見出し画像

ミントグリーンとベビーピンクの魔法

昨日、久しぶりに、

『ひと皿の小説案内』主人公たちが食べた50の食事

のページをめくっていた。

どんな名作にもつきものの、印象深い食事シーンを作り、写真にしてみた本。



グレート・ギャツビー、不思議の国のアリス、ハイジ、白鯨、エマ・・・。
食事のイメージが、自分の想像と違っても、それはまた楽しい。

その中に、
「ジャムつきパンとフランシス」
があったのを見逃していた。

子どもの頃、フランシスのシリーズが好きで、繰り返し読んでもらったものだ。
絵本は、至光社の綺麗な絵本と、お気に入りのものだけ残してあって、久しぶりに箱から取り出してみると、当然ともいえるが、年季が入りすぎていて驚いた。

画像1


何でも迷ったら捨ててしまうタイプなのに、気に入ると捨てられない性分だ。
そして、「おやすみなさいフランシス」より、「ジャムつきパンとフランシス」が好きなのは、このミントグリーンとベビーピンクのせいだ。
この組み合わせが、小さい時から好きなのだ。

画像2


フランシスの絵は同じように見えるのに、実は、「おやすみなさいフランシス」は、挿絵をガース・ウイリアムズが描いていて、「ジャムつきパンとフランシス」は、ラッセル・ホバーンの奥さんである、リリアン・ホバーンの手によるものだ。
なるほど!
本の中の挿絵も、この色合いで、大好きだった。


「えーっと、ちょっと まってね。みてみるわ。」
フランシスは、きれいな かみレースの しきものを、
つくえのうえに ひろげて、そのうえに、ちいさなびんに
はいった スミレを おきました。それから、しきもののうえに、
おべんとうを ならべました。


画像4


このページが好きだったのだ。
かみレースのしきものに、ちいさなびんにはいったスミレをおく、
このセンスが。

お弁当のための準備が、ここからはじまるなんて!

そうしたら、ちょうど、このお弁当を想像した写真が、
『ひと皿の小説案内』に載っていたのだ。

画像3

魔法瓶にトマトのクリームスープ。
白パンに伊勢海老のサラダを挟んだサンドイッチ。
セロリ、人参、黒いオリーブ。
セロリにかけるお塩。
スモモがふたつと、ちいちゃいかごに入ったサクランボ。
チョコレートのかかったバニラプリン。
それを食べるスプーン。

なんて可愛いお弁当。
写真では、プリンにチョコスプレーがかかっている。
そして、ちゃんとスミレのお花が飾られたテーブル。

ホバーンの4人の子供の日常生活に着想を得たという作品たち。
「フランシスのいえで」
「フランシスとたんじょうび」
「フランシスのおともだち」などの、フランシスシリーズ。


松岡享子さんの訳が上品なのもいい。
フランシスのおかあさんの言葉が、当時の感覚なのが。

「ほんとに そうですわ。あさ、たまごを たべると
げんきがでますもの。」

なんて、言う。
おとうさんが朝食をほめると、
「ほめてくださって、どうもありがとう。」なんて。

そして、この本すべてが、ペパーミントグリーン、ベビーピンクと、グレーのタッチで完結している。
この3色で、フランシスの世界が出来上がっている。

そして、何年経っても忘れていないスミレは、よくみると、部分的にグリーンとピンクがうまく掛け合わされて、そんな感じに見えるように工夫されている。



この記事が参加している募集

書くこと、描くことを続けていきたいと思います。