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2022 大相撲名古屋場所観戦記

観戦したのは、四日目である。
会場は、ドルフィンズアリーナ。
愛知県体育館といったのは、いまはむかし。

会場に至るまでの道端に林立する、関取の力士幟。ほぼ番付順に並んでいる。贈呈者は、個人だったり会社だったり。色とりどりの幟旗をながめながら歩く。

コロナ前は、会場前に、入待ちの人だかりがあった。その間を、お気に入りの浴衣に身を包んだ関取が、鬢付け油の匂いをふりまきながら、さっそうと歩いたものだ。関取のもうひとつの花道だった。
コロナ禍のいま、力士たちは、人目につかないどこかで、ひっそりと車を降り、人知れず入場していく。

会場入口に近づいていくと、女声のアナウンスが聞こえてくる。新型コロナ感染防止の呼びかけだ。館内ではマスク着用、応援は声を出さず拍手で、飲食は短時間で、マスクを外したら会話はしないで、などなど・・・・

入場したときは、幕下最後の相撲。結びの一番まで三時間余ある。テーブル付二人ます席だったが、正座すれば足がしびれる。脚を伸ばして座れば背中がつらい。あれこれ試してみたけれど、膝を抱いておしりをつける体操座りがいちばん楽だった。
十両土俵入りの間に、売店に行った。公式グッズ売り場を目指す。毛布のように大きい照ノ富士のバスタオルが欲しかったのに、バスタオルがない。代わりにスポーツタオルを買う。レジに親方が三人座っていた。残念ながら誰かわからず。現役のときの四股名の名札をつけてほしいよ。

十両の取組は、淡々と過ぎる。観客の拍手が大きいなと思うと、その人は、愛知県や三重県の出身だ。郷土力士を応援するのは、相撲観戦の作法である。応援の拍手をたくさんもらったからといって、勝てるものではないらしい。郷土力士の勝率は、高くなかった。

横綱土俵入り。見られるのは、しあわせというものだ。横綱がいるということが、ありがたい。照ノ富士の両膝サポーターは、痛々しいが、四股は力強かった。四股踏む音が、二階席まで、どすっどすっ、と聞こえてきた。
通常ならば、よいしょっと掛け声が入るのだが、コロナだから拍手だけ。思いっきり手を叩いた。

お客さんの入りは、あまりよくない。マス席の中段や椅子席に空席が目立つ。これなら、当日に一人でふらっと来ても、見られそう。土日は無理だと思うけど。

勝負審判交代のアナウンス。「二所ノ関元稀勢の里」の呼び上げに、館内大拍手。

幕内の土俵は、やはり華やかだ。力士たちの動きも華麗に見える。懸賞旗がまわるのも、見ていて楽しい。
白地に赤い字で「モデルナ」の懸賞旗が回ったときは、びっくりした。館内放送の説明は、「メッセンジャーRNAのモデルナ」だった。合計3本出ていたと思う。

印象に残った取組三番を記す。
正代vs豊昇龍。正代が力なく負けるだろうと予想していたのに、がんばった。豊昇龍が土俵に這う前に、正代の足が出たような気がしたが、物言いはつかず。豊昇龍は、土俵に未練を残しながら去って行った。不満が態度に出るからな、この人は。先場所も微妙だったから、気持ちはわかるけど。

貴景勝vs逸ノ城。勝敗は明らかなのに、なぜか物言い。館内ざわめく。土俵下で貴景勝が、髷をびんびんさわっている。髷をつかまれたというアピールらしい。勝敗くつがえらず。これは当然。
それにしても逸ノ城。その気になれば横綱にだってなれそうなのに、いつまでたっても平幕をうろうろしている。野心がないのか、生涯賃金の計算でもして番付を調整しているのか。よくわからない人だ。

照ノ富士vs琴ノ若。横綱が立つと、土俵が狭く見える。横綱の圧勝だった。とったりから肘をきめて小手投げ。瞬殺。横綱の土俵は、いつもハラハラして見ている。強いことはわかっているけど、ひざのサポーターが痛々しいから。今日も無事に終わってよかった。

弓取り式の後、お楽しみ抽選があった。正面、東、西、向こう正面に分けて、親方が、チケット座席番号を引く。当たると、人気力士の何かがもらえるといっていた。当たらなかったから、何かは知らない。帰りの客足を分散させて、人の密集を防ごうということだ。おかげで出口までスムーズに行けた。

高く組まれた櫓を見上げながら、帰路につく。櫓の上から、はね太鼓の音は聞こえない。これもコロナのせいかしら。それとも最近、地震が多いから? 振り子のように、グラングラン揺れたらあぶないものね。


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