【詩】 草原の恋人

目の前の存在を
目の前で見える風景を
この目だけで捉えるために

それはたとえ
来た道を戻ろうとも
目的地への遠回りでも

お前を見つめる存在はいつもお前の目の前にいた
お前を存在させる風景はいつもお前の目の前にいた
遠い空想の向こうのさらに彼方で沈黙を聞き入れるお前

川の水面に映る夕雲と電線は歪んでいた
青い花に包まれたコーヒーカップを持ち上げて
黒い涙の小さな海は音を立てながらなみなみと消える

重たい足取りで砂利を踏み締め
この町を照らす巨大な日向から逃げた
どんな光をも届かない遠くへと行こうよ

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