元恋人と久々に会った。

猫かぶりを捨ててからはものすごく気が楽で、悪口を言い合いながら三軒はしごした。最後に行ったビアンバーはわたしたちが付き合うきっかけになった場所で、少しぶりのお姉さんたちと楽しくお話をした。

「やっぱり好きだよ」
「手放したくないと思った」
「一軒めで話してからずっと言いたくて」

元鞘はしない派だと会って数分で言われて、思わずわたしもそうだと言い返した。お互いお前なんかとは二度と付き合わないとかそんな軽口を叩きあった数時間前とは比べ物にならないくらい、甘かった。わたしの飲んでいたファジーネーブルがただの水に感じるくらい。

一軒めで決めてから、お酒に頼って告白をするつもりだったらしい。

「やっぱり好きになれない」

と、そう言って二週間であっさりとわたしを捨てて言ったのが嘘みたいな台詞をたくさん並べられてキスを迫られた。虚しくなった。酔いが覚めてから話を聞くと言って受け流した。経歴を知っている他のお姉さまが守ってくれて、ただただ薄い反応をし続けた。

12杯めの鏡月。ロック。

お酒を飲んで倒れる姿を見るのは二度めで、もう勘弁してくれと思った。全身の力が抜けてしまって、すぐに床で寝て。何度も吐いて、その中には血が混じっていた。青ざめたわたしが震えて泣いているのをお姉さまたちが慰めてくれて、さらに泣いた。わたしに迷惑をかけるのは良いけれど、お店の人たちに迷惑はかけて欲しくなかった。

惨めな思いをしながらホテルに運んだ。吐いている音を聞きながらタバコを吸う気にもなれず、ひたすらあの子が落ち着くのを待った。付き合おう、と改めて言われて、何故だか、もう一度一緒にいてもいいかなと思った。

空が明るくなって、ホテルを出た。未だに体調が悪いのに帰りたくないとごねるので、うちに連れて帰ることにした。

家に着いたのが17時。

それからわたしは疲れて眠ってしまって、起きたら21時になっていた。どうでもいい話をしていたら突然また気分が悪くなったらしく、あの子は手足が痺れると言って過呼吸になったまま倒れ込んでしまった。救急車を呼んで、大騒ぎになって、わたしは不安でまた泣いた。結果はただの過換気症候群による痺れで、なんともなかった。低血糖で震えるあの子の手を離して、朝の3時に見送って帰宅した。

22時になって突然また不安だと言い出したあの子の病院に同行するため、夜の電車に乗った。
貸切の電車に揺られて、乗り継いだ。1時間がたってようやく最寄りについた。

タクシーのおじさんはとても優しく話しかけてくれた。雨はひどくて、お礼を言って車を降りた。308号室。部屋の前まで着いたら、あの子と連絡が取れなくなった。

たくさん、たくさん考えた。
終電がもうないこと、近くにお店もないこと、階段で眠るしかないこと。全て酔った勢いで、朝になったあの子は何も覚えていなかったこと。

わたしはずっと優しさを履き違えた都合の良い奴のままで、こうして何度も何度も適当に扱われて、きたねえ廊下で虫にたかられて腐っていくんだね。

愛されたかった。ずっと……ずーっと。

やっぱり別れよう。明るくなったら始発で帰ろう。夏は短かったし、すごく熱かったね。

さようなら。


#恋愛 #日記 #おやすみ

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