緋実

鏡を見ながらバックするのが苦手で、気がつけば、もう40年もペーパードライバー。どこへ行…

緋実

鏡を見ながらバックするのが苦手で、気がつけば、もう40年もペーパードライバー。どこへ行くにも、てくてく歩き、カタコト電車に乗って・・・

最近の記事

くるくる電車旅〈覇王のうぶ声〉

織田信長の生誕地には諸説ある。 那古野城説。 古渡城説。 近年有力とされているのが、勝幡城説。 名鉄勝幡駅の駅前広場に、あかちゃん信長の銅像があると、津島に住む友人から聞いた。 降水確率90%の日曜日、思い立って、あかちゃん信長に会いに行った。 雨が降り出さなかったら、勝幡城址まで歩きたいとも思った。 午前10時ごろ、雨傘を持って家を出た。 天気予報アプリでは、20分後に雨が降り出します、なんていっている。 空を見上げれば、意外に明るい。 薄日すらさしている。 だい

    • くるくる電車旅〈将軍たちの身長〉

      開花のおくれた桜が満開になった日曜日、姉をさそって、電車を乗り継ぐ旅に出た。 行く先は、三河大樹寺。 「ついてくわ。よろしくね」 姉は、にっこり微笑んだ。 彼女は、ひとりで電車などに乗ったことのない深窓の人。 名鉄東岡崎駅から名鉄バスに乗り、大樹寺で降りた。 バス停の名前は大樹寺だが、まわりは住宅ばかり。寺院はあたりに見当たらない。 姉は、バッグから地図を取り出そうとする。 後方から、黄色のトレーナーを着た女の人が、歩いてきた。 わたしは、その人をよびとめた。 道をた

      • 美濃路〈いざ出陣〉

        「桜を見に行く」と、家人に告げて家を出た。 桜といえば、城である。 城には桜がよく似合う。 城といえば、清洲城である。 なぜ清洲城かといえば、織田信長が、桶狭間に出陣していった城だから。 名鉄新清洲駅から、五条川の堤にのぼり、川に沿って、ぶらぶらてくてく。 やがて、城の天主閣が見えてくる。 しかし、信長が居城にしていた城は、そこじゃない。 あれは、市のシンボル。 観光用に造られた歴史資料館のようなものだ。 信長が弘治元年(1555)に、陰謀をめぐらしてのっとった清洲

        • 美濃路〈像が歩いた道〉

          県立図書館に県内の観光案内の資料を集めたコーナーがある。そこで、なにげなく手にとった一枚の歴史民俗資料館のリーフレット。 その表紙の絵に目を奪われた。 江戸時代の役人らしき三人が、一頭の象の綱を引いている。象を連れて旅をしているらしい。 記憶にある光景だと思った。 見たわけではないが、ずいぶん前に読んだことがある。 杉本苑子の「ああ三百七十里」という小説だ。 1729年。徳川吉宗が、インドから象を輸入した。つがいで輸入したのだが、雌は船旅の間に死んでしまい、上陸したのは

        くるくる電車旅〈覇王のうぶ声〉

          くるくる電車旅〈槐多に惹かれて〉

          村山槐多の画を見に行った。 碧南市の藤井達吉美術館。『顕神の夢』展。 村山槐多の個展というわけではないが、槐多の画が見られるなら、一点でもかまわない。 詩も小説も書いたこの夭折の画家に、わたしは強く惹かれている。 もちろん碧南まで、大好きな電車に乗って行く。 今回は、水彩画を趣味とする夫をさそった。 電車には乗り慣れているわたし。 あなたは、安心してついていらっしゃい。 金山から名鉄名古屋本線の特急に乗り、知立で三河線に乗り換える。そこからは、各駅停車の普通電車だ。海は見

          くるくる電車旅〈槐多に惹かれて〉

          くるくる電車旅〈行きすぎて遠い道〉

          今日は、節分。近所のお寺では、元横綱が来て、豆をまいてくれるという。現役時代は大好きだった横綱だけど、今日は、そこへは行かない。そのお寺は、電車に乗らなくても、歩いて数分で行けてしまうから。わたしは、電車に乗りたいのだ。 今日行きたいのは、美和歴史民俗資料館。名古屋市西部に隣接したあま市にある。 名鉄津島線木田駅まで、地下鉄、名鉄名古屋本線と二回乗り換えた。乗車していた時間は、合わせて30分にも満たないが、この乗り換えが楽しいのだ。降りたホームに乗り継ぎの電車が止まっている

          くるくる電車旅〈行きすぎて遠い道〉

          くるくる電車旅〈ひかりの橋〉

          港から初日の出を見よう!と、思い立ったのは、年末の25日だったか26日だったか。 いままでは、自宅近くの見晴らしのよいどこかから見ていた。 東西に流れる川の橋の上からだったり、銀河鉄道の異名をもつ高架鉄道の駅からだったり。 どこに行っても、大勢の人が集まっていた。 見知らぬたくさんの人々と、はつひのよろこびを共有するのは、なぜか感動的だった。 その感動を、こんどは港で!と思ったのだ。 港へ行くには地下鉄に乗らなければならない。乗り換えも必要だ。いったい朝何時に起きればいい

          くるくる電車旅〈ひかりの橋〉

          わたしの庭<リョウちゃん椿>

          わたしの庭の椿の木。種から芽生えて、10年ぐらいになるのだろうか。木の高さは、130センチほど。 山茶花の横に種を埋めただけで、なんの手入れもしていないが、芽がでると、生長が楽しみになった。木の高さが七、八十センチになったころ、初めてひとつだけ花を咲かせた。 今年は、四つ、つぼみがついた。 この椿の種を拾った日のことを、わたしは、いまでもおぼえている。 そのころ、自閉症のあるリョウちゃんを、自宅から某授産所に送り届けるのが、社会福祉協議会に身を置くわたしの任務だった。リョ

          わたしの庭<リョウちゃん椿>

          くるくる電車旅<柳に蛙>

          小春日和に誘われて、春日井市の小野道風記念館を訪ねました。電車旅とはタイトル倒れで、利用したのは、ゆとりーとライン。高架の専用道路を市バスが走ります。乗り降りするところを、バス停ではなく駅と呼ぶのだから、電車みたいでしょ。 大曽根駅から川村駅まで。 バスは、東区から守山区へ、高架の専用レーンをひた走ります。信号はなく、見晴らしがよく、まるで王様の道みたい。便利で快適なので、利用客多し。遠くには、雪化粧した山まで見えました。 車窓の景色を楽しんでいると、ほどなく川村駅に到着

          くるくる電車旅<柳に蛙>

          ブックサンタの季節

          今日は、本屋さんに行きました。 子どもの本が、たくさん置いてあるお店。 ブックサンタのことを知ったのは、昨年の12月のことでした。 『あなたが寄付した本を、厳しい境遇にある子どもたちに、サンタさんが届けます』 そんな広告を、どこかで見たのです。 新聞か、だれかのブログか、はたまたテレビのニュース番組か。 その全てでかもしれません。 見知らぬどこかの子に、本をプレゼントできる! これだっと、わたしは思ったのです。 さっそく本屋さんに走ったわたし、大判の絵本を二冊選んで

          ブックサンタの季節

          くるくる電車旅<詩人に会いに>

          清須市のはるひ美術館で、谷川俊太郎の展覧会が開かれているときいたので、見に行くことにした。 すぐとなりの町にあるのに、行ったことのない美術館。ホームページを見ると、JR清洲駅から徒歩20分とある。歩けない距離ではないなと思った。 10月も終わりのさわやかな秋晴れの日、 駅からの道順をだいたい頭に入れ、いざ出陣!と家を出た。 名古屋駅に着くと、ホームでは岐阜行きの普通電車がすでに来て、発車を待っていた。 名古屋駅から清州駅まで、わずか二駅。 乗っていた時間は、10分もあったか

          くるくる電車旅<詩人に会いに>

          わたしの庭〈猫め!〉

          わたしの庭には、いろいろな猫が遊びにくる。 最近くるようになったのは、胸のところだけが白い黒猫だ。ふさふさのしっぼにくりっとした茶色い目。飼い猫なのだろう、赤い首輪がよく似合う。花壇を掘り返してうんちをしたり、玄関の前にねそべったり、わたしの庭を自分の縄張りにしてしまったらしい。人がそばによっても逃げないのは、チヤホヤされるのになれているからだろう。かわいいくせに意地悪で、ほかの猫が来ると、背中を山なりにして、フーッと威嚇して追い払ってしまう。 「あの子は、自分がかわいいこ

          わたしの庭〈猫め!〉

          わたしの庭 〈彼岸花〉

          草むしりをしていて、彼岸花の花芽をみつけた。9月も16日を数えるというのに、予想最高気温36度の朝である。 わたしの庭には、毎年、一本だけ彼岸花が咲く。いつどこからやってきたのかは、わからないが、土の中に、彼岸花の球根が埋まっているということだ。そこは花壇でもないし、植えた記憶もない。いっこうに増えないのは、土がやせているせいだろうか。 彼岸花といえば、新美南吉の「ごんぎつね」を思い出す。 兵十のおっかあを葬った墓地には、彼岸花が咲き乱れていた。葬列が去ったあとには、彼岸花

          わたしの庭 〈彼岸花〉

          くるくる電車旅 1

          8月12日。この日の予想最高気温は、40度。ひたすら電車に乗るだけの小さな旅に出た。 今日の目的は、名鉄津島線に乗ること。 地下鉄東山線で八田まで行き、JR関西線に乗り換える。 八田駅では、電車が出たばかりだった。 時刻表を見たら、一時間に二本、普通電車しか止まらない。次の電車まで、25分もある。 Kindleで、泉鏡花の「夜行巡査」を読みながら待つ。このときの気温は、36.7度。 ホームのベンチは、日陰になっており、風通しも良く、それほど暑くは感じなかった。 来た電車は

          くるくる電車旅 1

          花火の夜

          地元の手作りの夏祭りで、6年前から花火を打ち上げるようになった。フィナーレに500発、10分間の火の花の競演。真夏の夜のささやかな楽しみだったのに、一昨年も昨年も、あの憎らしい疫病のせいで中止になった。 『今年はやります。夏祭りと花火』 夏祭り実行委員会のホームページで見たときは、小躍りしたものだ。 会場は、河川敷の広い公園。家から歩いて行ける。30分はかかるけど。 花火がある日、夕食にそうめんをゆで、スーパーで買った天ぷらを添えて、早めの夕食にした。わたしには三人の同居人

          花火の夜

          2022 大相撲名古屋場所観戦記

          観戦したのは、四日目である。 会場は、ドルフィンズアリーナ。 愛知県体育館といったのは、いまはむかし。 会場に至るまでの道端に林立する、関取の力士幟。ほぼ番付順に並んでいる。贈呈者は、個人だったり会社だったり。色とりどりの幟旗をながめながら歩く。 コロナ前は、会場前に、入待ちの人だかりがあった。その間を、お気に入りの浴衣に身を包んだ関取が、鬢付け油の匂いをふりまきながら、さっそうと歩いたものだ。関取のもうひとつの花道だった。 コロナ禍のいま、力士たちは、人目につかないどこ

          2022 大相撲名古屋場所観戦記