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塞いだ耳に軽やかに寄り添ってくれる、 "近代フランス音楽" の世界

最近は職場環境の急な変化が引き金となり、
自分の苦手なことや切実な訴え、職場や通勤電車など「ごく普通の風景だけど、感覚過敏の人にとっては非常に辛い場所」で追い詰められてつらい気持ちばかりを綴ってしまいました。

聴覚過敏は感じ方の度合いなので
上司などの立場の人から理解を得にくいし、

普通?の人にとっては「我慢する対象ですらない」ような音にイライラしたり(私は人の声がとにかく苦手です)、人や情報量の多い場所へ行くだけで疲労感に押し潰されたり、音が原因で頭痛や耳の痛みを引き起こしたり、音に対して必要以上にイライラし体調まで崩す自分を「社会不適合でダメな存在」だと感じてしまったり……

正直、いいことがひとつもありません。
頭痛薬や耳栓がないとロクに生きていくこともできず、適応不能な環境が多くてつらいだけです。

あぁ〜、耳聞こえなくなりたいなぁ……
耳にONとOFFのスイッチがあればいいのに。

音が全く何もない場所で日々を過ごしたい。
会話したいなら文章があるじゃないか。

そんなことを思ってしまうくらいには、
聞こえることがつらいと感じる場面が多いです。



しかし、そんな私の耳を救い続け
どんな時にも寄り添ってくれた音楽があります。

1880〜1950年代頃の、フランスの音楽です。

白黒写真の時代、
新しい文明がメキメキと発達した時代、
大きな戦争があったけれども芸術が戦争に負けることなく生き続け、芸術が「暗い世の中を照らす希望」となっていた時代。


私は音楽だけでなく絵画も大好きですし、
(今とても旬の笠置シヅ子さんなど)昭和時代を彩ってきた歌謡曲も大好きですし、ロシア民謡や北欧の音楽、古きよきアメリカの文化も本当に大好きです。

ただ、近代フランスの音楽は私の中で特別で

ガラスや水のような「動きのある(太陽の光に反応し、自由に動く)」キラキラ感であったり、音楽なのに絵の具で描かれたかのような世界観 (作曲者によって油絵っぽかったり水彩画っぽかったり、はたまた白黒写真のようだったりする) 、雨水がつたう窓や青空を映した水たまりのような瑞々しさバラが香るような色っぽく優雅な音遣いなど……そういったものたちが小さくてお洒落な瓶や小物入れに詰め込まれているような、そんな愛おしさを感じるのです。

海というよりは水たまりや小川のような、
公園というよりはお洒落なマダムの庭のような、
お城というよりは小さくて可愛いおうちのような、
ガラクタが大切に飾られている趣味部屋のような、
ちょっとこぢんまりとした個人的な世界。

近代フランス音楽は1曲の長さもそんなに長くなく、オーケストラの中の楽器が全部いっぺんに鳴っている時間よりもソロや「楽器が数人でおしゃべりしていて、他の楽器は休んだり伴奏しながら見守っている」みたいな時間のほうが多く、
オーケストラではない重奏(小編成)の曲も多かったり、曲の終わり方も華やかな「ジャンッ!」よりは余韻を残して消えていく感じのほうが多かったり……(大きな音で終わる曲もあるけど、華やかというよりは「内面に溜め込んだエネルギーの爆発」もしくは「ごめん、ふざけまーす!!ウェイ!!」って感じw)



メンタルがやられていたり疲れたりすると
音楽を聴く気になれなかったりするのですが、

たまに思い出したように聴くと

「あっ、実家だ……お母さんがごはん用意してケーキも焼いて待ってくれてる、あ〜帰ってきたなぁ……」そんな気持ちになれたりします。


ちなみに北欧の音楽はもっと鋭くて冷たくて
フランス音楽が水なら北欧の音楽は氷(セリム・パルムグレンなど)、ロシア音楽はもっと原色みたいに鮮やかで強いけど少し暗めの色、そして地元(ロシア)独特のお祭り、かと思えば急に来る鬱モードみたいなイメージがあります。

↑セリム・パルムグレン作曲『粉雪』これはフィンランドの音楽です。あまりにも儚くて綺麗……


フランス音楽はギリシャ神話とかジャポニズムとか、なんかこう「いろんなところを自由に旅してきたからお土産見せてあげるね〜」みたいな?自由人の香りを感じつつ、でもやっぱり祖国のフランスを愛してる!みたいな雰囲気を感じます。

そういえばフランス音楽には(哀愁は感じつつ、)
鬱っぽさはそこまで感じないかも……??

あくまでも軽やかでオシャレできゅんとする、
なんか「フランスっぽい気品」に自然とか神話とか童心が絶妙にミックスされた感じのふわふわした世界観があるんですよね。



ピアノを始めたのが11歳という比較的遅めだった私が最初に心を奪われ、絶対に弾きたい……!!と思ったのがクロード・ドビュッシー (Claude Achille Debussy) の『アラベスク』でした。これは有名な曲なのでご存知のかたも多いと思います。

なので、ドビュッシーさんのあまり知られていない面白い曲を貼ってみます。楽器のセレクトが最高にすばらしい。

そして、ドビュッシーについて興味が湧いて
調べてみたら出会ってしまった……!!!

私が20年近く推し続け、この先も恐らく不変の推しNo.1であり続けるモーリス・ラヴェル (Joseph Maurice Ravel)!!!


いや、ほんとまじでラヴェルの曲すべてが好きすぎて全部貼りたいくらいだけど(基本的に涼やかで優しくて水彩画っぽいけど、わりと激烈なエネルギーを爆発させたりお茶目な遊びをしかけたりもする)、

ひとことだけ言わせて。「ボレロの人」って思われたくない🤦‍♀️🤦‍♀️

ラヴェルご本人も「ボレロは皮肉の気持ちでふざけて作った曲なのに、こんなに評価されてるの意味わかんない」って言ってたらしいもん!!!もっと素敵な曲いっぱいあるもん!!!!


どの曲を貼るか迷いましたが、私が世界一かわいいと思ってるピアニスト、イリーナ・メジューエワ様の演奏を紹介させていただきます……ちょっと長い曲で7分くらいあるけど、ジョルジュ・スーラの点描画みたいな色彩感や光、水の動きなどが繊細に感じられて大好きです。

ジョルジュ・スーラの絵はこんな感じ。大好き。




フランス音楽はすごく「音楽なのに絵画みたい!」と思うのですが、特にそれを感じる作曲家がいまして(日本ではあまり知名度が高くないのですが)、デオダ・ドゥ・セヴラック (Séverac, Déodat de) という、むちゃ親しみやすい雰囲気のおじさんがいます。

セヴラックさんの曲はなんというか……絵画っぽいとも思うし、車窓に揺られて景色を眺めているような気分を味わえて面白いんですよね。安野光雅さんの『旅の絵本』を眺めながら聴きたい。


親しみやすく自然豊かなセヴラックさんとは対照的に、ものすごくフランスらしい気高さや荘厳な雰囲気を感じる作曲家がガブリエル・フォーレ (Gabriel Urbain Fauré) です。

こちらの曲名はなんと『塔の中の姫君』
な、なんと麗しい〜〜っっ!!!バラの香りが漂ってきそうだ……フォーレさんは歌曲もすばらしい作品が多く、私が声楽をやりたくなったきっかけにもなりました。



同じくバラの香りを感じる作曲家、ジェルメーヌ・タイユフェール (Germaine Tailleferre) さん。女性のかたです。お名前の綴りがムズい……

彼女は「フランス6人組」というサロン仲間?のメンバーで、ほかのメンバーには映画『ローマの休日』の音楽を担当したジョルジュ・オーリックや、エデット・ピアフと仲良しだったフランシス・プーランクなど面白い人がたくさんいます。(そして6人組は詩人ジャン・コクトーとも繋がりが深かった。)

ちなみにタイユフェールとプーランクは文通友達でもあり、お互いのことを「メメーヌ」「ププル」って呼びあってたらしいよ!!可愛すぎるだろ!!!!

タイユフェールさんが作るピアノ曲には、独特な瑞々しさと花のような香り、そしてなんともいえない色気があります。ちょうど私の世代と100歳違いなので、20代の頃に「この曲わたしと同じくらいの年の女子が作ったんだ……ほえぇ……」めっちゃ感動してました笑  (↑ここに貼った曲は花の香りというよりはちょっとテクノで近未来的なPerfumeの音楽っぽいですね……??他の作品はわりと香りが揺蕩う雰囲気の曲が多いです。)



最後に、メメーヌの文通相手ププル……
フランシス・プーランク (Francis Jean Marcel Poulenc) のご紹介です。

この人、ぜったい怪物級に手が大きかったと思う。弾きたいなぁと思う曲があって楽譜を取り寄せてみたら手の小さな私には届かない音のオンパレードなんですわ。1オクターブ超えたら100%無理なんよ。

プーランクさんの作風はすごく予想を裏切ってくる面白さや音がふざけて遊んでるような感じ、かと思えば重厚にシリアスな曲があったり……全体的に秋っぽいというのが私の勝手なイメージ。(文化祭のワクワク感も秋特有の切なさもある)

プーランクさんは面白い組み合わせの楽器で重奏を作るのが得意で、楽器が持つ音色の特徴や面白さをめちゃくちゃ引き出してるな〜!!とニヤニヤしてしまいます笑   遊び心がすごい。

この曲はたぶん、『のだめカンタービレ』フランス編に出てくる "ヤキトリオ" って名前のトリオが演奏してた曲のはず。



今日は私が唯一オタクとして語れるオタ話に
お付き合いくださり、ありがとうございます。

耳が聞こえすぎて煩わしいことだらけの毎日ですが、そんな私の耳をも癒す魅惑のフランス音楽、もし「私も大好きなの!!!」って方とお友達になれたら嬉しいですし、新たに沼にハマってくれる方がひとりでもいたら大ハッピーでございます♪♪

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