が高い利尻島の日の出は早く、すでに空は明るくなっていました。
薄日が差していてまずは一安心。
利尻島では、登山口までの送迎をしている宿も多いのですが、今回お世話になった宿は送迎をやめてしまったとのこと。
静かな街の中を抜け、登山口である北麓野営場に向かいます。
野営場への一本道を入ったあたりで、すれ違う車のおじさんに呼び止められました。
「どこ行くんだ?」「山に行きます」
「乗れ!」「えっ?!」
おじさんはくるりとUターンし、乗るよう合図しました。
一瞬戸惑ったものの、ここは素直にご厚意に甘えることに。
車はずんずん進み、あっという間に北麓野営場に到着しました。
「30分は早くなったべ!」と笑うおじさん。
(実際には30分どころか約1時間短縮。ありがとうございます…。)
おじさんにお礼を言い、車が離れていくのを見送りました。

北麓野営場。朝4時半にもかかわらず駐車場は8割ほど埋まっていました

北麓野営場→6合目

思いがけず市街地からワープし、北麓野営場から登山開始です。
北麓野営場から甘露泉水までは目立ったアップダウンもなく、遊歩道のような道が続きます。

北麓野営場から甘露泉水までは15分ほど。エキノコックスがいないので煮沸不要なのが嬉しい
湧き出る清冽な水。序盤にしてここが最後の水場

甘露泉水のすぐ上が3合目で、その少し先にポン山方面との分岐があります。

3合目から4合目までは20分ほど。

原生林の中の道を進み、少し傾斜が急になってきたところで5合目に到着。
ここで出会った老婦人2人は、明日礼文島に行くとのこと。いいなあ。

野営場から1時間以上歩いているので、ここで休憩しました

この辺りから樹々の背が低くなり、だんだんと視界が開けてきます。
振り向いた先には、礼文岳が顔を出していました。

雲の隙間から礼文岳。標高490mながら堂々とした山容

5合目から6合目までは拍子抜けするほど近く、10数分で到着。
第1見晴台という名前の通り、鴛泊、礼文島方面を望むことができます。

右上のピークは長官山かな?
左斜め奥は礼文岳、右斜めのでっぱりはペシ岬

6合目→長官山

6合目付近から先は傾斜も急になり、ぐっと登山らしくなります。
まだ標高1000mにも満たないのに周囲にはハイマツが広がり、すっかり高山ムードです。

ヤマブキショウマ(?)あちこちで満開でした
6合目の少し先で。距離的には山頂まで近そうな気もするけれど…。

標高が上がるにつれて、だんだんと足元に花の姿が。
5合目あたりではもう実をつけ始めていたマイヅルソウや、ゴゼンタチバナの群生を見ることができました。

木陰に咲いていたゴゼンタチバナ。右下の白い花はマイヅルソウ(ボケてるけど)

7合目、第2見晴台を経て、長官山に到着しました。
6合目からは1時間強。

第2見晴台から。雲が晴れてきて良い感じ

長官山→9合目

長官山の標高は1218m。北麓野営場の標高が220mなので、山頂までの標高差的にはおよそ3分の2を登ったことになります。

長官山から利尻富士山頂を望む。

長官山から利尻山避難小屋までは、やや下り基調の尾根道。
稜線からの景色も良く足取りが軽くなります。

ハイマツと稜線
赤い屋根が避難小屋。緑の中によく映えます

避難小屋を過ぎたあたりから道はまた登りに転じますが、ほどなくして9合目に到着。
長官山からは30分強と、ここは思った以上にあっさりでした。

9合目。右上のピークは山頂ではありません

9合目→山頂

長官山での休憩からさほど時間は経っていませんが、山頂までの標高差はまだ300mあり、この先休憩ポイントもなさそうなので、9合目で一息入れました。
同じ考えの人が多いようで、休憩中の登山者が自分以外にも4~5人ほど。
自然と話に花が咲きます。

9合目からの展望。標高1500m弱とは思えない景色

この先の傾斜がものすごく急なことや、山頂にあるローソク岩のことなどいろいろ教えてくださる方がいたので、「2回目ですか?」と聞いたら「YouTubeで予習した」とのこと。そういう使い方もあるんですね。

ここからが正念場!

道の険しさを予告する道標を横目に、山頂へ向けて歩き出します。
ここまでの道とは雰囲気が変わり、足元に石や岩が増えてきました。
傾斜もきつくなりますが、ここから山頂までは高山植物の種類がぐっと増えます。

ミヤマアズマギク?
薄日に照らされるエゾハクサンイチゲ

登り進めるにつれて雲が濃くなり、ときおり強風が吹くように。
肌寒くなってきたので上に1枚重ね着しました。
(下山後に他の登山者から聞いた話では、山頂に傘雲がかかっているときは強風なのだとか)

リシリゲンゲ?リシリオウギ?

地図上では9合目から山頂まで近いように見えるものの、実際には歩けども歩けどもなかなか着きません。(平面上の距離なら長官山→9合目>9合目→山頂ですが、標高差が…。)
途中、沓形コースと合流した後も、相変わらず急坂が続きます。
疲労を感じながらも黙々と登ると、視界の先に人工物が…

山頂の神社。「利尻山」の板は留まっていないので持ち上げられます

ついに山頂に到着。
しんどさからものすごく長い時間のように感じていましたが、実際には9合目から40分ほどでした。

山頂からの展望とローソク岩

山頂では、先客の方や9合目で出会った方々とまたお話をすることができました。
「これで百名山は残りあと1つです」「どこですか?」
「幌尻岳が残ってて」「私もです。あとはトムラウシが」
「やっぱり北海道は最後になりますよね」・・・
皆さん上級者ですね。ちなみに私は、北海道の百名山は大雪山と十勝岳しか登ったことがありません。
「この先にローソク岩があるはずなんだけどねぇ…」
とつぶやいたおじさんの目線の先は真っ白。

ローソク岩があるのは画面左上のあたり

とはいえ、このときの時刻はまだ朝8時半。
急ぐこともないので、少し山頂でゆっくりすることにしました。
すると・・・

姿を現したローソク岩。左下は雪渓が残っていて橋のように見える

あっ!!と誰かの声がしたかと思うと、時折薄くなるガスの中に、ローソク岩の姿が見え隠れしていました。
山頂にいた人たちは、みな夢中でシャッターを切ります。
そして、次第にガスが晴れ、その姿をはっきりと見ることができるようになりました。

何だか日本離れした光景です。ガスが晴れた瞬間は歓声が上がりました

まさかこんな絶景を見ることができるとは。
さらに、沓形方面の山並みも望むことができました。

山頂から沓形方面。火山らしい山肌

下山&高山植物

徐々に人が増えてきたので、名残惜しいものの下山開始。
時間はたっぷりあるので、高山植物を楽しみながらもと来た道を戻ります。

山頂付近に咲いていたイワウメ
ハクサンチドリ。山頂~9合目の間で

ツアー客や高校生の集団(たまたま地元の高校の登山の日と重なりました)とすれ違いながらの下山で全くペースは上がりませんが、花を見るには好都合でした。

固有種のボタンキンバイ。皆さん写真に残してました
キクバクワガタ?
チシマフウロ
固有種のリシリヒナゲシ。種をフェリーターミナルで売ってたけど下界で育つんでしょうか?

ツアーの一団とすれ違うさなかに、おばさんからスマホを手渡されました。
きょとんとしていると、画面を指し示し、「この花の名前わかる?」と聞かれたのが下の花。初めて見たのでわかりません。

ネットで調べてもはっきりしないけど多分チシマイワブキかな…

長官山あたりまで下りて来ると、日が高くなり汗ばんできました。
鴛泊の港も見え始め、だんだんと下界が近づいてきます。

岩の間から伸びていたハイオトギリ
マイヅルソウの群生。よく見ると面白い形の花
登山道から鴛泊港を望む。海が青い

ひたすら下って樹林帯に入ると、道も随分なだらかに。
甘露泉水を過ぎ、無事に北麓野営場に到着しました。

下の方ではマイヅルソウに実ができていました

北麓野営場→利尻富士温泉→鴛泊

市街地までは単調な林道歩きです。
利尻富士温泉には野営場から約40分で到着しました。
温泉で汗を流し、10分ほど歩いて鴛泊の市街地に帰着。
お疲れ様でした。

ちゃんと歩道があるので、車の往来を気にしなくて良いのはうれしいところ
入浴料は500円。茶色っぽい温泉でした

歩行時間

北麓野営場 4:25発
ポン山分岐 4:45
五合目   5:35(10分休憩)
六合目   5:58
長官山   6:55(10分休憩)
九合目   7:35(10分休憩)
山頂    8:25(50分滞在)
九合目   10:20(10分休憩)
長官山   10:55
七合目   11:30(10分休憩)
甘露泉水  12:25
北麓野営場 12:35(10分休憩)
利尻富士温泉13:20着

まとめ

ロングトレイルゆえ登り切れるか不安でしたが、絶景と高山植物を満喫することができました。咲き乱れる花々や登山道からの景色は、文字通り「雲上の楽園」でした。
簡単に行けるところではないけれど、この記事を書きながらまたいつか行きたいと思っている自分がいます。(でもその前に礼文島かな)


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