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#480 公証人は出張してくれます

【 自己紹介 】

※いつも読んでくださっている方は【今日のトピック】まで読み飛ばしてください。

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【 今日のトピック:公証人の出張 】

今日は,「公証人の出張」についてお話したいと思います。

さて,そもそも「公証人」とは,というところから説明します。

「公証人」って,実はかなり歴史がある職業のようです。ちょっとインターネットで調べてみると,なんと,レオナルド・ダ・ヴィンチの父親も公証人だったようです。

あ,今思い出しましたが,↓の本を読んでいたら,そういった記述が出てきたような気がします。

(ちなみに,↑の本はめちゃくちゃにおもしろかったので,オススメです)

どうやら,中世イタリアでは,口約束を一切信用しない商人たちが,足しげく公証人のもとを訪れて,約束を書面化していたようです。

その頃から,「公証人」という職業はめちゃくちゃにメジャーだったようで,その歴史を経て,明治維新後日本にも持ち込まれ,「公証人」という公務員が生まれたようです。

↑のサイトに,わかりやすく書かれていたので,ご参照ください。

さて,公証人の歴史についてはこれくらいにして,弁護士の視点から日本の公証人を見てみましょう。

日本の公証人は,「公正証書」を作成しています。

(他にも,定款の認証とか,確定日付をつけたりとか,僕もよくわからない仕事もしています)

僕が携わったことがある「公正証書」は,「遺言公正証書」と「離婚公正証書」だけです。

あ,あと「事業用定期借地契約」もあります。

事業用定期借地とは,土地を必ず10年で返してもらうことができる借地契約です。

誰かに建物所有目的で土地を貸すと,普通は借地借家法が適用されて,その土地はほぼ返ってこなくなるのですが,事業用定期借地契約であれば,必ず10年で返ってきます。

この「事業用定期借地契約」は,必ず公正証書で作成しなければならない,と法律に書かれているので,事業用定期借地契約は,必ず公正証書で結ばれます。公正証書ではないなら,契約書の題名に「事業用定期借地契約」と銘打っても,土地は10年で返ってきません。

残念ながら(笑)

さて,脱線しまくっていますが,まあ,こういった「公正証書」を作るのが,公証人の主な仕事です。

そして,今日のテーマに関わってきますが,公証人が公正証書を作る「場所」は,原則として公証役場です。

「公証役場」は,日本全国津々浦々にあります↓

公証人が常駐して,公正証書の作成業務に携わっています。

だから,公正証書を作成したい場合は,公証役場まで行かなきゃいけません。

そもそも,「公正証書」を「作成」するということは,作成した後,「公正証書」という紙が出来上がります。

言うまでもありませんが(笑)。

現在では,まだ「電子公正証書」という制度はないので,「公正証書」を作成する場合は,必ず,紙(ペーパー)が出来上がります。

この紙媒体で作られる「公正証書」を保管するのも,大切な公証役場の役割なのですが,紙媒体を作成するのであれば,当然,紙そのものが必要ですし,その紙に文字を表すためのインクも必要です。

そういった紙やインクを準備し,「公正証書」を作成する場所こそ,「公証役場」なのです。

そのために,公証人は公証役場に常駐し,日々,紙とインクで公正証書を作成しています。

あの,一応言っておきますが,いちいち公証人が公正証書の文字をペンで書いているわけではありません(笑)。

パソコンで下書きして,それを公正証書の専用用紙にプリントアウトしています。

これが公正証書の「作成」です。

そして,プリントアウトされた公正証書の下書きに,最終的に公証人が署名押印すると,「公正証書」となります。

だから,公証人の仕事は,パソコンの画面に向かって,カタカタと公正証書の下書きを作り,それをプリントアウトした後,最終的に署名押印することです。

ただ,大切なのは,↑に書いた,「遺言公正証書」も「離婚公正証書」も「事業用定期借地契約」も,公証人「だけで」は作成しません。

必ず,当事者本人がいます。

公証人の仕事は,確かに,公正証書の作成なのですが,「公正証書」とは,当事者の考えをまとめたものです。

公証人は,あくまで,それに「お墨付き」を与えるだけです。

「当事者本人が,確かに,この内容でオーケーしました」という「お墨付き」を与えることこそ,「公証」であり,公証する権限がある人であるからこそ,「公証人」と呼ばれています。

だから,公証人は,当事者本人の考えを,正確に聞き取り,正確に文章化しなきゃいけません。

もし仮に,正確に文章化できていなければ,公正証書を作成する当日,公正証書が訂正されます。

「ここが違う」「あそこが違う」と,当事者本人は,公証人に指示していいんです。

訂正するよう言われた公証人は,当事者の指示通りに,下書きを訂正して,訂正後の下書きをプリントアウトします。

こういうの,公証役場でやらなきゃつとまらないですよね?

公正証書の下書きデータが入ったパソコンがあって,それをプリントアウトするプリンターがあって,そして,プリントアウトした紙に署名押印する机と朱肉があって・・・。

こういった設備がある場所じゃないと,公正証書作成はスムーズに進みません。

公正証書は,あくまで,当事者の考えを表さなきゃいけないので,当事者からの注文によって下書きを訂正しなきゃいけない可能性があります。

公証人も,事前に内容は聞いて,下書きを用意しておくんですが,いざ,当事者を交えて公正証書を作成する際,どこにどんな訂正の注文が入るかわかりません。

で,注文が入ったら,それに必ず応えなきゃいけない。

注文に応えてくれない公証人なんて,ゼッタイにダメです。

当事者からの訂正の注文に応えず,公証人が作ったとおりにしか公正証書を作れないなら,「公正証書」の権威は地に落ちます。

公証人が,当事者の注文どおり,正確に文章化するという信頼があるからこそ,公正証書は権威を維持できているのです。

そうすると,公正証書は公証役場で作成したほうがよさそうなので,実際に,法律上も,公証役場で作成することが原則となっています。

公証人は,公正証書で職務を行わなきゃいけない,と「公証人法」という法律に書かれていて,公証人は,公証役場から出ちゃいけないようにも思えます。

ただ,「出ちゃいけない」のではなく,事案によっては出ていいよ,とも公証人法に書かれています。

そう,公証人は,公証役場の外に出て公正証書を作成していいですし,実際に,公証役場の外で,公証人は公正証書を作成しています。

よくあるのが,遺言公正証書です。

そもそも,遺言を残そうとしているということは,本人が,少なからず死を意識しています。

年齢を重ねて漫然と死を意識する場合もありますし,もっと具体的に,死が目前に迫っているケースもあります。

末期がんによって余命数ヶ月と宣告された,というのも「死が目前に迫っている」と言えるでしょうけど,数ヶ月もあれば,公証役場に言って遺言公正証書を残すこともできます。

ただ,もっともっと死が目前に迫っているケースもあります。

例えば,意識ははっきりしているけれども,後数日の命であるとか,そういったこともあります。

こういう場合に,公証役場へ行っているヒマがないので,公証人に病院まで来てもらう,ということができます。

他にも,本人が病気や加齢によって身動きがとれないので,施設や自宅まで公証人に来てもらうこともあります。

もちろん,そのぶん公正証書の作成手数料は増額されますし,公証人に日当を支払う必要もあります。

とはいえ,公正証書で遺言を残しておけば,あとで遺言の効力が争われるリスクが減るので,可能であれば,遺言は公正証書で作成したほうがいいです。

だから,手数料が増額されても,日当を支払わされても,公正証書で遺言を残す意味はあります。

しかし,当たり前ですが,本人の意識がはっきりしていなかったり,認知症が進んで物事が理解できなくなったりしていたら,遺言は作れません。

【 まとめ 】

公正証書は,原則として,公証役場まで行って作成する必要があります。

ただ,当事者本人が病気や加齢によって身動きがとれない場合,公証人に来てもらうことも可能です。

公証役場に行けないから,という理由で公正証書(特に遺言公正証書)を諦めるのではなく,公証人に来てもらうという選択肢があることを頭に入れておくといいでしょう。

それではまた明日!・・・↓

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