映画『鬼平犯科帳 血闘』


新たな鬼平犯科帳シーズン1の第2作は、「血闘」。

それも、映画で!。

火付盗賊改方長官長谷川平蔵と密偵おまさの強い結びつきを描いた一編で、「凶賊」の登場人物やエピソードもミックスして制作されていました。

小説の『鬼平犯科帳』は基本的に短編なので、映像化される際に複数の話をミックスして制作される事がよくあるが、今作もそう。

作品の出来は、見事の一語。

長谷川平蔵が父の家督を継ぐ以前に放蕩無頼の日々を過ごしていた長谷川銕三郎時代に出会った娘おまさは、盗賊の娘として生まれ、何時しか盗賊の引き込み女(盗賊が盗みを働く店にお手伝い等で入り込み、侵入の手引きをしたりする)となったが、銕三郎が父の家督を継ぎ火付盗賊改方長官・長谷川平蔵となった事を知り、平蔵の密偵となろうと役宅を訪れ・・・


そういうシーンで登場したおまさ役の中村ゆりさんは時代劇経験がほぼ無いそうだが、時代劇が似合う役者さんだと思った。

おまさ役ははまり役と言っていいくらい決まっていた。

今回の敵役、網切の甚五郎役の北村有起哉さんがまた憎たらしいったらありゃしない。

敵が悪ければ悪いほど主人公が引き立つという観点からすると、北村有起哉さんは最高の芝居をしてくださいました。
本当に憎たらしかった。

鷺原の九兵衛役の柄本明さんは、中村吉右衛門版第一&第五シリーズに続いての鬼平参加。
京都での時代劇の撮影が嬉しいとおっしゃる柄本さん、佇まいも良いし大熱演でした。

必殺シリーズの情報屋や『長七郎江戸日記』で里見浩太朗さん演じる松平長七郎の手助けをしてちょこまか動いていた火野正平さんの彦十、今回もいい味出しまくってましたね。

馬がほしい にはクスっとさせられました。


1984年に大川橋蔵版『銭形平次』が終了しテレビ時代劇が減少した後に1990年の秋にNHKと民放五大キー局全てで新作テレビ時代劇が毎日放送され時代劇ブームっぽい状態になった時、漫然と

もしかしたら、毎日時代劇がテレビで観られなくなる日が来るのでは?・・・

な予感がしていた。

時代劇が撮影出来る場所が減り、時代劇が演じられる役者さんが減り、費用もかかる

てな話を見聞きしたのもあってそう思ったのだが、悪い予感は当たってしまった。

時代劇の制作環境が悪化しまくる中、時代劇の灯を絶やしてはならぬとばかりに時代劇専門チャンネルがオリジナル時代劇の制作に乗り出し、年一作ペースからいつしか複数作制作するまでになり、遂に新作の鬼平犯科帳制作にこぎ着けたのは嬉しい限り。

ファンの期待も高く見る目も厳しくなるであろう『鬼平犯科帳』。

1月に放送された「本所・桜屋敷」の出来が良かったので、「血闘」の期待値は上がったと思う。

その期待には見事に応えた出来栄えだった。

時代劇が作り難い時代にこの力作を世に送り出した事に感謝したい。


感謝するがゆえに、憎まれ口を少し。

パンフレットにプロデューサーさんのインタビューに記載があったが、SEASON2の制作話数には不満がある。

諸事情あるのはなんとなく理解出来るけれど、もう少し話数は増やせないのだろうか。

プロデューサーさんも課題だと語っておられるので、いろいろ大変なのだろうけど。

この時代に時代劇を作り続けようとしてくださっているだけで有り難く思うべきかもしれないけど・・・。

時代劇の制作環境が少しでも良くなる事を願わずにはいられない。





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