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海色の万年筆


デルタ カプリ マリーナ ピッコロという名前の万年筆。
ある日、青い海の色の万年筆に一目惚れした。

眺めているだけで幸せになれる。
白く漂う波が見えるような気がする万年筆。
遠い空の下の美しい海に想いを馳せることができる筆記具で、知らない人に手紙を書いてみたくなる。
私にとっては宝石のような筆記具だ。

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イタリア・カプリ島の港から望む青を再現したという。
キャップトップに刻まれているのは、島のシンボルの時計塔のイメージだそうだ。

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なんて綺麗な青だろう。そして、その青は銀色に合う。
波のレリーフが一周していて、キラキラと光って見えた。

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万年筆を集めているわけでも、高級品が好きなわけでもない。
長い間、手紙は祖父の形見の古いシェーファーで書いていて、手になじんだ万年筆は日に日に愛情を感じさせる。
私の持ち方の癖を、ペン先も覚えてくれている。
なんの不足もない。 
インクはブルーブラックにこだわっていたくらいのものだった。

ブルーでもなく、ブラックでもないブルーブラックは、私にとって気持ちを落ち着かせてくれる色だ。
深い海のようなブルーブラック。
相手の方の表情を思い浮かべながら、少しずつ書く作業が好きだ。
手紙は、必ず万年筆がいいと思っている。

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そこへ、衝撃的に現れたのがマリーナ ピッコロだった。
大袈裟だけれど、浪漫と運命的なものを感じた。

カプリ島には、青の洞窟がある。
美しいと言われるその場所を、いつか訪ねてみたい。

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マリーナ ピッコロは、とても厳重に箱詰めされている。
なかなか万年筆に辿り着けない印象。
過剰とも取れるパッケージの様子から、
筆記具というよりは、筆記具の世界観を表現したいようにみえる。

使っても幸せだけれど、どちらかというと眺めていたい。
そんな筆記具には、なかなかお目にかかれないと思っている。
インクは、やはりブルーブラックで。

手に載せて、目を閉じて一息ついてから書き始める。
頭で考えたのではなくて、浮かんだことを文にして出したい。


アウロラ、モンテグラッパ、ビスコンティなどと共にイタリアを代表する万年筆メーカーであったデルタ社だが、残念なことに2018年2月をもって廃業してしまった。

ドルチェビータという美しいオレンジの万年筆にも惹かれていた。
その名前も空想の世界に連れて行ってくれる。
「甘い生活」。
フェデリコ・フェリーニの映画の題名だ。


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