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旅に出るなら

…カメラには大きく分けて「二通り」の種類があると思う。
それは
「旅に出たくなるカメラ」
それと
「旅に出て弱らないカメラ」
…の二種類だ。

などと書くと「いやいや無茶だろオメー!」という意見が出る。
そりゃ確かにそうだが、私のような「旅とカメラはセット」な人間は、カメラの本質を旅から判断せざるを得ない。

「旅に出て弱らないカメラ」というのは、つまり「オールマイティーなカメラ」だ。
具体的には「ネオ一眼」がそうなる。
真四角の大きめのコンデジも良いが、あれはどうしても望遠域が甘い。

例えば水鳥がいる夕景を撮りたいとする。
湖面に赤く光が差して、鳥はシルエットだ。
こんなとき、ネオ一眼はアップで鳥を捉えることが出来る。
グリップが大きなボディは、安定感が抜群だ。
悪条件下でも、ほぼ期待した結果が得られる。
デジイチの性能には及ばないが、それでも他のコンデジよりは良い。

万有さという点では、カメラ全体を通して王者と言って良い。
まあ、性能的には…だが…それでもチョー便利ではある。

語感は似てるがまるで意味が異なるのが「旅に出たくなるカメラ」だ。

ネオイチは便利なツールではあるが、旅に出てあまり持ち歩きたくない代物でもある。
それはデカイから。

旅は身軽が良い。
荷物が重かったせいで辛かった旅というのを経験すると、それがよくわかる。
体調が良好な時は気にならないカメラも、撮影をする気になれない時には、ただの重しにしかならない。
そんなときのカメラの存在の恨めしさと言ったら!!。

だから、旅に出る気にさせるカメラは、小さい方がいい。
しかし同時に手に馴染み、頑丈で、安心感が持てるものがいい。

見出しのカメラはキヤノンの古いコンデジで「Powershot G12」というカメラだ。
過去に一度手放し、その後もずっと後悔して、今回再び購入した。

アナログのダイヤル操作が多いこと、ほどほどに小さいこと、その反面、マグネシウムのボディーがヒヤリと冷たく、機械感に溢れていることなどがお気に入りだ。
そして望遠域でかなり寄れるところも気に入っている。

旅に持参するツールは、まずは「気が合う」ことが大事だ。
これは人も機械も変わらない。
首から提げても重くなく、レンズがデバってもいないので、他人にぶつけることも無い。
電源を切るとレンズが引っ込みつつ、バリアが閉まるカメラを作った日本人はエライ!!。

見ているだけで「さて、次はどこに一緒に行こうか」と想像出来るカメラは、実はそう多くない。
フイルム時代含め、そういったカメラは少なく、おそらく自分にとってのトップは、このG12だと思う。

実は今、カメラの断捨離を行っている。
思い起こせば、このシチュではこのカメラ、という「脳内パズル」を長くやってきていた気がしていた。
最初は50ミリの標準レンズとボディで撮って満足していたものが、技術が向上するにつれ、いろいろと垢がついてきてしまったらしい。

…親父が亡くなり、傷心旅行というわけでも無いのだが、気持ちの整理をつけたくて、山梨県の観光地に行ったときの事。
自分はNikonのF801に超広角レンズと、それにAPSのコンパクトカメラを持参していた。
撮影を終わって車に戻ろうかというとき、男性二人組に写真を撮って欲しいと頼まれた。

手渡されたカメラは、年期が入りすぎた感じのCanonの一眼で、これで果たしてピントが合うのか?という代物だった。
おそるおそるシャッターを切り、カメラを返したが、その二人の男性の笑顔が胸に張り付いたまま剥がれない。

「撮れたかどうかじゃ無いんだよな」
この旅を思い出す度、自分の生き方を問い直したくなる。
あのガタガタのCanonは、彼らの傍に今でもあるのだろうか?。
私は自分のG12を、じっくりと眺めてみる。
コイツもなかなか、いい線行ってるのじゃないか?と、ひとり笑ってみたりする。





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