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【建築・インテリアを考える前に読むブログ】第4回 物件の「顔」

私たちがデザインのご依頼をいただいた時にまず考えるのはその物件の「顔」です。

「顔」とはつまりその建物やインテリアの中で、「その空間を思い出すときに浮かぶ場面」です。

この「顔」とは、クライアントの生活やビジネスにとって重要な「場」であり、
私たちとクライアントをつなぐ「キービジュアル」であり、
私たちデザイナーが力を発揮する「顔」でもある部分です。

第一回第二回でデザインが決まる瞬間について書きましたが、
考える最初のデザイン、ポイントはこの「顔」に当たるところです。

今回は二つ事例を挙げてその「顔」について書きたいと思います。


1例目

こちらは先日フィンランドのデザインアワード"Arch Design Award2023”で最高賞であるGoldenをいただくことができたフレンチレストランの案件です。
こちらについては後日詳しくご紹介します。


この案件の顔は何といっても「天井から壁に幾重にも重なる紫のSkin」です。

「とにかく他にはないデザインを」というご要望に対して、

それはつまり、いかに日常から切り離されたインパクトを残す空間を提供出来るかだということだと理解し、
この空間に入った瞬間から席に着くまでに広がるこの重なり合うスキンを「顔」としてまずイメージしました。


普通のフレンチレストランとは一線を画す圧倒的なインパクト。
普段では体験できない非日常をこの空間で包み込むことで表現しました。

このお店にはウェイティングルームがあり、お越し頂いたお客様は先ずはこの部屋でお待ち頂くようになっています。
先程の紫の空間とは対照的に、ホワイトやシャンパンゴールドの色をベースに柔らかな雰囲気の空間に仕上げました。
日常と非日常との緩衝材の役割を持たせています。
そうする事で、先程の紫色の空間をより独創的で印象的な空間であるように印象付けています。


2例目

こちらはオフィスのリノベーション案件の中の会議室です。

元々は全体的に堅苦しく、廊下は廊下、部屋は部屋と完全に切り分けられているような建物でした。
レイアウトは変えようがなく、各部屋から会議室へは直線直線で入っていく作りです。

クライアントと話をしていく中で、
会議室に入る時に、直線的で固い外と中を繋ぐ会議室の入り口に、
それまでの業務から一度頭を切り替えられるような別の要素を加えようと考えました。

そこで閃いたのは、入った瞬間だけ中と外とは全然違う要素、Uの字で包むような木目のエントランスです。
会議室に入った瞬間にそれまでとは全然違う空間に包まれ、一度頭を切り替えることができます。




この会議室の「顔」はこの木目のスペースで、
社員の方達が思い浮かべるこの会議室のイメージもこの木目のスペース。

この「顔」があるだけでこの会議室の印象がガラッと変わります。

この空間を実現するためにはいろんな創意工夫がありました。
※詳細は田島ルーフィング様とのスペシャルインタビューで解説していますので是非ご覧ください。


どちらの物件も本来の用途(食事・会議)のイメージをいかに裏切るかを意識しています。

「顔」は良くも悪くもクライアントやそこを利用する方がまずそこでの経験を思い出す時に浮かぶところです。

無難なデザインだと印象がぼやけてしまいますが、逆に際立ったデザインは記憶に強烈に残ります

今回取り上げた2つの物件はどちらも求められている用途を裏切ることで真の目的(強烈なインパクトで非日常空間。会議前後で頭をリセット。)を果たすことができました。

私が「顔」といっている印象的なデザインについては今後も取り上げていきたいと思っていますのでお楽しみにしてください。


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